2006年06月12日

ダグラス・サークは偉大だ〜『愛するときと死するとき』と『誰かあの娘に会ったかい?』を観て

一応クリアしてみたものの、裏ダンジョンが多数残されているのでまだまだ止められそうにない「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」の所為、とまでは言い切れませんが、先週はウィークデーにレイトショーを1本観ただけで、土曜日こそはと思い、目下最も期待している作品の一つである『夢駆ける馬ドリーマー』を観ようと決め、ジムを終えて劇場に駆けつけると、渋東シネタワーには何故かこの作品の名前が見当たらず、確かに「必見備忘録 2006.6月編」にはここで上映されている旨を記したはずだが…と途方に暮れ、ではどこでやっているのだろうと、普段使わない携帯電話のサイトを確認してみると、すぐ近くのシネフロントで上映中とあるので、ああ、自分で誤って記した情報を鵜呑みにしていたのか、でもまぁ近いし良かった良かったと思ったのも束の間、すでに上映が始まっていることに気づき、今日はこの映画のために全てのスケジュールを調整したのに、これでは何のための土曜日だろうかと情けなくなり、たったそれだけで今日はもう映画なんか観ないぞと思ってすぐさま帰宅するあたり、あまりに大人気ないといえば大人気ないのですが、では家に帰って普段はなかなか観られないヴィデオやdvdを鑑賞するなどして映画に触れておけばいいのに、結局はテレヴィの前でひたすらコントローラーを握り続けるという体たらく、だからゲームは恐ろしいと言うほかありません。でもまた一つ、ダンジョンをクリアできました。

さて、そんなどーでもいいことはさておき、昨日は某所にて某氏が主催する上映会(一応伏せておきますが、調べればすぐに判明するでしょう)に参加したのですが、アメリカ時代の貴重なダグラス・サーク2作品を字幕なしで観るというその企画、字幕なしというあたりがやや引っかかるところではありましたが、事前にあらすじを配ってくれると言うし、台詞の大半をたとえ理解出来なくても多分、いや、絶対に面白いはずだと言う根拠のない確信はあったので、雨の中京橋までいそいそと出かけていったのです。

愛するときと死するとき果たして、その2本のサーク作品は滅法面白く、それは事前に配布されたあらすじが比較的よく書けていたからという理由もあるにせよ、やはり素晴らしい映画とは、その台詞の内容をほとんど無視して画面だけを観ていても感動的で面白いのだということが確認出来た次第。それは、嘗て同時通訳という形で観たジャック・ロジエ『トルチュ島に漂流した人たち』を観ながら段々と台詞が耳に入らなくなっていった稀有な体験を想起させ、つまり、ダグラス・サークもまた偉大なのだということが言いたいのです。

最初に観た『愛するときと死するとき』(A Time to Love and A Time to Die/1958/113分)は、男と女のメロドラマ的な側面よりもむしろ、戦争を媒介にした残酷な因果律という印象が強かったです。撃つものと撃たれるものがいて、それらの時間的・空間的な距離を埋めるかのように、悲劇的で美しいロマンスがある、という感じでしょうか。まったくの思いつきですが。

誰かあの娘に会ったかい?2作目の『誰かあの娘に会ったかい?』(Has Anybody Seen My Gal/1952/88分)に至ってはもうただ傑作だという以外ありません。サーク初の長編カラー映画(テクニカラー)にして心躍るコメディである本作には、ジェームス・ディーンがカメオ出演していたり、老人と子供による感動的なダンスシーンがあったり、反復されることでその精度があがっていくギャグがあったり、大胆に装飾されたサイクリングシーンがあったり、神がかった動物のアクションがあったりと、88分という時間があまりに贅沢に感じられるほどの出来栄えで、さりげないラストとはいえ、これこそが真のハッピーエンドだとでも言いたくなるような幸福感がそこにはあります。主催者側の説明では、現在日本にたった1本だけある16mmフィルムとのことで、確かにところどころ観づらい箇所もありましたが、そんな瑣末なことは結果的にどうでもよくなってしまうような映画でした。

朋友・こヴィさんにいただいて以来、未だ観る機会がなかった『風と共に散る』ですが、今こそ観る時だと確信しました。個人的に機は熟したという感じです。そして同様に、「サーク・オン・サーク」も今こそ読まれるべき本ということなのでしょう。

2006年06月12日 18:26 | 映画雑記
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Comments

>オトコとオンナの映画秘湯さま

いえいえ、良ければ次回は当ブログでも告知をさせていただきますので。
この記事を書くときいろいろと検索していたら、某団体のページを見つけました。どちらにせよ、あれのおかげで字幕なしでも楽しめました。
なるほど、上映可能なものが1本のみということですか。確かに誰かが所有している可能性が無いとは言えませんね。

ともあれ、お疲れ様でした。好評だったようで何よりです。第2弾も楽しみにしてます。


Posted by: [M] : 2006年06月15日 10:03

>Mouさん

US版のdvdは結構出ているんですよね。『誰かあの娘に会ったかい?』、本当に良かったです。

Mouさんのブログも、いつも拝読させていただいてます。
実は「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」まだ
読んでいないのですが、昨日の記事を読んで焦りました。新作もいいですが、私はむしろ、ああいった記事の方に惹かれます。


Posted by: [M] : 2006年06月15日 09:56

ご来場戴き誠にありがとうございました。
お心遣いで伏せて戴いたのにノコノコ名乗り出てすみません、主催者です。
本来主催者が為すべきことながら、画像紹介そして作品の輝きが増す繊細なレビュー、感服いたしました。
厚かましくて恐縮なのですが拙ブログでトラックバックさせて下さい。

少し補足説明をさせて下さい。
あらすじは某団体が作成したものを承諾を得た上で転載したものです。
また『誰かあの娘に会ったかい?』のプリントの件ですが、シネクラブなどが上映可能なのはこの一本のみ、という意味でした。どなたかが(こっそり?)所持されている可能性はあると思われます。

力不足・説明不足の至らぬ上映チームですが精進に努めます。ダグラス・サーク上映会第2弾も行うつもりですのでよろしくお願いします。


Posted by: オトコとオンナの映画秘湯 : 2006年06月15日 00:12

ダグラス・サークは大好きで、USで出ているDVDはあらかた持っていますが、この2作品は未見です。
特に、『誰かあの娘に会ったかい?』はとても見たい。

ダグラス・サークについて書いた記事がないので、トラックバックできませんが、うちのブログも今の映画の潮流に逆行するように、好きなものを好きなだけ取り上げています。今後ともよろしく!


Posted by: Mou Sato : 2006年06月14日 19:50
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