2009年03月22日

2009年2月の映画雑感

まぁ何とか生きている、と言う感じの[M]です。
すでに3月も後半になってしまいましたが、2月の雑感です。とはいえ2月も惨憺たる状況で、10本に満たない本数しか観られませんでした。ただ、スコリモフスキの旧作を数本観られたことだけが救い。いや、『ミツバチのささやき』もまた救いでしたが、いかんせん、新作に胸躍る機会は少なかったと言わねばなりません。


007/慰めの報酬 [マーク・フォースター]
あれはどこの海か、ダニエル・クレイグがジャン・カルロ・ジャンニーニに助けを求め、美しい海に臨む邸宅を訪ねるシーンがあった。このシークエンスでの会話は多くなく、だからこそこの二人の関係性が簡潔に提示されるのだが、私の目は、ほとんど海とそこに降り注がれる光の美しさに奪われていた。そして今、本作を思い起こしても、このシークエンス以外はほとんど記憶にない。
マチュー・アマルリックはもちろん、誰一人悪くはないが……という印象。だからといって、この手のアクション映画が等しく袋小路に陥っているわけではないと思いたいが。


ミツバチのささやき [ビクトル・エリセ]
ヴィデオショップでバイトしていたとき、SONY版(後に東北新社から再発売される)のヴィデオを見て以来である。ふと“芸術”という二文字が脳裏に浮かんだのだが、それが適切だったのかどうかはわからないままだ。無論、本作こそ映画だと言い放つことに躊躇はない。


愛のむきだし [園子温]
悪くない。いやそれどころか、近年稀に見る“インディーズ映画”だろう。恐るべき力技である。『紀子の食卓』の後に相応しい映画。エロさも磨きがかかり、園子温に同士的感情を抱いてしまった。これを感情移入と言わずして何と言おう。しかしながら、本作は感情移入させるような物語ではないという矛盾。かように複雑な思いは、237分でも決して解消しない。短すぎる、のか?


ロルナの祈り [ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ]
本作においても、ダルデンヌ兄弟のスタイルに大きな変化は見られない。彼らはやはり、寄り添い、そして見つめる。ラストでロルナがとった行動と彼女が抱いたファンタジー、控えめに流れる旋律をもってしても、その印象が変わることはなかった。
スタイルとはそういうものなのか。ここまで考えて気づいたのだが、どうやら私は、『ロルナの祈り』で描かれたある種の現実のことなど、ほとんど考えていないということだった。


身分証明書 [イエジー・スコリモフスキ]
大学の卒業制作にして自作自演。アクション映画ではないのに、さまざまな体を張った“アクション”が印象的。たとえば平手打ちとそれに対する一発のストレート。たとえば、路面電車に全速力で飛び乗るという芸当。だからといってそれは、体力が漲る若さだけがそうさせたのだろうか。恐らく違うだろう。
スコリモフスキは、“アクション”がいかなるものか、本能的に体得していたのだと思う。もちろん、ここでいう“アクション”はそのまま“映画”に置き換えることも可能だ。

2009年03月22日 22:50 | 映画雑記
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