2008年07月31日

7月に観た新作と旧作DVD

■『告発のとき』(ポール・ハギス)
『父親たちの星条旗』以来の、“もう一つの”星条旗映画、というのが率直な感想。本作の冒頭とラストのシークエンスを見る限り、そう思わざるを得ない。トミー・リー・ジョーンズは相変わらずいい表情で画面に収まっているが、実はシャリーズ・セロンもなかなか悪くない。ジョシュ・ブローリンもやぱりいい。ということは、やはりポール・ハギスの仕事が堅実ということなのだろうか。撮影はロジャー・ディーキンス。『ノーカントリー』とあわせてもう一度観たい映画。
ただし、何度か挿入される携帯動画、あれはないほうが良かった。

■『HOT FUZZ/ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』(エドガー・ライト)
周知の通り、本作は2000人を超える署名運動により劇場公開が実現した。私が署名したのが昨年11月なので、随分と時間が経った感じがするが、何にせよめでたいことに違いない。
さて、署名したからというわけではないが、この映画、かなり楽しませてくれた。監督の映画に対する愛が、笑ってしまうほどに伝わる映画だと思う。まさにタランティーノ直系の弟子といった感じ。いずれ『デス・プルーフ』のような大傑作を撮ってしまう可能性もあるだけに、今後、dvdスルーだけは避けてもらいたい。
最も笑ったシーンは、ショットガンを敵の足元に放り投げたら暴発したところ。お約束にも程がある!だがそれがいい。ラストの出鱈目極まる銃撃戦も一見の価値がある。全員ぶっ殺せ!と手に汗握れる人は、きっと高い評価を下すでしょう。

■『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(スティーヴン・スピルバーグ)
とてもヤヌス・カミンスキーが撮ったとは思えない画面の連続に驚くも、3作を通してすでに定まってしまった“型”から逸脱出来ない、いや、すべきではないという判断もあったのかもしれない、と今にして思う。
全体的に馬鹿馬鹿しいのは言うまでもないが、核爆発後のキノコ雲や、まるでナイアガラのように殺人的な滝から3度落下する場面など、虚構という枠を最大限に生かしつつ魅せる画面もあり。
シャイア・ラブーフがターザンのように木の蔓を伝っていき、その後に彼を仲間と認めたサルがケイト・ブランシェットを邪魔するというなんとも子供じみたシーンを見て、これもまたスピルバーグなのだと大いに納得。
ラストの宇宙船をただ一人呆気に取られて見つめるしかないハリソン・フォードを、同じく呆気に取られて観てしまった。しかしそれにしても、ケイト・ブランシェットは器用な女優だ。本作で唯一“演技”していたように思う。

■『スパイナル・タップ』(ロブ・ライナー)
『最高の人生の見つけ方』の演出について、朋友バーチーさんと話していたら、本作の話になり、観ていないと言ったら、わざわざdvdを貸してくれた。ロブ・ライナーのデビュー作である。
所謂“モキュメンタリー”で、スパイナル・タップというバンドは、“半架空”のバンドらしい。この手法に関しては特に言うべきことは無いが、ロブ・ライナーのフィルモグラフィでも本作だけが異質で、いったい何を考え、誰に向けてこの映画を撮ったのかが、未だにわからない。
ビートルズ風だったりクリーム風だったりという過去のPVが流れ、それが本物そっくりで笑う。さらに、舞台セットとして発注したストーンヘンジが小さすぎて、これには爆笑した。あの妙な間は、確かにお笑いの間であったと思う。

■『ジェット・ローラー・コースター』(ジェームズ・ゴールドストーン)
これもバーチーさんにお借りしたdvdで。バーチーさん曰く「となりにあったので一緒に持ってきました」とのことでしたが、それもそのはず、調べてみると、『スパイナル・タップ』も本作も、ユニヴァーサルから「カルトコレクション」というシリーズで発売されていたのです。
『ジェット・ローラー・コースター』に関しては名前すら知らなかった私ですが、ジョージ・シーガル、リチャード・ウィドマーク、ヘンリー・フォンダが出演、音楽はラロ・シフリン(!)でした。
日米の呼称の差を何とか埋めようとした邦題には苦笑を隠し切れないものの、映画自体は70年代当時に流行したパニックムーヴィー風で、似た題材を持つ『交渉人 真下正義』よりはるかに面白く、この程度のB級映画においても、さすがアメリカ映画と思わせます。
ジェットコースターに乗った乗客の主観ショット(実際にはカメラを固定していたのでしょうが)はなかなか迫力があるし、いつ爆発するのか?とハラハラさせつつもその着地点を引き伸ばしていく手法など、常套とはいえ手固い演出で楽しめました。何より、全体に漂う倦怠感というか陰鬱さがいい。この雰囲気が70年代のアメリカに特有のものだったのかどうかは詳しく検証していないのでわかりませんが、誰もが楽しめる娯楽映画だと思います。

2008年07月31日 12:38 | 映画雑記
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Comments

>バーチーさま

ギャグですか? それは意外…。
新作の前に、dvdで確認してみます。あまり意味無いかもしれませんけど笑


Posted by: [M] : 2008年08月01日 13:48

『大人になれば…』面白いですよ! 笑います。コッポラで一番好き。ギャグセンスが素晴らしいです。


Posted by: バーチー : 2008年08月01日 12:55

>匿名さま(→イカ監督さま?)

カルトコレクションには、なぜか『モブスターズ』が…高校生の時、彼女と見てドン引きされました(笑

単独になってから撮った作品としては、『大人になれば…』は正確3作目のようですね。
最初にロジャー・コーマンに抜擢されてプロとして撮ったのが『ディメンジャ13』というオカルトで、その前に学生時代に撮ったのが『グラマー西部を荒らす』(笑)

Wアンダーソンに匹敵するというなら、是非『大人になれば…』を観ておきたいですね。


Posted by: [M] : 2008年07月31日 19:58

ユニバーサルのカルトコレクション、凄いラインナップですね(笑)欲しい!

あ、最近コッポラのデビュー作「大人になれば・・・」を観たのですが、
これ強引に言えば、wアンダーソンです(笑)


Posted by: : 2008年07月31日 15:42
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