2009年02月03日

2009年1月の映画雑感

朋友・こヴィ氏に発破をかけられてもなお、1月中の更新がかなわなかった[M]です。
私生活のほうでいろいろありましたが、まぁ何とか落ち着きました。しかし、もう長らく更新していなかったせいか、現状のペースを嘗てのペースにまで持っていくのは難しく、また一方で、以前ほど多くの映画を観られなくなっているという現実もあって、どうしたものか…という感じです。
まぁ観ることを続けていけばまた何らかの転機もあるだろうと思うことにして、今後も牛歩的にではありますが、ブログを続けて行きたいと思っております。

さて、2009年1月はたった10本しか観ていませんが、とりあえずそれぞれの作品について簡単に。まだ公開中の作品もありますので、鑑賞の参考になれば。

地球が静止する日 [スコット・デリクソン]
『地球の静止する日』(ロバート・ワイズ)のリメイク作品。キアヌ・リーヴスとジョン・クリーズが黒板に向かって数式を書きあうシーンだけが印象的。人間が消滅していくVFXは、『宇宙戦争』と同じにしか見えず残念。ラスト近く、ジェニファー・コネリー が「we can change!」みたいな言葉を発するが、それがあまりにも空々しく響くのは、映画そのものの力がアメリカの現実に劣ってしまった結果なのだと思う。少なくとも私はそのように感じた。

40歳問題 [中江裕司]
ドキュメンタリーには様々な形式があって良い。
本作が、予定調和を程よく否定しつつ、終わりに向けて加速度的に尻すぼみになるように仕向け、結末すら投げ出すような形を目指したのだとしたら、これはかなり成功していると言えるだろう。

アンダーカヴァー [ジェームズ・グレイ]
エヴァ・メンデスの肢体、ホアキン・フェニックスの顔、潜入シーンのノワール的緊張感、ボクシングジムにおけるロバート・デュバルの仕草と演出の呼吸、雨のカーチェイス、生い茂る葦と煙。そのどれをとっても素晴らしい。
このような地味なアメリカ映画が、しかし、鈍い光を放ち続ける。私の中では『NARC』に勝るとも劣らない傑作として記憶されるだろう。

ワールド・オブ・ライズ [リドリー・スコット]
レオレルド・ディカプリオが、顔といい体系といい、良い具合に“アメリカ人化”している。そしてもう一人、ハニ・サラームを演じたマーク・ストロングも光っていた。この二人のやり取りが、本作を大味なハリウッド産アクションサスペンスとは異なる地点へと昇華させていたように思う。
気になって脚本を調べてみると、『ディパーテッド』のウィリアム・モナハンだった。彼は監督デビューも決定している。

エグザイル/絆 [ジョニー・トー]
3回目の鑑賞。自分はつくづくペキンパー的共犯関係に弱いなと実感。ジョニー・トーのマニエリスムが新たな地点に到達したのだと、何度も自分に言い聞かせているが、そんなこととはまったく関係ない映画を今後も撮り続けるであろうということも先刻承知。

感染列島 [瀬々敬久]
ピンク四天王の一人がこういう映画を撮るのかと驚きつつ観た。キャスティングにやや疑問が残る。佐藤浩市や檀れいにどうして吐血させなかったのかも疑問。

生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言 [森崎東]
実は初見。『ニワトリはハダシだ』を興味深く観たが、本作に関しても非常に似た印象を持った。原田芳雄が平田満とサシで飲み始めてから銃で撃たれる瞬間までのシーンが良い。これだけ様々な要素を詰め込んで、ただ素直に“面白かった”と言える映画もまた珍しいのかもしれない、などと思ったり。

サーチャーズ2.0 [アレックス・コックス]
何故に“2.0”なのだろうか。すでに「Searchers2」という映画があって“2”ではいけなかったのか、と思ってimdbを調べても出てこない。邦題だけでなく、原題も『Searchers 2.0』だったので、さらに疑問が。web2.0という言葉があるが、そのような意味で“2.0”なのかもしれないが、まぁいい。
本作には、“タランティーノ的”と言っていいのかわからないが、とにかく映画のタイトルや俳優の名前が頻出する。それらは知っていたり知らなかったりしていればいいと個人的には思うし、本作を高めも貶めもしない。問題はモニュメントバレーと復讐である。大傑作だという話とは別として、思えば『捜索者』はヘヴィーな映画だった。これを本作は、単なる1本の映画としか扱っていないのかもしれない。饒舌な2人の主人公の口から発せられては消えていく数々の映画のように。本作のタイトルはフォードの“Searchers”である必要すらなかったのではないか、という気さえする。単なるわかりやすい記号として、西部劇におけるモニュメントバレーと復讐を据えてみただけなのかも、と。
これを諦念ととるか、メタファーととるか、開き直りととるか。それはいいのだけれど、事実として、本作には数シーンで心から笑わせてもらった。とりわけ、あのラストの三つ巴には。対決というには地味過ぎるし、復讐にしても間が抜け過ぎている。しかし、不思議な充足感があった。
映画ファン必見とは言わないが、こんな変な映画があってもいいじゃないかと思った。

ノン子36歳(家事手伝い) [熊切和嘉]
熊切和嘉と地方都市。このマッチングは、山下敦弘のそれに匹敵する、と個人的には思っている。
本作においてもしきりに強調されているその“地方感”は悪くない。ド田舎ではない“地方感”が重要である。
最大の見せ場は坂井真紀と鶴見辰吾の濡れ場で、ほとんどロマンポルノ的な技術と漂うエロティシズムに感動した。ラストのチェーンソーにもあらぬ期待を込めたが、それはまた別の話だろう。
好みではないが、坂井真紀はかなりいい女優だと思う。

天使の眼、野獣の街 [ヤウ・ナイホイ]
ジョニー・トー作品の脚本を手がけてきたヤウ・ナイホイの監督デビュー作。本作でも共同脚本を務めており、プロデューサーはジョニー・トー。
私が注目したのは、序盤でレオン・カーフェイ演じる窃盗団のボスが、まだ組んだばかりの手下の失態にキレて殴りかかり、5対5くらいの乱闘になるシーン。この乱闘を収束させるのが、遠くの窓に見えるある女性の生着替えであるというあたりに、いかにもジョニー・トー的と言うほかない魅力を感じて嬉しくなった。
要所に監視カメラのショットを効果的に使った画面は、やや目まぐるしさを感じさせもするが、そこはベテラン俳優の演出でカバーしている。そして90分という絵に描いたような上映時間もいい。
次回作以降も大いに期待したい監督の一人である。

2009年02月03日 19:50 | 映画雑記
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Comments

>ヴィ殿

やはり強敵(とも)による有形無形のプレッシャーが自分には必要なんですよ。今後もお願いしますね。
ヤウ・ナイホイには是非ご期待を。最近の私はジョニー・トー贔屓が過ぎるのかもしれませんが、そうでなくても楽しめるはずです。
ウイスキーいいですね。最後無くなりかけくらいの量を投げていただき、それを飲み干して投げ返したい!(笑


Posted by: [M] : 2009年02月04日 10:48

祝・更新☆ しかし、けしかけておきながら私は先月[M]さんよりもっと観ていないのでした…。『天使の眼、野獣の街 』はやはり行きましたね。私も期待しています(真赤なポスター・チラシがいいですね)。『エグザイル』は3度目ですか! 今度会ったらウイスキーを投げてみます(笑)。


Posted by: こヴィ : 2009年02月04日 03:09
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