2006年04月19日

もう繰り返したくはないこと

本当は『マンダレイ』に関する文章を書こうかと思っていましたが、昨日、久々に悲喜劇的な出来事がわが身に起こりましたので、たまには酔っ払い話でも、ということで。

ちょうど一年ほど前に書いた記事(「時効につき、告白します」)を筆頭として、過去に私がやらかした酒に端を発する椿事(というか多くは惨事)の数々を読んだ方であれば、ワタクシ[M]の“夜のキャラクター”を多少なりともご理解いただけているのだとは思いますが、流石に骨を折って以来、度を越して酒に飲み込まれるようなことはありませんでした。今日のお話はそこまで酷くはないものの、情けないこと山の如し、という点に関して差はありません。

私は痛飲した時、大事なものを平気で紛失してしまう悪癖を持っています。
これまでで最も痛かったのは指輪。これまで購入したものの中で最も高価であり、かつ、最も気に入っていた指輪を、今はなき青山の「MIX」というクラブで無くした時です。その時は悔やんでも悔やみきれず、結局数日後に同じ指輪を購入する破目になりました(今でも身につけています)。その他にも財布や名刺入れ、鞄、ブレスレッド、鍵、本、サングラスなどなど、気に入って持ち歩いていた(あるいは身につけていた)ものを選ぶかのように紛失してきたのですが、もちろん言うまでもなく、原因は酒です。

大体において、何かを無くしたと気づいた瞬間は激しいパニック状態に陥り、一緒に飲んでいた友人や同僚に、これ以上無いと言えるほどに狼狽した姿を晒し、一気にテンションが下がった私とそれ以上飲む気を失くさせてしまうことも間々ありました。だけれどももっと性質が悪いのが、散々騒いでおきながら大事なものを無くしたと“思い込んでいた”だけの場合です。その時ばかりは、我ながら救いがたいバカだと、自分を呪うしかありません。

そんな救いがたい出来事として思い出されるのは数年前、同僚数人と飲みに行った時のことです。
私はいつものようにワインをがぶ飲みし、もちろん終電が無くなることを微塵にも気にかけず、結局同僚らとタクシーで帰ることになりました。時期的にはちょうど冬でした。タクシーの中で半寝状態でいた私は、何故か突然閃いてしまいました。“あれ?さっきまで着てた革のジャケットがないじゃないか!!まさか店に置いてきたのか!?”という風に。そして、それまですやすやと寝ていたはずの私が、一気にパニック状態に。わたりやすくドラクエで例えれば、メダパニという呪文をかけられ仲間を攻撃し始めた状態ということになります。程なく私は、タクシー内で先輩や後輩に向かって騒ぎ出したのです。やれジャケットが無いだの、店に戻れだの、戻れないなら電話番号教えろだの、あのジャケットは高かっただの、あれはわざわざオーダーして作ったからもう売ってないだのと……その時、それほど酒の飲めない、ということはつまり程よく冷静な後輩が一言、「あのー、ジャケットって今着てるやつではないんですか?」と。恐らく、それを聞いた先輩も「うんうん」と相槌を打ったことでしょう。私は記憶していませんが、恐らく。しかしながら、泥酔しパニック状態の私に、もはや後輩の言うことを聞く耳など持ってはいませんでした。「違うよ!これじゃないよ!今着てるのはライダースだろ!?あれはテーラードのジャケットだんだってば!!」とさらに語気を強める私。それに圧倒されてか、どうにも納得のいかないであろう後輩と先輩の主張は宙に消え、またぞろ私は、「あ゛ーーーー参った!参ったよ!!もうどうしようもないかもしれないよ、あ゛ーーあれは高かったのになぁーーー!」と一人リグレットの海に飲まれていき、いたたまれなくなったので先ほど飲んでいた店に電話をしてみたのですが、店にも忘れ物など無かったと一蹴され、ほとんど絶望の淵を彷徨いつつ、しぶしぶタクシーを降りたのです。
帰宅後、悲嘆に暮れながら着替えていた時、思わず「あ!!!!」と叫んでしまいました。冷静な後輩の言うとおり、私はライダースなど着ておらず、無くしたはずのジャケットをしっかりと着こんでいたのです。あんなに取り乱していたさっきまでの自分は、一体何者なんだろう……とうとう頭がイカレてしまったのか……ただひたすら凹むしかありませんでした。そしていまだタクシーに乗っているであろう先輩と後輩に向かって一言、「あの…ジャケットなんですが………着てました…」と電話。その時の彼らの呆れっぷりを、私は見てはいませんが、相当なものだったことだけは容易に想像できます。その日以降、私の“夜のキャラクター”が完全に定着したのです。

さて、昨日の私もまさにそのような状態だったと言えば、大体どういう事が起こったのかお察しいただけるでしょう。インパクトとしては先のエピソードに劣るものの、やっていることはほとんど変わりません。
先週金曜日、やはり同僚と飲みに行った際、私は大事にしていたネックレスを無くしたと“思い込み”ました。よくよく考えれば、身につけていたネックレスを失くすなどほとんどありえないし、仮にそうなればすぐに気づくはずです。しかし私は、泥酔した時の自分などいささかも信用していません。出来ないのです。よって、身につけていたネックレスを無くしても、それに気づかないことも充分にありえると、妙な確信をしていたのです。
まずは帰り際に乗ったタクシー会社に電話、次に一軒目に飲んでいたふぐ屋に電話、最後に二軒目のバーですが、この時はすでに結構飲んでいたため店もまるで記憶になく、しかたなく同席していた後輩にメールして教えてもらい、バーにも電話、それでもネックレスは当たり前のように見つかりませんでした。今回もまた、一人パニック状態に陥っていました。救いだったのは、それが自宅だったということでしょうか……。「何だよ畜生、何でネックレスがなくなるんだよ!あんなもの無くすことってあるのかよ!!あーあ、俺があのネックレスを拾ったら多分警察には届けないだろうなぁ、つまり、どこかの店に置いてきたとしても、黙ってパクるやつがいたっておかしくないよ、うん、あ゛ーー何やってんだよ、俺!!!!!」などと、信じがたく愚かな類推までしながら、週末を過ごしたのでした。
そして昨日、タバコを出そうと何の気なしにバッグのポケットをまさぐると、またもや(!)無くしたはずのネックレスが出てきたのです。何のことはありません、自分で取って、自分でしまっていただけなのです。嬉しさと情けなさを同時に味わうという稀有な経験を、あろうことか二度も繰り返すとは……

今日も同僚との飲み会です。
このことは、皆には黙っておこうかと思います。

2006年04月19日 12:00 | 悲喜劇的日常
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Comments

>eskam殿

まぁね。相変わらずですyo。簡単には変われません。


Posted by: [M] : 2006年04月24日 13:14

ははははは!!(笑)
・・・凄いね、相変わらず。


Posted by: eskam : 2006年04月24日 12:39

>トルーマン・カマーティ殿

まさか本人が現われるとは!! こういうことがあるからインターネッツは面白いです。
ええ、またやっちまいましたyo。

MIXは閉店してからもう随分経つよ。
最近はクラビングもしなくなってしまいました。いろいろ行ったけど、あそこまでしっくり来る場所がないということだね。

近々近況聞かせてくださいな。


Posted by: [M] : 2006年04月20日 14:44

前出のエピソードに登場した“後輩”です。
またやっちまったんですか!!!
ああ…数年前のタクシーがまざまざと思い出されます。あんなに「着てますよ!」って言ったのに、逆ギレされたり(笑)
指輪の件も、なぜか私が問い合わせたりする事もありました。爆笑な思い出です。

mixないんですね〜。
今どちらに行ってるんですか?
また遊びましょう!


Posted by: kamarof : 2006年04月20日 13:41

>エノキング牧師

アベ節っぽかったでしょうか?

酔って家の鍵を無くすまでは同じでしたが、そこでどうして骨を折ってしまうことになったのか、未だにわかりません。“何故かどうしても家に入りたくなって”という部分が素晴らしい。自分の家がまるで他人の家であるかのように感じさせる絶妙な表現ですね。ちなみに、私は昨日、何も無くしませんでしたよ。記憶以外は(-_-)

絶対に内緒なことをここに書いてしまう貴女の瞳に乾杯します。次回はお互い、何も無くさないようにしましょう!記憶以外は(-_-)


Posted by: [M] : 2006年04月20日 12:59

ジャケットなくしたと騒いでる[M]さん、何故か『インディビジュアル〜』の後半の主人公がかぶりました(笑)

私も酔うとよくモノなくします。。
絶対に内緒ですが、前に酔って家のカギをなくし、何故かどうしても家に入りたくって窓割って入りました(-_-)
こないだはついにキオクをなくしました。。
絶対に内緒です!


Posted by: エノキ : 2006年04月20日 12:47

>[R]殿

確かにキミもかなりの酔拳マスターですね。前回の暴走ぶりは、エヴァンゲリオンのそれをを凌ぐ勢いでした。

こうして文章にしてみるとただの酔漢ですが、同席した人にしてみれば、迷惑千万なだけなのかもしれませんよ…
ちなみに、1800円程度では本領を発揮できないので、少なくとも10000円くらいみていただかないと困ります(笑)

イタリア映画祭の時にでもまた飲みましょう。


Posted by: [M] : 2006年04月20日 09:36

同類の酔漢キャラクターとして、尊敬しないわけにはいきません! 笑
一回戦は惨敗を喫しましたが、二回戦は先輩の「しどろもどろ」を目に焼き付けたいです!
[M]氏の「椿事」の愛読者として、実際に居合わせた者たちのスリルを羨ましく思います。
「1800円」で鑑賞可能ということであれば有難いのですが…感想もまとめやすい 笑


Posted by: [R] : 2006年04月20日 02:26
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