2005年04月06日

時効につき、告白します

実は昨日、会社のお花見がありました。といっても、新入社員が場所取りに借り出されたりするような戸外のお花見ではなく、社食を開放し、社内から桜を愛でるというもの。ただし、もう何年も参加しているにもかかわらず、桜などまともに観た例ががありません。食事もろくにとらず、ひたすら飲むのです。ガブガブ・・・ガブガブ、と。

あの悲惨極まりない日から、丸一年が経過しました。
そろそろ時効かなと思いますので、今日は昨年の今頃わが身に降りかかった不幸を記しておきたいと思います。そう、あれはちょうど社内のお花見が元凶だったのです……

まぁ端的に言うとですね、泥酔したわけです。社内で。
ちょうど夕方6時頃から飲み始め、ジョッキでモエ・エ・シャンドンを数杯飲みながら談笑。まだ仕事が残っていたので、軽く飲んで退散するつもりでした。が、赤ワインと白ワインを交互に何杯も何杯も飲んでいるうちに、というより、もうこの時点で仕事のことは完全に頭から消え去っていて、そこが仮にも会社内であることもあっさりと忘れ、つまり、“どうにも止まらない”私がいたのです。

3時間ほど飲んだ後自席に戻り、すぐさま2軒目へと移動することになるのですが、この辺りを境に、私の記憶はほとんどありません。先輩と飲みに行ったことと、飲んだ店だけはなんとなく覚えているのですが、約5時間程の記憶がまるまる喪失しています。さて、悲惨なのはいよいよここからです。

2軒目を出て少し経った後、気が付いたら自宅の鍵がありません。すでに深夜1時を回っているので、管理人さんを起こすわけにも行かず、はたと困りました。しかしその後、どのような思考が働いたのかは思い出せず、多分、どこかで朝まで時間でも潰そうと思ったのでしょう。で、バッグをまさぐると何も入っていないのです。所謂“すっからかん”というヤツです。頭の中は“???”、と同時に、これは非常に不味い事態だな、と本人は思ったはずです。金も鍵も、そして生命線とも言える携帯電話すら無いのですから。

別にショックで気を失っていたわけでは無いと思うのですが、恐らくしばらく途方にくれた状態だったのでしょう、次に気づいた時私は、何故だか自宅マンションの2.5mくらいはあるであろう塀の上によじ登った状態でした。私の自宅はオートロックで、鍵がなければもちろん、敷地内にも入ることができません。だから、塀をよじ登ったのだと思うのですが、ここが泥酔者の思考がショートしている所以、仮に塀を越えたところで、玄関にはやはり鍵がかかっているのは自明であるにもかかわらず、私は果敢にも、その塀から飛び降りた、というより、頭からダイブしたのです。窪塚洋介氏がやはりマンションの9Fからダイブした事件が昨年6月ですから、約2ヶ月程彼の行動を先取りしていたことになりますが、まぁそれはともかくとして、マンションの9Fとはいかないまでも、2.5mの高さからダイブすればそれなりの対価を支払わねばならないことくらいは私でもわかっていたはずなのですが……我を失うことの怖さというものを改めて思い知りました。

ではダイブ後の私の状態を振り返ってみます。
ちょうど鼻の付け根あたりから落ちたわけですが、とっさに両手を付いたのが幸いし、急所に程近い部分を強打したにも関わらず大事には至らなかったのだと思います。が、相当量の出血があったのもまた事実。瞬く間に地面が赤黒く染まっていきました。そして、そのショックでようやく我に返ったのです。全身の感覚は酒のせいで大分麻痺しているので、痛みはそれほど感じませんでしたが、自らの流血に慣れていない私は、軽い目眩に襲われつつも、何とか自宅玄関までたどり着いたのです。しかし先述したように、もちろん家の中には入れません。鍵がないのですから。その代わりと言っては何ですが、玄関先にはビニール袋に入った苺3パックが、誰かに踏み潰されたようにグチャグチャに変形した状態で置かれていて、それだけでも不可解なのに、あろうことか無くしたはずの携帯電話がグチャグチャの苺に突き刺さったまま、いかにもその最期とばかりに悲しげな様相を呈していたのです。無論、携帯電話の電源は入らず、苺の汁が直接の契機となって没しました。例えば、フィルム・ノワールなどで、殺し屋がターゲットに対し、「お前は狙われているんだぞ」というメッセージをこめた不快なプレゼントとも言うべき贈り物を届けることが間々あります。動物の死骸だとか、腐った食べ物だとか。そんなシーンをイメージしていただければ、その当時の私の心境をご理解いただけるかもしれません。あまりにも不可解な、しかし当然ながら、全ては私自身による行動の結果。ここで再度、諦めの深いため息とともに途方にくれました。ともあれ、この辺りの一連の行動につきましては、詳述できないと言うのが正直なところです。思い出せないのですから。

ようやく出血が収まりかけ、次第に正常な意識を取り戻しつつあった私は、とにかく誰かに連絡を取り、泊めてもらおうと考えました。もう疲れ果てていたので、とにかく寝たかったのでしょう。しかし、強烈な苺臭を放つ携帯電話は、ただのオブジェと化しています。そこで私は、近くにある当時行きつけだったレストランバーに行くことになります。事情を説明した上で電話を借り、当時は自宅からタクシーでワンメーターの場所に住んでいた友人で、最近このブログにも顔を出してくれているng氏の家に泊めてもらおうと考えたのです。実はこんなこともあろうかと(?)、ng氏の電話番号だけは暗記していたのでした。我ながら、その先見性には驚くばかりです。

レストランバーに足を踏み入れた瞬間の、凍りついたバーテンダーの表情は今でもよく覚えています。開口一番、「…喧嘩ですか……?」と恐る恐る尋ねる彼に、「いや、ちょっと高いところから落ちちゃいまして…」とはにかみながら答える私。はにかみついでに、「すみませんが、電話をお借りしたいのですが。携帯電話が壊れてしまったもので」と懇願してみると、私よりも焦燥を隠しきれない彼は、「とにかく血を洗い流してください!」と洗面所に促してくれました。
血だらけの顔を洗い、服に付いた血を拭いていると、ジャケットの胸ポケットに何故かクレジットカードが一枚だけ入っていることに気づきました。何故そんなことが…、ということはもはや考えずに、とりあえずこれで何とかなると、多少自信を取り戻した私は、洗面所を出るなり、「ただで電話を借りるのもあれなので、一杯だけワインをください」などと、相応しからぬ余裕を見せつつ、電話を借りることにたいする罪悪感を消そうとしたのです。もちろん、そんな状態の私に「本当に飲んで大丈夫ですか?」と尋ねるのは至極当然のことですが、私はとにかく、事態を平穏にやり過ごすことしか眼中になかったので「大丈夫です、もう血は止まっていますから」と、さらなる余裕を見せました。その後電話を借り、これ見よがしにカードで一杯分の精算をすると、逃げるように店を出てタクシーを拾い行き先を告げるのですが、やはり私はまだ正気ではなかったのでしょう、本来ならワンメーターで到着するはずの距離にもかかわらず、約20分ほどあーでもないこーでもないと運転手を困らせ、終いには「もうここで結構です」と、未だng氏の家まではかなりの距離がある地点でタクシーを降り、ふらふらしながら渋谷区神山町を徘徊することになります。すると10分ほど歩いたところで、遠くからng氏が自転車で近づいてくるのがわかり、ようやく全身の力が抜けました。古くからの友人であるはずの彼が、その時ばかりは間違いなく“神”として私の目には映ったのは言うまでもありません。

ng氏宅でウーロン茶を飲みながら事態を説明した後は泥のように眠るのですが、翌朝起きてみると、昨日の時点では感じなかった痛みが全身を貫きました。とりわけ、右手が全く動きません。しかし、その日はウィークデーだったので、いつもどおり出社しなければならず、無理やりシャワーを浴び、ng氏には「今財布に入っている有り金を全部貸してくれ」と、全くもって図々しさの極みとも言うべきお願いをするのですが、こちらの言うとおりに金を差し出すng氏を見て、やはり持つべきものは(泥酔して怪我した挙げ句全ての持ち物を紛失した時に助けてくれる)親友だなと確信し、その時ばかりはng氏に最大限の感謝をした次第です。

こうして書いてみると、随分といろいろあったナァ・・・と感慨もひとしおですが、最後に実害を総括しておきますと、結局右手の骨は骨折していて、全治2ヶ月の重傷。鼻の頭には1cm近い陥没が出来、こちらの傷跡は未だ顔の中心部分に残っています。現金20000円、カード類、免許証、財布は見つからず、先述したように携帯電話は壊れました。何と言いますか、言葉もありません。

全ての傷が完治し、その後十分な反省期間を経たので、不安要素だった昨日のお花見からも無事帰還しました。もうあれほど酔う事はなかろうと思いますが、やはり暴走する時は自分ではなかなか制止出来ないこともあるやもしれません。この文章を読んでいる友人・知人の方々、どうか私めを見捨てないでやってください。加えて、皆様くれぐれもご自愛くださいませ。

映画とは関係ない話を、長々と失礼しました。
ただ、この事件の2ヵ月後に当サイトをオープンすることになったことを鑑みるに、私の反省とサイトオープンの間に何らかの関係性があるのではないか、だとすれば、それはそれで結果的には悪くなかったのではないかと、あるいはそのように思ってしまうこともまた否定できないのです。まぁわざわざこうして記録に残したわけですから、今後はこの文章を読み返すことで、自らを戒めていければと思っております。

2005年04月06日 12:53 | 悲喜劇的日常
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Comments

>モテさま

こちらでは始めまして、ですね。
正確には一周年まであと1ヶ月ちょいあるのですが、それを踏まえて言えば、月並みですが本当にあっという間に時間が経ってしまったな、と。

mixiの方でモテさんの“失態”を読んだ時、それはもう快哉を叫んだと言いますか、「俺と同じだ!」的シンクロニシティを感じました。
しかし、お酒を飲まずにあのような悲劇を引き起こさねばならなかったのは、ある意味私以上に凄まじい。言い訳不可能と言う意味で。

お互いくれぐれも気を付けませう。。。


Posted by: [M] : 2005年04月08日 16:38

オープン前日に初対面させていただいたわけですね。
サイトオープン1周年ですね!おめでとうございます。

あの日、その話をきいたときは「えー!?」ぐらいでしたけど、先日、私も同じようなことをやらかして、鍵なし、お金なし、携帯つながらないというのが大変な恐怖だと実体験としてわかります。
さらにケガまでというのは想像を絶します。

ちなみに、深夜、よじ登れないかな、、と2階を見つめること5分、となりの家のベランダに通してもらおうかな、、という思考にもなりました。
、、、お酒は1滴も飲んでませんでしたが、、、


Posted by: モテ : 2005年04月07日 22:38
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