2007年12月25日

今年最後の!?映画覚書

ウイイレのドラフトも無事終了し、後は残りの忘年会を何件か残すのみとなりました。30歳を過ぎてから、1年があまりにも短いと感じてしまうようになりましたが、これはいったい何故なのか。それだけ充実していると見るべきか、それとも…。まぁ、結局はなるようになるという結論に落ち着くのですが。

さて、先週は更新出来ませんでしたが、何本か良い映画をみたので、簡単に覚書。
まずは、アテネフランセで観た王兵の新作『鳳鳴(フォンミン) — 中国の記憶』。この183分のドキュメンタリーは、その一見簡素な構造からは想像もつかない程豊穣で、面白い。被写体の厳格な語り口と無表情、そして、それを補って余りある語りの内容(過酷な人生体験)。おそらく10カットにも満たない本作おいては、唯一の被写体である老婆のバストショットにカメラ(=監督)が完全に魅了されてしまっていることを隠そうともしません。そしてそれが観ている私にも、画面内の大気ごと伝わるような感覚がしました。
本作が一般公開されるとは到底思えないのですが、そういう奇跡が起こってしまう日を逃さないためにも、王兵という映画作家の名前には、常に注目の眼差しを向けていましょう。まぁ奇跡と言うなら、あの画面で3時間持ってしまうということ自体が、奇跡に他ならないのかもしれませんが。

続いて観たのは『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』。大島新の劇場公開映画第一回監督作品です。本作は、ドキュメンタリーの面白さとは何か、ひいては、ドキュメンタリーとは何か?ということを考えさせてくれたという意味でなかなか興味深かったのですが、最後のテロップはあまりにも蛇足だったと思います。未だ一般的には、ドキュメンタリーが“純粋な”事実の記録だと思われているのでしょう。ああいう説明が無ければ、本当に本作は成り立たなかったのだろうか。
父である大島渚とは異なるアプローチではありましたが、現実と虚構という映画が孕む根源的な要素を描こうとしたのは、偉大な父を持つ息子の野心でしょうか。

次に、『ベティ・ペイジ』。監督はメアリー・ハロン。調べてみたら、『アメリカン・サイコ』や『アンディー・ウォーホルを撃った女』などを監督していました。共に観たのですが、あまり記憶にありません。
『ベティ・ペイジ』もまた、グレッチェン・モルの見事な肢体しか記憶に残っていないので、特に言うべきことはありません。

最後に『俺たちフィギュアスケーター』。本作は私の中で、『ふたりにクギづけ』以来のアメリカン・コメディの傑作として記憶されるでしょう。映画における紋切り型の是非だとか、コメディにおける“部外者(背景)の重要性”だとか、タブーに対する寛容さだとか、そんなことを考えさせながらも、観客が到達すべき見えない着地点を信じ一貫して図々しい演出に徹し、最後には涙まで誘う。
かような“強さ”は、チャウ・シンチーですらまだ纏えていないような気がしました。彼のコメディも充分面白いのですが、本作には、アメリカならではのダイナミズムというか、歴史というか、そういうものを感じざるを得ないのです。
本作のクライマックスシーンの素晴らしさ、それはやや誇張して言うなら、ロバート・アルドリッチの『カリフォルニア・ドールス』におけるラストの大合唱に比較したくなるほどです。
と、まぁ興奮気味に書きましたが、いずれも半分冗談として聞いていただいてかまいません。私が言いたいのは、これもまた映画だということ。そして、この手の映画を観ずして、やはり映画は語れないなぁ、とつくづく思ってしまったということです。

2007年12月25日 19:43 | 映画雑記
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Comments

>マルさん

ご無沙汰してます。コメントありがとうございます。
いやぁ、面白かったですね。予想以上でした。前の席に女性3人組がいたのですが、彼女たちも手をたたきながら笑ってました。日本人にしては珍しい反応でしたが、あれが本作の正しい鑑賞法なのかもしれませんね。
是非再見してみてください。


Posted by: [M] : 2007年12月27日 09:47

 お久しぶりです。
 「フィギュア・・・」御覧になったのですね。面白かったでしょう?
 私は今年の夏、カナダへいった時に、帰りの飛行機の中で見ました。隣に座っていたカナダ人の女の子二人組がひっくり返って笑ってましたよ。私は残念ながら日本語版でないと言葉が理解できないので、原語のおかしさがほとんどわからなかったのですが、それでも面白さは十分にわかりましたよ。
 私も近々、劇場で再見するつもりです。


Posted by: 丸山 哲也 : 2007年12月25日 21:42
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