2007年04月13日

忌まわしき生命体が、ついに…

あらゆる言葉の中で、私が書くことも読むことも、口に出すことすら避けたい言葉があります。
カタカナ4文字からなるその言葉を私が忌み嫌う理由をいちいち説明する必要すらないほどに、それは恐らく誰にとっても不快な言葉ではないかと思う程です。
よって、今回はその言葉を使わないようにしつつ、昨日起こった悲劇的な出来事を書いておこうか、と。

それは唐突に、私の部屋の床に鎮座していました。
すでに深夜0時を回っていたかと思います。私の部屋は間接照明しかなく、普段も薄暗い状態なので、最初それは単なる埃か何かに見えました。大きさにして2cm程だったでしょうか、たまにベッドの下から大きな埃の塊が出てきたりすることってあるじゃないですか、あれだと思って、何気なく右手の親指と人差し指とで、それを拾おうとしたのです。
その時、それはこの世の生命体の中で、とあえて言いきってしまいますが、最も不愉快に、最もすばやく、最も精神的ダメージを与えるように、動きだしたのです。

私の指先が感知したその不快な触覚が脳に届くか届かないかの瞬間に、それまでそいつによって齎された、絶望的に不愉快極まりない、あらゆる苦い経験がまざまざと脳裏によぎり、思わず「うわ!!!!!」と声をあげてしまいました。そう、それは小さいけれども、決してその不快さを体躯の大きさでは測ることが出来ない、例の生命体だったのです。

ここでどうしても書いておきたいことがあります。私はそいつを、決して触ることが出来ないできました。
それを説明するため、まずはもう10数年以上前の記憶を辿ることにしましょう。

私の実家は、そのときすでに築20数年経過していました。
今のマンション周辺の環境とは異なり、当時の私の実家の周辺には、例えば里山めいたものがあったり、雑草が生い茂る空き地もまだまだ沢山あるような、そんなのどかな住宅地だったので、それが実家に出てきたって不思議ではないのですが、初めてそれを目にしたとき、私は直感的に、それを触れないと判断しました。その濁点交じりの4文字で呼ばれる黒い未知の生命体は、ほとんど不吉な光を纏っていて、決して触れてはならないもののようでした。時には風呂場の壁に、時には自室の箪笥の引き戸に、時には玄関前の廊下に、それは異様に静まりかえった状態ながらも、強烈な負のオウラを放射していました。
だけれどもそれは、決して自分から外に出て行ってはくれないのです。誰かが殺さなければならない。私はその時々で、兄を呼んだり、母を呼んだりしつつ、決して自分では始末出来ないでいました。一度だけ、私はそれをつまんで2階から放り投げようと決意したことがありますが、右手を自分の穿き古したチノパンでグルグル巻きにし、そいつの触感が指先に伝わらないようにする準備を整えた状態で近づいてみたのですが、約30分の膠着状態の後、私の決意は脆くも崩れ去ったのでした。無理だ、無理すぎる、と。
結局その時も母を呼び、情けないだの何だの散々罵倒されたりしながら、何とかそれを部屋から追い出すことに成功したのです。

以後、何故か私にそれを呼び寄せてしまう磁力が備わっているかのごとく、その大馬鹿野朗は忘れた頃にやってきては、私を苦しめてきたのです。最初に一人暮らしをした4階建てマンションの4階にあった部屋にもそれは何度か出てきては私を絶望の淵に落とし、その都度私は自室に土足であがり、それをひと思いに踏み潰すという、どう考えても自分の首を絞めるような行為を繰り返してきました。2軒目に引っ越した2階に位置するマンションの一室にだって、そいつは出てきました。「コンバット」という、かなり効果的なアイテムを要所要所に設置してみたところで、それは思いがけないところから、仰向けに寝ている私の額目掛けて落ちてきたりするのです。その時感じた、この世のものとは思えないドス黒い感覚、それをどうも上手く言葉に出来ないのですが、一生忘れることはないでしょう。

さて、話を昨日に戻します。
それが何の防御もしていない指先で動いた瞬間、先述したような忌まわしき記憶が甦ってきて相当怯んだのですが、しかし昨日の私は、いいタイミングと言うべきか、かなり酔ってもいました。酔っている自分はやはり相当大胆になるのだなと今にして思うのですが、私はとっさにティッシュを手にしそれをガッ!と掴んでギュッ!!と握り潰してポイッ!!!とゴミ袋に放り投げることが出来たのです。この間、約10秒とかからなかったでしょう。これまで書いてきた長い文章は、その時思い出した記憶を含め、10秒にも満たない間の出来事なのです。

今のマンションは、共有部分の手入れも行き届いた清潔なマンションですし、自分の部屋も、なるべく清潔を心がけてきました。しかし、とうとうそれはやってきてしまいました。また現われるかと思うと、決して大げさではなく、熟睡出来ないんじゃないかとすら思います。

どうすればあの忌まわしき生命体から逃れられるのか……
というか、何でわざわざこんな文章を書いたのか、自分でもわかりません。

2007年04月13日 12:45 | 悲喜劇的日常
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Comments

>Chocolateさま

“1匹いると100匹はいる”というフレーズ、すでに何人かに言われました。もちろん、私も以前からそのようなことは聞いていたんですが、あらためて言われると恐ろしいですね。

とりあえず昨日、コンバットを導入いたしました。
効果があるといいのですが。


Posted by: [M] : 2007年04月16日 14:41

ほほほ、Mさんはゴキちゃんが苦手だったんですか〜
私も嫌いですよ。なんかあの黒光りしたところがオエーです。
しかし1匹いると100匹はいるって言いますからねー。
残りの99匹が一気に登場しないことを祈りま。南無〜
Mさん頑張れ〜〜古典的だけど、ゴキブリホイホイとか仕掛けてみたら?


Posted by: Chocolate : 2007年04月14日 08:51

>fujikijunさま

名前入れときました。
情報ありがとうございます。
そうですね、仰るとおりです。
やつらは本当にどこから来るのか分りませんから、
とにかく今まで以上に清潔を心がけねばならなそうです。


Posted by: [M] : 2007年04月13日 18:59

あ、すいません。名前を書くのを忘れてしまったようです…。そうですね、おそらく一定期間は入室を控えることになると思います。さらに、電機製品、食器類、食料品にも、何かしら防護するためのシートを被せる必要があるのかもしれませんね。と思うと、かなり面倒なように思えてきました…。しかも、亡骸の問題は完全に想定外でした。世の中、キレイに治まるようには出来てないものですね。


Posted by: fujikijun : 2007年04月13日 17:52

>匿名さん

お名前が無かったのでどなたかわからないのですが、いつもありがとうございます。
「バルサン」的アイテムは試したことがないのですが、あれは一定時間家に入れないんですかね? それともう一つ、終った後、部屋に亡骸があったりした日には、昔のアニメっぽく泡をふいて倒れるかもしれません。
何かもう、自宅に帰るのが嫌になってきます…
克服出来ないですね、あれだけは。


Posted by: [M] : 2007年04月13日 16:47

こんにちわ。いつも楽しく拝見させて頂いてますが、今回の記事に限り、「ああ、最後まで読むんじゃなかった」と、際限なく後悔してしまいました…。心中、お察しします。一度、「コンバット」的なアイテムではなく、「バルサン」的なアイテムを使用してみてはどうでしょうか。ぼくも、何でこの記事にコメントを書いているのか、自分でもわかりませんが、なんか「書かなくちゃ!」という気になってしまいました。


Posted by: fujikijun : 2007年04月13日 15:11
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