2007年03月30日
「LE ROUGE」et「LE MEPRIS」
昨晩、自宅でマルサラ酒など飲みながら見るともなくテレヴィを眺めていると、ふと、どこかで見たことのある画面が目に飛び込んできました。それは、黒バックに真っ赤なゴシック系のフォントで「LE ROUGE」という文字が配置されている画面でした。ちょうどこんな感じで。
その見覚えのある画面に私の映画的記憶が反応するかしないかの瞬間、あの重厚で倦怠的でしかしこよなく美しいジョルジュ・ドルリューの名曲「CAMILLE」が聞こえてきました。ジャン=リュック・ゴダールの傑作『軽蔑』において幾度と無く繰り返されたあのバルドー=カミーユのテーマをテレヴィCMで聞くなどとは思いもよらず、椅子からずり落ちてしまうほど驚きました。
どうやらCHANELの新作リップ「ROUGE ALLURE」のCMだったようです。画面には、半裸でベッドに寝そべるブロンドの美女と、その傍らにはリップを手にした恋人らしい男がいる。『軽蔑』冒頭のシークエンスをそのままイタダいたこの画面の、いかにも現代的な艶やかさに妙な違和感を覚えないわけではありませんが、その女性の口から発せられる「私の唇好き?」という言葉に思わず息をのみました。彼女の途方もない美しさは、バルドーとはまた異質でありながら見事というほかありません。
この手のCMに感動したのは、もうかれこれ20年近く前になるかもしれませんが、GIORGIO ARMANIの香水のCMを見た時以来かもしれません。今思い出しても、ほとんど映画みたいなCMでした。youtubeで見られないのが残念。
さて、これをゴダールが見たらいったいどんな思いを抱くのでしょうか。
実はプロデューサーの意向で本編とは別に加えられた、ほとんどサービスショットに過ぎなかったあのシーンが、40数年後にこのような形でフィーチャーされていると知ったら……。
「ROUGE ALLURE」のCMと『軽蔑』冒頭のシークエンス比較
2007年03月30日 10:04 | 映画雑記
>yasushiさん
『軽蔑』のカット割りとは随分違いますね。女性を映したショットは明らかに真似ていますけど。
まあ、シャネルの口紅のCMが『軽蔑』でなければならない理由などはないでしょうから、ディレクターがゴダール好きというだけかもしれませんが、私もこういうのは嫌いではありません。
むしろこのCMから『軽蔑』を知って、dvdで観てくれたりする女性が増えることを期待したいです。
Posted by: [M] : 2007年04月02日 14:42
昨日実家にてそのCMを初めてみました。この場合その設定もそうですが、音楽の占めるところは大きいですね。曲が違ったら僕はなんとも思わないでしょうし。
ネットが遅くて案の定YOUTUBEの映像は見れませんが、『軽蔑』はこんなにカット割ってなかったですよね!?その辺はCMだから当たり前ですね。
ゴダールもいくつかCM撮ってますが、当たり前ですがゴダールだったらこうは撮らなかったでしょうし、そういう意味ではこの手のパロディはなんだかんだ面白いです。どこまでの人が気がつくのかはわかりませんが、そのへんの微妙な感じも狙いなんでしょうか!?
それにしてもプロデューサーの意向で加えられたとは知りませんでした。
Posted by: yasushi : 2007年04月01日 10:35