2007年03月19日

本当は『世界最速のインディアン』も観るつもりでしたが…

やっぱり週末に3本くらい観ると概ね満足するなぁ、と。しかもそこにつまらない映画が含まれていなければ尚更、というわけで、先週は多くの人が観ているだろう『ドリームガールズ』と、映画好きには評判のいい『松ヶ根乱射事件』と、ほとんど観ている人がいなさそうな『許されざるもの』の3本を。

すでにオスカーの影響も薄れ始めた土曜日初回の『ドリームガールズ』ですが、それでも70人くらいは入っていたので、結果的にはこの3本のうち最も客が入っていた映画だったわけですが、本作は私が想像していた以上にミュージカル映画でした。よって、感動する部分があるとすれば、やはり歌をうたうシーンということになるのでしょうが、本作には、リハーサルから本番の舞台へワンシーンで繋いでいくという場面が数箇所あったように記憶しています。その自然で劇的な繋ぎは悪くなかったです。例えば、ジェイミー・フォックスが中古車ディーラーをやめるくだりや、“ドリーメッツ”から“ドリームガールズ”として生まれ変わって徐々にブレイクしていく過程にみられるテンポのいい編集があるのに、全体的に若干の長さを感じさせてしまうのは、やはり本作の中心が歌そのものにあるからなんでしょう。とはいえ、ジェニファー・ハドソンの体格から発せられる強烈な歌声は印象的で、彼女は愚か、ビヨンセ・ノウルズすら一度も聞いたことがない私にとっては退屈というほどではなかったのですが。まぁこの手のサクセスストーリーは、どれほどパターン化されていたとしてもそれなりには楽しめるわけで、流石に声高にその出来栄えを喧伝するきにはなれませんが、観ないよりは観た方がいいに決まっています。

『松ヶ根乱射事件』がかなり面白かったのは言うまでもなく、特にラストシーンの脱力感は、こちらが“乱射事件”に求めていた期待(というか予測)を裏切ってはいなかったし、登場人物の演出や相変わらずのキャスティングの妙(川越美和!)など、素晴らしいとすら思いました。全編に漂うあの微妙なエロティシズムなどもろ私好みで、こんなに“いやらしい”日本映画を今年はもう観ることがないでしょう。
本作を観て、山下監督はやっぱり天才なのか?ということを考えてしまったとしても、それは何ら大げさな思考ではありません。私はまだ観ていない作品もあるのですが、それは非常にまずいことだと、あらためて自覚いたしました。

ほとんど無名だった大学生ユン・ジョンビンが卒業制作として撮った『許されざるもの』は、その邦題がいやおう無く想起させるイーストウッドの『許されざる者』とは何ら関係はないと思いますが、題材として、キム・ギドクの『コースト・ガード』が思い出されたとだけ書いておきます。この2本の韓国映画に共通している感情、それは“怒り”だったのだろうということも。なお、監督は本作で俳優としても好演しています。彼が自殺するシーンの声は、ある意味首吊り自殺シーンを更新したかもしれません。

2007年03月19日 19:16 | 映画雑記
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Comments

>yasushiさん

そうですね、私にとっての山下監督は、作品の出来がどうこうという前に、肌が合うという監督なのかもしれません。次回作『天然コケッコー』の予告もみましたが、こちらも楽しみです。

『世界最速のインディアン』観てきました。
いやー、かなり好きな映画でしたよ。本作に関しては、後程簡単に書くつもりです。


Posted by: [M] : 2007年03月22日 09:27

いやー観たいものずくしですね。
『ドリームガールズ』もベタながら外せなさそうですし、特に『松ヶ根乱射事件』は待ったというか、山下監督が天才かはわかりませんが、短編の頃から無視ができなかったですし、すっごく好きなんですよね。映画としてどうこう以前に自分の感覚にフィットする感じで。早く観たいですね!

療養中に未見のものも含めギドクも観直そうかと思います。

ちなみに『世界最速のインディアン』はどうなんですかね?


Posted by: yasushi : 2007年03月21日 07:25
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