2007年03月06日

「日本映画学校 第19回卒業制作上映会」に参加

また仕事が忙しくなってきて、いくつかのレビューが滞っているばかりか、平日のレイトに行くことすら危うい状況です。それでもなんとしてもキム・ギドクだけには行かねばならないので、今日は頑張って明日絶対に『リアル・フィクション』に行くとします。
ギドクと言えば、先日デビュー作の『鰐』を自宅で鑑賞しましたが、やはり随分と荒削りな印象です。まだ全て観ていないので内容に関してどうこう言えませんが、カット数が今と比べて多いんじゃないかという印象。まぁ何にせよ、劇場で観られないのが残念です。

さて、先週は劇場にて3本鑑賞。
土曜日は「日本映画学校 第19回卒業制作上映会」に参加。目当ては朋友・[R]君が監督した『ゆいもの』(VTR 45分)というドキュメンタリーでした。友人の作品を観るという機会はほとんどないのですが、まだ若い彼の、映画に対する“飢餓感”みたいなものは非常に貴重で、それはある種尊敬に値するとすら思うので、そんな彼の撮った作品であれば、友人として観る義務があると思った次第。
作品については、今度彼に会ったときにでもゆっくりお話したいと思いますが、鑑賞後に即座に思い出されたのは『鉄西区』の第3部でした。そういえば、ポレポレ東中野で『鉄西区』が再上映された時、「スタッフにも絶対観にいくように言っておきました」などと私に報告してくれましたが、別に『ゆいもの』が『鉄西区』のどこかをイタダいていたとかそういった低次元の話ではなく、そんなシーンはどこを探しても見当たらなかったわけですが、作品から発せられる“匂い”というものがあるとして、それが『鉄西区』を観て感動した時のそれに似ていたんじゃないかと思ったのです。彼が敬愛するレオス・カラックスやロベール・ブレッソン、もちろんそれらとも異なる『ゆいもの』ですが、浴びるように映画を観てきた彼だからこそ撮れたであろうショットというものが間違いなくあったはずで、私はそこに注目し、結果的に満足しました。まぁこの続き(といっても大してありませんが)は飲んだ時にでも。[R]君、お疲れ様、そして卒業おめでとう。

実はもう1本卒制を観ました。『キャラメルドロップ』(16mm 40分)というドラマで、監督は女性でした。ほとんどの登場人物の演出が演劇的な領域に収まっていたように思えました。フィクションならではの“嘘っぽさ”(特に人物の年齢とメイクの関係性など)をもっと見せてほしかったということと、ラストで主人公の女性が幼馴染の元に走り寄るロングショットに気恥ずかしさを隠し切れなかったことを除けば、壊滅的な出来栄えということも決してなかったと思います。同性には同性の心理が理解できるという認識が一般的なのかもしれませんが、そういう心理も映画になった途端に嘘っぽくなったり、絵空事めいたりしてしまうもので、それはほとんど避けられないことなのかもしれません。つまり人間の心理などは誰にも理解出来ないとも言えるのでしょうし、だったら曖昧な演出は映画にとっては命取りになるのかもしれません。そんな感じで、映画における演出というものについて少なからず考えさせてくれたという意味で、興味深い作品ではありました。

結果的に12本中2本しか観られず、全部観ておくんだったと悔やまれもしたので、今後もこういった機会には積極的に参加していこうと思います。

ところで、マルコ・フェレーリと言えば誰でも思い出す作品は『最後の晩餐』かと思いますが、この怪作を撮った翌年、ほとんど同じキャストで、さらにカトリーヌ・ドヌーヴまでも動員して撮ったこれまた怪作と言うほかない作品があって、日曜日はそれを日仏学院で観ました。
『白人女に手を出すな』という妙な題名を持つこの映画の存在を私は知らず、今回の特集上映で初めて目にしたくらいですが、例によって日本語字幕なしだったにもかかわらずこの面白さは特筆すべきもので、その面白さを一言で言うなら、あまりにも出鱈目であるがゆえに痛快、ということになるか、と。
今は時間が無いので、詳しくは後日書きます。仮に『最後の晩餐』が好きでこの作品を見逃したかたがいるとするなら、それはもう深く後悔していただくしかないとだけ言っておきます。

2007年03月06日 11:50 | 映画雑記
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Comments

>かおるさん

ニアミスでしたね。
誰かに会うかな、とは思ってたんですけど…

『鰐』はずいぶん前からポレポレ東中野で公開という情報が出回っていましたが、交渉が難航しているみたいですね。先に見てしまいましたが、公開されたらもちろん行くつもりです。


Posted by: [M] : 2007年03月11日 12:41

「リアルフィクション」、同じ会場にいたのにお会いできなくて残念でしたー。「鰐」は今回のイベントでやるかなーと思ってやらないから残念でしたね。mixiのコミュでやるってウワサになってたけど、どーなんでしょう?・・・と、あまり本文に関係ない話題でゴメンなさいね(苦笑)


Posted by: かおる : 2007年03月08日 11:02

>yasushiさん

今年は早く桜が咲きそうです。私の中では、お花見を重要イベントの一つに位置づけているので、非常に楽しみですが、花粉症も酷いので酒飲んでごまかそうと思います。

日本映画学校の卒業制作上映会には今回初めて参加したのですが、友人が居なかったらそういう情報も自分のところには届いていなかったと思います。学生の上映会というのは、どちらかというと、より“こちら側”に近い感覚があって、そこがまた面白いなと思います。中には驚くべき傑作が紛れ込んでいたりするし、発見の楽しみもまた映画の楽しみの一つだと思うので。刺激受けますよね。

『白人に手を出すな』、海外では恐らくメディア化されているかと思います。私もどうせ字幕なしで観たくちですから、いっそ取り寄せてもいいかなと。

yasushiさんのブログ、いつも読ませていただいていますが、実は無類のネコ好きとして、あの記事に思わず反応しそうになったのですが、あえて自粛しました(笑)


Posted by: [M] : 2007年03月08日 10:29

日本映画学校の卒業制作上映会ですか。そんな時期なんですね。桜ももうすぐ咲きそうですし。
そういえば確か元会社の先輩が10年ほど前の卒業生だったような。関わった作品を見せてもらったことがあったんですが、何故か光浦靖子が出てました。

ご友人も作品を上映されたということで、2作共に非常に意味のある鑑賞になったようですね。
学生の映画祭、上映会ってやっぱりいいですよね。僕も刺激を受けたいです。

また忙しくなってきたようですが、身体には無理せずやって下さい。 

『白人に手を出すな』観たかったなあ。


Posted by: yasushi : 2007年03月07日 08:19
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