2007年01月15日

『気球クラブ、その後』における思いがけない感動

先週はほとんど映画を諦めていたのですが、何だかんだいいつつ2本は観られました。
観ないと決めていても禁断症状は出てきてしまうもので、それは酒をしこたま飲んでも解消されなかったということです。

『プラダを着た悪魔』にはあまり期待していなかったものの、悪くはありませんでした。
私はアメリカのテレヴィドラマなど1本も観た事が無いので、デヴィッド・フランケルという監督も、パトリシア・フィールドというスタイリストの名前も一切知らずに本作を観たのですが、2人ともかなり名の知れた人物のようで。
物語の展開は、それこそ絵に描いたように図式的ではありましたが、アン・ハサウェイが変貌していく描写に、最良のアメリカ映画的伝統を見つけることが出来たので、それで私は7割方満足でした。
要所要所に実在するデザイナーの名前が出てきて、あの辺りは多少なりともファッションを知っている人でなければ面白くもなんともないのでしょうが、本作は恐らく、多くの働く女性に向けられているのだろうし、わが国のようなファッション消費大国における適度に知的な女性達であれば、きっと楽しめるのでしょう。
ラストシーンで、すでに袂を分ったアン・ハサウェイとメリル・ストリープが一瞬だけ再会するシーンにおける、メリル・ストリープの顔。あのわかりやすく良質な“演技”は実に感動的で、テレヴィドラマなどは時間があっても観る気がしないけれど、映画になればこういった作品も悪くは無いなと思わせてくれました。

もう1本は結構期待して観た『気球クラブ、その後』。これはレイトショーでしたが、1人でふらっと観るにはかなり良い映画ではなかったかな、と。その後、自宅に帰るまでの余韻も含め、是非1人で鑑賞して欲しい映画でした。
ほとんど思いがけず、川村ゆきえの演出の素晴らしさに舌を巻いたというのが最大の収穫。彼女のすこぶる現代的なキャラクターは、非常に月並みな言い方ですが、すぐ傍にいてもおかしくないほどに“リアル”で、彼女自身が持つ本来の自分と役柄とのバランスが本当に絶妙でした。ああゆう女性を描ける園子音はやはりすごい。やはり似たような感覚を『紀子の食卓』にも感じたのですが。
荒井由美の「翳りゆく部屋」が劇中で何度かリフレインされ、中盤とラストで歌詞までも出てきます。まさにあの曲から想を得たという本作なので、映画自体もいささか暗めではあるのですが、あの雰囲気、私は嫌いではありません。クラブの仲間達が集って笑いあい、飲むという何の変哲も無いシーンが印象的なのも、根底に流れるあの“暗さ”があったからだろうと、今は思います。
園監督の作品からは、今年も目が離せそうにありません。青春という言葉を信じていようがいまいが、やはり必見と言うべきでしょう。

2007年01月15日 12:00 | 映画雑記
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Title: 気球クラブ、その後
Excerpt: 気球クラブ、その後
From: DVD レンタル Check
Date: 2007.04.05
Comments

>yasushiさん

ご返事遅れましてすみません。
毎度お気遣いをありがとうございます。

まさに公開ラッシュ、『HAZARD』が眠っていた期間を思うと、嘘のような充実振りです。
yasushiさんが、一日も早くこの急速な流れに乗られるのを、楽しみにしております。


Posted by: [M] : 2007年01月19日 18:07

お忙しいようですが、無理はなさらないで下さい。

昨年の『紀子の食卓』『HAZARD』『気球クラブ、その後』、本年2月の『エクステ』へと、園子温監督作品が怒濤の公開ラッシュのようですね。『夢の中へ』しか観ていないのですが(恥ずかしながら当時話題になった『自殺サークル』も観ていません・・・)、現在も今後も非常に楽しみですね。
やはり世の中って常に進んでいて刺激的ですね。


Posted by: yasushi : 2007年01月15日 19:34
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