2006年11月24日

“ギャスパーに捧ぐ”の真意は?

昨日はシネマライズで『エコール』を鑑賞。客入りは半分くらいといったところでしょうか。

カルネ』の製作と編集(看護婦役で出演も)でキャリアをスタートさせたルシール・アザリロヴィックは、その後52分の中篇『ミミ』を監督します。本作を観たのはかれこれ10年以上前で、“ミミ…”という呟き声と黄色が強調された画面しか覚えておりませんが、その製作と撮影と美術を、公私にわたるパートナーであるギャスパー・ノエが担当したということが私にとっては重要だったので、その時まだ『カルネ』1本しか観ていなかったにもかかわらず熱狂的に絶賛した私は、『ミミ』はちょっと感じが違うなという程度の感想しか持たなかったかもしれません。『カルネ』も『ミミ』も『カノン』も、少女が重要な役割を果たす映画だったわけですが、ルシール・アザリロヴィックの長編処女作である『エコール』は、ほとんどのキャストを少女が占めるという映画で、ルシール・アザリロヴィックの独特の世界観は、いよいよ本作で一層顕在化したと言えるのかもしれません。

『エコール』自体の感想は別の機会に譲るとして、本作の最後に“ギャスパーに捧ぐ”というテロップが出た時にはちょっと驚かされました。“ギャスパー”というのは無論、ギャスパー・ノエのことでしょうが、『アレックス』以降、『変態村』の宣伝に彼の名前が使われたという以外にほとんど音沙汰がなかったので、まさか死んでしまったのだろうかと不安になってしまったというわけです。
しかし帰宅後に調べてみると、ギャスパー・ノエは『アレックス』以降も『Destricted』と『8』という2本の新作(いずれもオムニバス)を撮っており、ただそれらが日本に入ってこなかったというだけの話でした。ということはつまり、“ギャスパーに捧ぐ”という言葉は、やっと長編デビューすることが出来たルシール・アザリロヴィックが、これまでともに頑張ってきたギャスパー・ノエに対して心からの賛辞を送ったということだと、今はそのように納得しています。

『エコール』のクレジットにはギャスパー・ノエの名前が見当たりませんでしたが、撮影は『アレックス』や『変態村』のブノワ・デビエが担当したようです。冒頭、水中の気泡の大胆な描写や少女が走って寮から逃げ出すあたりのカメラなどは、なるほど、“ノエ的”かもしれません。しかし122分という時間は若干長かったかな、とは思います。しかしいずれにせよ、小学校からずっと共学という環境で育った男性である私にとって、かなり新鮮な世界だったことは疑うべくもありません。

ロリータ嗜好の方でなくても、一度その世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。

2006年11月24日 10:09 | 映画雑記
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Comments

>Chocolateさん

そうですね。まだ現役のようで。
つまり、単純に感謝しているという意味でしょう。映画作家として一人立ち出来たんですから。
やはりフランスでもあんな学校はないんでしょうね。

>INT.さま

どうもです。
所謂ロリータ嗜好の欲求を満たす映画ではないかと思われます。私も鑑賞前は安易にそう思っていましたが。
男性の視点で観た場合、確かにエロティックな匂いを感じ取るショットもあるにはあるのでしょうが、やはり監督が女性ですからね。それは『ヴァージン・スーサイズ』の場合も同じではなかったか、と。
偶然なのか、双方とも同じ劇場ですね。


Posted by: [M] : 2006年11月27日 10:26

うわーエコール鑑賞されましたか!羨ましいです。
私も公開前から行こう行こうと思っていたのに
公開前後から仕事が鬼のようです_| ̄|○
感想楽しみにしております。

割と映画に縁の無い人でもエコールは少女嗜好の人
(と言うと人聞き悪いですか。少女趣味というか)
に期待感が高かった感じですねー。
ヴァージン・スーサイズとか観ていた私もそうでしたが。


Posted by: INT. : 2006年11月25日 01:12

こんばんわっ。

ギャスパー・ノエとまだ付き合ってるみたいですねー。
捧ぐはなんだったのでしょうか。(笑)

ちなみに私は中高女子高でしたけど、
かなり賑々しい学校だったので「エコール」の世界とは程遠かったです。^_^;


Posted by: Chocolate : 2006年11月24日 23:07
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