2006年11月10日

やっぱり最後は映画の話になってしまう芸の無さ

『鉄西区』の文章がなかなか書きあがらず(別にそれほどの長文ではないのですが)、やっぱり鑑賞後時間を置いてしまうとシーン自体はもとより、あるシーンを観た時に芽生えたもろもろの感情を記憶から呼び起こすまで、結構な時間を割かざるを得ないな、と毎度同じようなことを思うのでした。

さて、今日は映画以外のことで、最近目にしたり耳にしたり、あるいは体験したりしたことに関して。
別に、何とか無理にでも更新しなければ、という気持ちの表れではありません。

「エアセックス」という、酒も入らずには到底出来そうもないパフォーマンスについて
先月、都内にて「第2回エアセックス世界選手権」というものが開催されたようです。
私は恐らく多分に漏れず、「第1回」の存在すら知らなかったので、このニュースを読んだ時は思わず我が目を疑ってしまいました。
メディアを中心に結構な盛り上がりを見せていたらしい「エアギター」ですら間近で観た事が無いし、日常的に「エア」ならぬ実在するギターを弾いている私にとって、たとえば電車の中で音楽を聞きながら右手が(時には両手で)「エアギター」していることなど日常茶飯事なので(あそこまで大げさな身振りではもちろんありません)、あの恐らくギターを弾けないであろう人が演じる過剰に見世物的なプレイ(といっても振りだけですが)には、あまり興味を惹かれなかったのです。
しかし、今回新たにその存在を発見した「エアセックス」というものは、そのままズバリの猥雑なネーミングも悪くないし、それを想像した時に“いかにもありそうな”プレイばかりが頭に思い浮かんでしまうという妙な現実感があるしで、さらにこの下品なパフォーマンスが、他でもない日本で生まれたものだというあたりがなかなか誇らしいし、その創始者がやはりというべきか、あの杉作J太郎氏だったという事実にも深く肯けて感動的ですらあります。冗談なのか本気なのか、俄かには解りませんが、先日開催された「第2回エアセックス世界選手権」にはイギリスのBBCや、アメリカのテレヴィ局も取材に来たのだそう。
まさに世界に羽ばたこうとしているこの「エアセックス」ですが、恐らく男性であれば一度や二度やったことがあるのではないか、と思われます。無論、それは予めある種のコンテクストが共有された、極限られた空間でのみ通用するものだったとは思うのですが。私の場合、確か中学生の頃にあるAVを観て、それを友人に紹介する時に演じてみせたのが最初だったように記憶していますが、恐らくその時のパフォーマンスは相当稚拙だったでしょう。やはり磨きがかかってくるのは実体験を伴った後ということになりましょうか、大体友人と飲んで酔ってくると、下品さを通り越してほとんど過酷な現実感を伴いつつその光景が容易に想像できてしまうような、極度に猥褻な猥談に興じるということが多かったこともあり、その時は皆、ああでもないこうでもない、いやそれは違うこうだ、バカそんなんじゃ只の変態だろうと、各々のパフォーマンスを伴った議論が喧々諤々と行われていたという、まぁ思い出すにつけバカ丸出しですが、今だってそう大きくは変わっていないだろう、などとも思われてしまうのが情けない。
ところでこの「エアセックス」は、未だ実際のセックスを体験したことのない方が高度なテクニックを持っていたっておかしくはないわけで、その辺は「エアギター」同様、あくまで見世物に徹しているようですが、どちらをより見たいかと聞かれれば、今は間違いなく「エアセックスだ!」と断言するでしょう。
なお、次回は11月末開催予定。

中原昌也氏が「第28回 野間文芸新人賞」を受賞するという時代
ただひたすらに陰惨で心無く、だけれどもかなり高度な笑いや言い回しも含まれているのでところどころで驚きを禁じえないために、結局は新刊が出ると読まざるを得ないと言う意味で好きな作家だと認識している中原昌也氏。膨大な知識と経験に裏打ちされた彼の映画評は今さら言うまでも無く面白いし、そしてためにもなりますが、彼が書いた小説はと言えば、作品を重ねるごとに、彼という人間の刻印が濃厚になっていくかのような気がします。
文筆そのものを嫌う彼が書いた文章が、決してまぐれ当たりではなくこのような大きな賞を獲ってしまうという時代、それが現代の日本なのでしょう。無論、私はその点に関してのみ、今の時代は素晴らしいと思います。いくら審査員の1人に彼の友人が含まれていたところで、その思いは変わりません。
文学賞に限らず、あらゆる賞の審査が客観的であるべきだとは思わないし、ましてや作品の自体の価値も、賞が決めるわけではないのですから。

これを読まなきゃ始まらない、というレヴェルの映画本について
最近読んだ本の中で群を抜いて面白かったのは、やはり「シネマトグラフ覚書」でしょうか。
購入した本はまず通勤時に読んで、会社の喫煙所でタバコを吸うたびに少しずつ読んで、さらに寝る前にベッドで読む、というのが私のパターンですが、この本に関しては、何故だか、一番落ち着いて読めるベッドの中だけで毎日数ページずつ、意識してゆっくりと読み進めました。本書は、映画を撮る監督という立場から書かれたものに違いありませんが、映画を観ることにも大いに役立つ、数ページ読んだ上でそのように直感し、その一言一言に込められたロベール・ブレッソンの思い(決意)を何とか具体的に(現実的に)映画を観ることに役立てよう、そんな風に思っていたので。
眠りにつこうとする私の脳を、その都度覚醒させていくこの本のおかげで、私は数日間、熟睡が困難になったほどです。しかしなんという本でしょう。そんな危険な本ですが、今後も繰り返し読むことになりそうです。

さて、日々ネットを徘徊していると、行きつけの書店に通うだけでは入手できないような思わぬ情報を入手することもしばしばですが、つい先日目にしたあるニュースには心底驚かされ、もう長いこと予告だけされていたのに一向に発売する気配が見られなかったその本だけは、どんなに高かろうと入手しなければと決意したのですが、発売以降、外国語でしか読むことの出来なかったジル・ドゥルーズの「シネマ2」もまた、映画を観ることに多くの示唆と刺激を与えてくれることだろうと、まだ手元に届く前から興奮を隠せません。
すでにamazonで発売されているようですが、私としては、是非書店で手にとって購入したい欲望に駆られています。491ページありますからそれなりに重い本であろうことは想像できますが、であるがゆえに、どこか大きな書店の映画コーナーでその感触を味わってから購入したいと思います。
阪急ブックファースト渋谷店にあるといいなぁ。

さて今週末は、Yahoo!動画のおかげでロハで観られる『硫黄島の砂』を鑑賞し、2度目の『父親たちの星条旗』に臨むとしましょう。来週からFILMEX一辺倒になりそうなので、新作も2本くらいカバーしておきたいと思っています。

2006年11月10日 17:39 | 映画雑記
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Comments

>ken-Uさん

いえいえ、わざわざありがとうございました。

『鉄西区』はそうですねぇ、dvdでも出ればいいのでしょうが、あれは是非劇場で体験していただきたいです。私も上映情報見つけたらお知らせしますよ。


Posted by: [M] : 2006年11月18日 09:43

なるほど、既にDVDを入手されていたんですね。よかった。以前、ダビングできそうなことをいっておきながらできなかった(それも酔った挙句の居眠りが原因で!)もんですから、ちょっと気になっていたんです。

あと、『鉄西区』を見る機会にはなかなか巡りあえそうにないですね。見るにはちょっと覚悟がいる作品のようにも思えますが、[M]さんの文章を読む限り、その価値は充分にあるような気がします。気長にその機会を待つことにします。


Posted by: Ken-U : 2006年11月17日 22:30

>Ken-Uさん

こんにちは。コメントありがとうございます。
実は、私もKen-Uさんにコメントしなければと思っていて出来ないでいましたが、当ブログにもたびたび顔を出していただいているchocolateさんが『666号室』をdvdに焼いてくれたんです。
観終えてなかなか興味深かったので、ken-Uさんにも伝えなきゃ、と思いながらも考えがまとまらず、そのままになっていました。わざわざお気遣いいただき、ありがとうございました。

『鉄西区』ですが、少し前に「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー 山形in東京2006」としてポレポレ東中野で上映されたんです。1日限りの上映だったので会社を休むしかなかったのですが、その価値は充分ありました。何度か休憩を挟みながらの鑑賞でしたが、時間の長さは嘘みたいに感じませんでしたよ。


Posted by: [M] : 2006年11月17日 08:16

[M]さん、こんにちは。

どこにコメントしようか迷ったんですが、ここに書かせてもらいます。

先日、ついに『666号室』を録画しました。この夏、DVDレコーダ(旧型ですけど)を買ったので、CD-Rにならダビング可能です。ご希望でしたらお申しつけください。ただし、うまく再生できるかわかりませんが...

あと、『鉄西区』はどこで観たんですか?9時間を超える尺はあれですけど、機会があれば是非観てみたいなと思いました。


Posted by: Ken-U : 2006年11月17日 00:03

>chocolateさん

そう、エアギターのセックス版。
で、どこでやってるかですが、第一回目の大会は新宿ロフトプラスワンだったそうです。多分二回目もそこだったのかも。

どうも「タモリ倶楽部」っぽいと思ってたら、やっぱり最初は「タモリ倶楽部」でエアギター特集の時に発案されたみたいです。

調べれば、ネットにもいくつか情報落ちてますよ。


Posted by: [M] : 2006年11月13日 17:51

Mさん

エアセックスってなーに?
エアギターのセックス版ですかいな?
私も興味ありまーす。(笑)
どこでやってんの?


Posted by: chocolate : 2006年11月13日 10:07
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