2006年07月18日
青と赤のコンポジション
このところ随分まったりとした更新状況にある当ブログですが、別に更新が面倒になったとかそういうことではなく、単に書くことがないからとかそういうわけでもなく、ただ何となくとしか言いようがないのですが、強いて言うなら“太陽が眩しかったから”ということでしょうか。
というわけで先週末は、今年初めての“青”を求めて湘南へ。
もちろん、湘南の海が青いなどというのは幻想に過ぎず、波打ち際に近寄ってみれば、あれほど汚い海もまたなかろうとすら思われるのですが、私が求めているのは実際の青色というよりはむしろ、海を一つの抽象空間として捉えた場合の、まさにイメージとしての“青”なのであり、その只中に全身を浸す行為そのものが私にとっての“青を体験する”ということなのです。ちなみに言えば、“青の只中に全身を浸す”と言っても実際に海に身を浸すことなどなく、私がすることといえば、海にまで来ておきながら海には一切入らず、ただただ焼け付く砂浜で酒を飲むことくらいなので、これもまた一つの抽象というかイメージに過ぎないことを付け加えておきます。
さて、30度を軽く超える気温と本来であれば不快さしか齎すことのない湿気が、何故あれほどまでの、快楽にも似た開放感に繋がるのか。それは毎年海に行くたびに頭をもたげる疑問なのですが、今年もまたそんなことを考えながらビールやワインをガブガブと飲んでいると、我々のすぐ前方で、なにやらテレヴィクルーのような人々とインタビュアーと思しき女性が、その暴力性を隠すこともなく海水浴客たちにカメラとマイクを向けている姿を目撃しました。こっちに来られてはたまらないな、と思い、私は友人を残しシャワー室へと逃げ込んだのですが、冷水を浴びてシャワーから出てくると、案の定、彼らクルーは我々の場所のすぐ後ろで、ほとんど白雉としか言いようのない態度で、水着ギャルたちと共に、番組の一コンテンツを撮影している最中でした。ああ、これがあの有名な「マジックミラー号シリーズ」の撮影であったなら、我々はどれほど楽しかったかしれないな、などとバカ話に興じていると、すぐ後ろにいたテレヴィクルー一行に向かって、一人の外国人男性が激しく異を唱える声が聞こえてきたのです。彼が、一体何に腹を立てているのかは皆目見当がつきません。カメラマンだけならまだしも、出演していると思しき水着ギャルにまで「Fuck!」などと叫び、何が何だかわからない水着ギャルはただ途方にくれるばかりでした。あのような破廉恥な撮影を、この神聖な海でするんじゃない、ということでしょうか。あるいは、俺に許可もなくこの海で撮影するなら俺も出演させろ、ということなのでしょうか、真相は闇の中でしたが、我々傍観者にとっては、なかなか面白い珍事として記憶されました。ナイス、外国人!
そんなこんなで、そろそろ浜辺から退散して、去年も行った小料理屋で生しらすでも食べながら一杯やろうじゃないか、と改めて自分の姿を海の家の鏡でみると、そこにはどうやらホラー映画でしか目にしないような、真っ赤に塗りたくられた人間のようなものが映っており、ちょうどその時辺りから、全身をやけど特有の鈍い痛みが襲ってきたのです。ああ、失敗した…今年は最初から失敗してしまったぞ……、これは向こう数日間は大変なことになるな…と後悔しても時既に遅し、見事なゆでだこが2匹出来上がった次第。
帰宅後、その痛みは最高潮に達し、それは私にとって自業自得でしかないことなのに、何故か無性に腹が立って、自宅で一人、私は“荒くれ”に変貌しました。その対価として携帯電話が半壊し、側部と液晶部分がやはり壊れたターミネーターのようになってしまいました。そのような奇行に走らざるを得なかったのも、ひとえに“太陽が眩しかったから”なのです。なるほど、「異邦人」のムルソーはこんな感じだったのかもしれません。
今現在の私ですが、その顔面を例えれば『エルム街の悪夢』のフレディとしか形容できないほどの酷さ。一昨日、昨日と、「ドイツ映画祭2006」に参加予定だっただけにこの仕打ちは非常に辛く、しかしそれだけで貴重な機会を逸するのもまた愚かなので、何とか参加したものの、同席したこヴィ氏もさぞや驚いたことでしょう。
青に同化して赤になる。この夏は、かように奇妙な現象で幕を開けたところです。
どうなることやら……
2006年07月18日 12:50 | 悲喜劇的日常
>yukiさま
海が似合うかどうかに関しては、まぁ第三者の視点に任せるしかないのですが、私自身にとってはあまり重要ではなく、言ってみれば、“いい飲み屋を見つけた”くらいの感覚で、その気に入りの店に通っているという現状です。
ほら、あくまで自己中心的ですから。
そりゃああんなに有名な台詞ですから、背表紙にも載せるでしょう。
>こヴィ殿
あまりに場違いでした。猛省してます。
>[R]殿
なんだか今流行の“ミニチュア風”写真になっちゃいましたね。右前方にだけちょっとピンが合ってて。我々のような酒飲みこそ、海を満喫したいところですね。普段は暗闇に潜んでいる我々ですから。
>chocolateさん
海辺で食べるラーメン、ですか。なるほど、是非やってみましょう。
私も似たような恐怖を幾度も経験しているのに、基本的にそういう部分は学習しないようです。昨日よりましなりましたが、今朝辺りから顔面の皮が剥け始めて、もう見るに耐えません。
Posted by: [M] : 2006年07月19日 12:59
こんにちわっ。
ゆでだこになってしまったなんてあらら・・・
私はここ数年海水浴には行ってないんですが、
20歳ぐらいの時に日焼けと言うよりも火傷って感じで、
エラいことになりそれ以来日焼けは恐怖です・・・
でも海は好きなんですけどねー。
海辺で食べるラーメンが好きです。
Posted by: chocolate : 2006年07月19日 10:13
おっ、出だし好調ですね!
写真の“ピンぼけ感”がなんとも言えずイイですね。
まるで蜃気楼みたいで…。
去年の夏は、ゼロ! (一昨年は一度足を運んだが、見事に台風…)
今年は何度か、積極的に海へ行きたいと思います。
Posted by: [R] : 2006年07月19日 01:24
たぶん銀座でイチバン焼けていましいたね(笑)。
Posted by: こヴィ : 2006年07月19日 01:18
そうとう”太陽が眩しかったから”なんでしょう。
海が似合わないと思います。
それにしても「異邦人」のやつ、背表紙に”太陽が眩しかったから”って書いてやがんの。
Posted by: yuki : 2006年07月18日 19:03