2006年06月20日

「1st Cut〜映画美学校セレクション」その2

ちょっと時間が経ってしまいましたが、その1があってその2がないのはアレだろうという判断から、5/31に観た3本に関して簡単に。

 ・『如雨露』(監督・脚本:吉井亜矢子 2003/16mm/31分)
 ・『春雨ワンダフル』(監督・脚本:青山あゆみ 2003/16mm⇒DV/36分)
 ・『INAZUMA 稲妻』(監督:西山洋市 脚本:片桐絵梨子 2004/DV/31分)

『如雨露』は、そのあふれ出るイメージをどのように捉えるのかで評価が分かれる気がします。コマ撮りの特撮はなかなか頑張っていたと思いますが、ところどころに挿入される抽象的なイメージのおかげで何となく全体の印象がそれこそ水で薄まったようになってしまいました。もしそれが監督の狙いだったのなら、まさに狙い通りだったのかもしれません。

『春雨ワンダフル』は非常に奇妙なドライブ感覚があって、その突飛な物語の中に様々な要素が盛り込まれているのに決して破綻しておらず、だからといって小さくまとまっているわけではないあたりに感動しました。ビワコが木陰で子供を生んでから走り出すシーンが特に好きでした。前妻の愛人である出鱈目な外国人の演出にも素直に笑ってしまいました。非常に好感の持てる作品。

そして『INAZUMA 稲妻』。多分に漏れず、私も本作観たさにこの日を選んだわけですが、私が鑑賞前に思い描いていたイメージを軽く裏切るような(しかしこのニュアンスを伝えるのは至難の業なのですが)展開や演出に、いろいろ考えてしまいました。劇中、芝居と現実が溶解していくあたりはなかなか面白く、それと同じくして対立の構図が次第に横滑り(ズレて)していくのを観た私は、最終的になんだか煙に巻かれているような気になり、それを例えば、ミヒャエル・ハネケの『カフカの城』を観た後のような感覚ということになるのですが、それでも決定的に異なるのは、『INAZUMA 稲妻』が“情念の映画”だという点でしょうか。ファインダーの中心に存在する十字が頭から離れません。

というわけで、2日間に渡って観た「1st Cut〜映画美学校セレクション」、個人的には楽しめました。
来年こそは、メインのプログラムを観たいと思います。
なお、『蘇州の猫』のレビューはこれから書き始めますが、ちゃんと書きあがるかどうかは甚だ不安です。傑作ということに全く疑いがないのですが……

2006年06月20日 17:38 | 映画雑記
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