2006年05月11日
『ブロークバック・マウンテン』については黙して語らず
原題:BROKEBACK MOUNTAIN
上映時間:134分
監督:アン・リー
とりわけ大きな期待を寄せていたわけではないのですが、鑑賞後に感じた正直な感想は、長い割りにはどうにも食い足りないというものでした。4人の主要キャストの好演は疑うべくもないのですが…
アン・リーの演出は的確だったと思います。2人のバックグラウンドやそれぞれの性格も簡潔に説明されていたし、この物語ではどうしたって添え物でしかないそれぞれの妻を演じたミシェル・ウィリアムズとアン・ハサウェイにも、特に文句をつける部分はありません。
実は私、珍しく(?)物語のみを追ってしまうという観方をしてしまったのかもしれません。それというのも、ブロークバック・マウンテンを舞台にした冒頭の数十分に、その背景の美しさにもかかわらず退屈だと感じてしまったがゆえに、最後までほとんど漠とした感覚のまま機械的に観てしまったので、画面の連鎖やショットの強さ、抒情性や叙事性などに対する感性をまるで働かせることが出来なかったのです。そして、この風変わりな西部の物語“のみ”をひたすら消化していった結果、およそ賞賛とは程遠い複雑な気持ちになってしまったというわけです。
もちろん、ただ物語“だけ”を追いかけたって滅法面白い映画が存在するということも経験から知っています。つまり、私はこの『ブロークバック・マウンテン』という映画が好みではなかったということなのでしょう。その証拠に、漠とした私の感覚を一瞬でも目覚めさせる瞬間が、本作にはなかったからです。ミシェル・ウィリアムズとアン・ハサウェイが共に体を張ったあのラブシーンですら(2人が共に裸体を晒したこと自体は強く肯定したいと思いますが)。
どうして本作にほとんど乗れなかったのか、その理由も未だ判然としないのですが、まぁ積極的に本作を貶めたいとも思わず、つまりここは、黙して語らずという手段を半ば強引に選びたいと思います。
2006年05月11日 13:29 | 邦題:は行