2006年05月08日

「イタリア映画祭2006」雑感

イタリア映画祭2006より今年初参加となった「イタリア映画祭2006」、全12作品中私がセレクトしたのは3本。実は少なく見積もっても後2本は観たい作品があったのですが、どうにもあの会場のあの雰囲気になじめず、流石に連日通うのも辛いなと思ったので。

偶々開会式に出席する機会を得たのですが、数人いたゲストの中に、あの(!)マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督や、あの(!)ジュゼッペ・ピッチョーニ監督や、あの(!)サンドラ・チェッカレッリが紛れ込んでいて思わず声を上げそうになるほど驚いた次第。とりわけ、ちょうど『輝ける青春』のdvdを購入し再見した直後だったこともあり、やや大柄でベージュのスーツを着込んだマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督に見入ってしまいました。右の写真ではわかりにくいのですが、右端にいるのが彼です。

さて、以下簡単に3作品の雑感を書いておきたいと思います。

■私が望む人生(La vita che vorrei/2004年/125分/監督:ジュゼッペ・ピッチョーニ)
主演する2人は同じでも、前作『ぼくの瞳の光』とはかなり違った印象の本作。それは“劇中劇”というスタイルがとられているからなのかもしれません。特に際立っていたのが、現実と虚構の境界を逢えて曖昧にした構成でしょうか。劇中で演じらる役は19世紀が舞台なのですが、目に見えない心情が現実のそれであるのか、あるいはあくまで役を演じているだけなのかという部分を、繊細に描き出していたように思われます。ルイジ・ロカーショの演技はほとんど申し分なく、彼ほど髭のある姿と無い姿に落差がある俳優もそうはいないのではないかと思いました。サンドラ・チェッカレッリは個人的に非常に好みなので何とも言いがたいところですが、『キングス&クイーン』のエマニュエル・ドゥヴォスのように素晴らしかったとだけ書いておきます。

■13歳の夏に僕は生まれた(Quando sei nato, non puoi più nasconderti/2005年/115分/監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ)
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ作品は3本しか観ておりませんが、彼が描く“出会い(再会)”や“別れ”の場面は本当に心を揺さぶられる思いで、例えば本作において、遭難しかけた息子が救助された施設から仲間に見送られながら去るシーンだとか、その後、父親の友人夫婦との再会に涙ながらに抱き合うシーンだとかに何故あれほど心を動かされるのか、本当に不思議なほどあっさりとしていながら抒情を超えた何かがそこにはあるような気がしていて、未だそれが何であるのかはわからないままですが、一方で彼は、ネオレアリズモのように、というと若干語弊があるのかもしれませんが、非常に硬質で冷たい画面をも同じ作品に紛れ込ませることに長けていて、それはこの映画の終り方にも関わってくるので詳述はしませんが、とにかくグイグイと作品に引き込まれる感じがしました。これは一般公開もされますので、未見の方は是非。何人かのキャストが重なっていながら、『輝ける青春』とはまた違う感動がありました。

■瞳を見ればわかる(Te lo leggo negli occhi/2005年/82分/監督:ヴァリア・サンテッラ)
上記2作品は監督で選びましたが、本作は私にしては珍しく、主演女優で決めました。とはいっても、ステファニア・サンドレッリをこれまで積極的に観ていたわけでもなかった私ですが、すでに60歳を超えた彼女の余りに堂々としたイタリア女優ぶりは、それだけで私の目を惹き付けるだろうという予測はほとんど正しかったと思いました。監督はヴァリア・サンテッラ 。処女長編ということでしたが、なるほど、どことなくモレッティ的だったかもしれないとしたり顔で言ってみたくなるほど、82分という絶妙な上映時間で程よくまとまっていた作品でした。

ともあれ、今は東京でもイタリア映画が普通に公開される機会はそれほど多くはないので、イタリア映画好きとしては、また来年も参加することになりそうです。なお、今回私が観た作品はすでにdvd化されているようですので、イタリア語が聞き取れる方はそちらで観る機会も残されています。

2006年05月08日 19:26 | 映画雑記
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Comments

>マダムSさま

はじめまして。確かかえるさんのブログから辿って、貴ブログを読ませていただいたことがありました。
『恋愛マニュアル』ご覧になったんですね。私もすごく観たかったんです。一般公開してくれないものでしょうか。結構人入ってましたか?
私もまた来年行きます。こちらからも、後ほどTBさせていただきます。


Posted by: [M] : 2006年05月10日 10:00

初めまして Brilliant DaysのマダムSと申します。
リンクをたどって参りました。
映画祭は私も今年初参加で4本観ましたが、どれも”あたり”で大満足。雰囲気も好きですのでまた来年も行きたいと思っています^^
TB付けさせて頂きました。


Posted by: マダムS : 2006年05月10日 09:03
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