2006年05月06日

たとえ拙いリメイクでも、『ロンゲスト・ヤード』は今観られるべき映画である

ロンゲスト・ヤード原題:THE LONGEST YARD
上映時間:114分
監督:ピーター・シーガル

昨年鑑賞した『フライト・オブ・フェニックス』に続き、2年連続でロバート・アルドリッチのリメイクを観られるということが果たしてどれだけ幸福なのでしょうか。こちらとしては、観る前からどうしたってアルドリッチのほうが面白いに決まっていると思い込んでいるし、配給側も、ハリウッドメジャー作品であるにもかかわらず東京での上映が3館のみという、一体誰が本作の興行収入に期待しているのかわからないような扱いなので何だか哀れにも思えてくるという始末なのですが、仮にもアルドリッチのリメイクである以上、『フライト・オブ・フェニックス』程度に楽しませてくれるなら、金を払う価値はあるだろうという思いから、劇場にかけつけた次第。

個人的に、リメイク作にオリジナルのキャストが顔を出すというのがあまり好きになれず、それは確かにオリジナルへのオマージュと言えなくもないのですが、大方は老齢に差し掛かったオリジナルのキャストが、それほど大きな扱いというわけにもいかずに画面に登場しなければならないことが果たして幸福なオマージュ足りえるのかという疑問がいまだに消えません。オリジナルの主人公であるバート・レイノルズは本作において、どうやら2005年度のラジー賞・ワースト助演男優賞にノミネートされたらしいのですが、オリジナルから30年以上も経った今彼を担ぎ出して、ワースト助演男優賞にノミネートするなど、あまりに生真面目すぎて苦笑も出来ず、いっそのことどこかの映画祭で助演男優賞くらい与えたほうが、本人にとってもよほどダメージが大きかっただろうと悔やまれぬでもありません。やはりオリジナルでバート・レイノルズをいたぶる看守長役だったエド・ローターが、刑務所長を務めるジェームズ・クロムウェルのただのゴルフ仲間としてほとんど数秒だけ画面に顔を出すという部分に軽く頬を緩めるという程度は出来たものの、オリジナルへのオマージュというならいっそのこと『フライト・オブ・フェニックス』のように、ウィリアム・アルドリッチをプロデューサーに据えるくらいはしてほしかったと思います。

しかしながら、このリメイクは決して惨憺たる出来栄えというわけではなく、かなりの程度をオリジナルに忠実足らんとする姿勢には、本当にそうだったのかは別としても、やはりオリジナルへの深い愛情を感じ取ってしまうし、アダム・サンドラーを個人的にはそれほど良くはしりませんが、彼も決して悪くはありませんでした。アメフトのプロ選手として活躍した経歴を持つボブ・サップを頭の足りない腕力だけの大男として描き、彼のプレイシーンをほとんど見せなかった部分は決定的に正しいとすら思います。設定上の変更はむしろ『フライト・オブ・フェニックス』のほうが大きかった程で、オリジナルを知らない人間でもそれなりに楽しめる映画にはなっていました。ただし、だからこそどうしても言っておきたいのは、ここまで原作に忠実にしていながら、何故あの円陣場面を描かなかったのか。オリジナルで幾度も繰り返されたあの極めて感動的な円陣場面を、私は観たかった。オリジナルのラストシーンで使われるスローモーションの素晴らしさを無視し、それが今のハリウッドだと言わんばかりに序盤から馬鹿のひとつ覚えのように連発されるスローモーションに何とか耐えられたのも、あの円陣とあの掛け声が聞きたかったからです。それが残念でなりません。

まぁ以上のようなことは、オリジナルを何度も観ている人間のほとんど反動的ないちゃもんに過ぎず、この手の馬鹿馬鹿しい普通のアメリカ映画を普通に愛している方にとってはいかなる影響も及ぼさないものでしょう。それでいいし、かくいう私もこのリメイク作を友人・知人に薦めることに何ら抵抗があるわけではないのです。こういうアメリカ映画は、"今こそ”積極的に観られなければならない、私はそう思ってさえいるので、常日頃、こういう映画からは意識的に遠ざかっている人にほど、『ロンゲスト・ヤード』を協力にプッシュしておきたいと思います。

2006年05月06日 13:04 | 邦題:ら行
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Comments

>Mouさん

そうですね、パスしたいお気持ちは非常にわかりますが、どうか私に騙されてやってくださいませ。リメイクを見てオリジナルの偉大さを確認するというのも何だかアレですが、それでもやっぱりこの手の映画は嫌いではないんですよ。


Posted by: [M] : 2006年05月08日 09:39

ぼくもオリジナルの熱狂的ファンで、とても気になっていましたが、ごめんなさい、パスしたのでした。[M]さんのおっしゃる通りオリジナルへの愛情がそこまであるのなら、いそいそと見に行こうと思います。


Posted by: Mou Sato : 2006年05月07日 09:53
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