“カリブ”ではなく、“渋谷”の熱い夜

いつものようにチリビーンズにビールなど飲みながら、何か面白いテレヴィはやっていないものかとテレヴィをつけると、画面が相当酷いことになっていて、ほとんど砂嵐状態。ああ、先日模様替えしたときに、テレヴィのアンテナコードが抜けたなと思い当たりテレヴィ裏を見てみると、案の定コードが抜けていたので、再度しかるべき場所に差し込むも、何故かなかなか差し込むことが出来ません。こういった時、私の妙に短気たる性格が発露され、つい力ずくでグイグイ押し込もうとしてしまうのですが、全身の力という力を指先に集中するもビクともせず、「あっ！！　もしかして！！」と冷静さを取り戻した時にはもう時すでに遅し、コードの先端部分が壊れていて、修復不可能な状態になっていました。
もうテレヴィなんて無くてもいいかな、などと思うことが多くなった私も、その時ばかりはテレヴィが無いと生きていけないかのようにへなへなと床に座り込み、全身の力がスーっと抜けていくのが分かりました。一応毎朝出勤前の「やじうまプラス」が習慣になっているし、バラエティ番組はそれなりに観るので、今日当たり会社帰りにコードのみ購入しようと思っております。ま、どーーーーーでもいい話ですけど。

さて、テレヴィが映らなくなったので、パソコンに向かいながら今度は焼酎など飲んでいると、いつの間にか朋友・こヴィ氏から電話とメールが来ていたことに気づいたのですが、どうやら「今渋谷にいるんですが、これから会いませんか」とのことで、なるほど、夜10時過ぎという時間帯は、私が「こヴィ・タイム」と呼んでいる時間帯で、そういえば前にわが家に来た時もそんな時間帯だっことが思い出され、だからと言うわけではないのですが、「またわが家でよければ」と快諾しました。

程なく家に来たこヴぃ氏と、正味2時間程様々な話をしました。
氏は部屋に入るなり、いきなり一冊の大きく分厚い写真集を鞄から取り出し私に見せてくれたのですが。それは、「1712 North Crescent Heights : Dennis Hopper Photographs 1962-1968」というもので、デニス・ホッパーが60年代に撮りためた家族や友人などのプライヴェート写真を、娘のマリンが編集し出版した写真集でした。2人でその写真集を眺めつつ、それぞれのイメージについて感想を述べ合ったり、60年代つながりで『アイドルたち』の話をしたり、という感じでスタートした我々の会話は、2時間にわたり一時も途切れることなく続き、いつものようにあっという間に終ってしまいましたが、昨日改めて感じたことは、氏の情報量が質的にも量的にも圧倒的であるということ。我々には、2時間くらいが妥当なのかもしれません。なぜなら、入ってくる情報がいずれも興味深く（まぁそれは私と彼の趣味嗜好が相当かぶるからでしょうが）、全てを頭に叩き込もうと思ってしまうので、きっと飲んで朝まで話していたら、頭がパンクしてしまうだろうと思うからです。

私の周りには彼のような人間がほとんどいないのですが、彼がリチャード・ブローディガンについて熱く語る姿を見るにつけ、恐らく、私が映画について語っている時の姿はきっとこういう感じなんだろうと妙に納得させられるものがあり、つまり言いたいのは、そのような“熱”を共有出来ることの幸福というか貴重さなのです。
だからといって、特に映画好きとは言えない人間を前に酔狂のように映画について語り続ける私自身の、傍から見れば迷惑千万な姿を自己弁護しようというのではないのですが、まぁこればかりは性癖みたいなものなので、実世界で私を知る友人・知人の方は、今後もどうか多めに見てやってください、というわけで、お後がよろしいようで………