2005年11月07日
北野武と冨永昌敬とティム・バートンの三つ巴、ではないけれど…
ついに北野武12作目の『TAKESHIS'』が公開されたので、久々に初日の初回を鑑賞しました。渋谷シネパレスは、開館と同時にその日に上映される全回のチケットを販売するのですが、今回は北野作品ということもあり、早めにチケットを購入しなければと思って朝9時に劇場に到着してみると、すでに20人ほどの列が出来ていました。なるほど、君達も北野作品と聞けば初日に駆けつける同士か、と肯くも、それにしてはどこと無く“相応しからぬ”客層だなと思い至り、それでも深く考えずに列に加わったのですが、いざチケットが売り出されると、彼らが目当てにしていた作品が、実は『機動戦士ZガンダムⅡ恋人たち』だったことがわかり、20数人のうち、『TAKESHIS'』目当ての観客が5人程しかいなかったという事実に、故の無い安心感を覚えたりも。よくよく考えてみれば私などはまだいい方で、すでに『BROTHER』や『dolls』あたりから彼を見放している人も多かろうし、すでに監督自身が“難解だ”と評している本作の初日に、大して人が集まらないのも理解できる話なのです。
個人的には結構楽しめた『TAKESHIS'』は確かに“難解”であるかもしれず、しかしあのような作品を難解だといい顔を背けてしまうのは、ややもったいないなと思ったりも。そもそもが“夢の中の出来事”を物語の中心に据えた『TAKESHIS'』が、いかに荒唐無稽で理解をこ超える部分が多かったとところで驚くには値しないし、その手の荒唐無稽さや非=日常性は、それこそあの決定的に見放された『dolls』で体験済みなのですから。ただし、だからといって北野作品を毎回手放しで賞賛するという程映画を観ていないわけでもないのですが、北野作品は言ってみれば、観客の許容度を測るわかりやすい物差しになるかもしれない、などと考えつつ劇場を後にした次第です。
次に観た作品は『シャーリー・テンプル・ジャポンII』。『VICUNAS』でデビューして以来、一部の人間に激賞されてきた冨永昌敬監督の新作、というよりセルフリメイク作品です。この『シャーリー・テンプル・ジャポン パートII』は、『シャーリー・テンプル・ジャポン Part1』と『シャーリー・テンプル・ジャポン Part2』から成る66分のDV作品で、これまで何度と無く観ようと思っていたのにその機会を逸し続けていた私は、本作が冨永監督初体験だったわけですが、観終えた後、何か新しい映画を観てしまったかのような錯覚(?)に囚われ、大いに動揺しました。客席には私を含め3名しかいませんでしたが、それがこの作品には相応しいような気がしたのは何故でしょう。いや、多分理由などないとも思われるのですが。
なんとも言いがたい本作ですが、少なくとも私は何度か大笑いしてしまいそうになり、だけれどもそれはこのほとんど音の無い映画において、かなりの迷惑に成りかねないという思いがそれを何とか食い止め、そうこうしているうちに終ってしまったという感じ。騙されたような気もしますが、とりあえずこの文章を読んだ方には私と同じように騙されて欲しいなどという、“死なば諸共的”な思いが頭から消えないのもまた事実なのです。とりあえず言えるのは、そんな程度です。まぁ、私の周りで本作を観る人間は、どう見積もっても皆無だとは思うのですが、それが逆に心地よくもあると、付け加えておきます。
ところで、『チャーリーとチョコレート工場』は未だ興行成績ランキングの上位にいるみたいです。Yahoo!ムービーによれば、まだ始まったばかりの『ティム・バートンのコープス・ブライド』も同時にランクインしているようで、これを日本におけるティム・バートン人気の表出と見るべきかどうかわかりませんが、実はそんなことをいいつつ、私はティム・バートンをそれほど観た事がなく、傑作の呼び声高かった『ビッグ・フィッシュ』ですらこれから観るというくらいですから、彼にはとりわけ何の思い入れもないのですが、『チャーリーとチョコレート工場』はそれなりに楽しめたものの“それなり”の域を出ず、だけれども、確かにジョニー・デップは嫌いではないし、憎たらしい子供達にそれなりの代償を背負わせる残酷さも悪くないのですが、だからといってやはり、本作についての文章を書くことは躊躇われるので、この辺りでやめておきます。
最後に昨日テレヴィで観た『座頭市』ですが、大楠道代の素晴らしさを再確認した次第。『空中庭園』は、彼女を観るだけでも価値がありますので、未見の方は是非に。
2005年11月07日 12:53 | 映画雑記
Excerpt: まずはこちらをクリック~♪ ☆人気ブログランキング☆ 有名ブログ☆ランキングへ 『 こんな映画みたことねぇっーーーーーー!!! 』 昨日(5日)に映画 『 TAKESHIS’/ タケシズ 』 を見てきたのですが、↑がそのときの感想でし{/face_nika/} なぜ 『 TAKESHI...
From: ◆走食見聞録 《ブログ》◆
Date: 2005.11.07
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From: The Mo[u]vieBuff Diaries
Date: 2005.11.07
>[R]さま
毎度どうもです。
そうなんですよ、あの空間ではね…私はどうせ誰も観てくれないでしょうから誰にも薦めませんが、密かに冨永作品を全部観てやろうという決意をしました。
いや、確かにフザケた映画ですが、正直かなり好きかもしれません。
今回の北野作品は、あからさまに自己言及的という感じがしますが、ゲシュタルト崩壊しつつも無方向に(自分さえも!)攻撃していく様は、どこか吹っ切れたような気がしないでもなかったです。
Posted by: [M] : 2005年11月08日 10:08
北野と冨永という組み合わせがいやはや何とも…さぞかし奇妙な一日だったことでしょう。
『シャーリー・テンプル・ジャポン』はシネマ・ロサのレイトショーで鑑賞しましたが、
僕は人目を憚らずに、何度か大笑いしてしまいました。観客は10名ちょっとでした。
しかし、アップリンクのあの空間、数名の中で笑うのは確かに容易ではないですねぇ。
決して他人に薦められる作品ではないので、知り合いの何人か感想を聞かれたときは…
「とにかくフザケタ映画さ!」という褒め言葉でもって、にごすようにしてました。
撮影中の『パビリオン山椒魚』がとても楽しみですね。出演陣がスゴイらしいです。
冨永作品は、もろセルフリメイクですが、北野監督もそういう意識が強いですよね?
『TAKESHI'S』は未見ですが、再構築/更新を楽しむのも北野作品の醍醐味かなぁと!
Posted by: [R] : 2005年11月07日 19:44