2005年09月13日

『皇帝ペンギン』、この捏造ドラマには我慢出来ない

原題:LA MARCHE DE L'EMPEREUR
上映時間:86分
監督:リュック・ジャケ

毎度の事ながら、“フィクションとドキュメンタリー”という問題に直面した時、私は無駄に思考してしまう他ないのですが、それでも本作をドキュメンタリーと呼ぶことが躊躇われるのは、皇帝ペンギンの過酷極まりない生涯を描きながらも、それを(無理やり)人間の価値観にあわせた上で、ある一つの“感動的”なドラマを捏造しようとする姿勢にいささかも共感できなかったからです。

餌の宝庫という意味で一種のオアシスである海中で、ペンギンがサメに襲われるシーンがあります。サメは容赦なくペンギンを食おうとし、ペンギンは何とかそこから逃れようとする。しかし、何故そのシーンをスペクタクルとして見せる必要があるのでしょう。何故、サメがカメラに向かって大きく口を開くショットに、あまつさえ仰々しい効果音を重ねる必要があるのでしょう。それが家族向けの娯楽映画だからという理由で、その手の凡庸過ぎる悪しき手法で観客にエモーションを強要することが、私にはどうしても許しがたかった。

ドキュメンタリーが全て真実だなどという妄想はとうの昔に捨てているつもりですし、スペクタクルを全否定する頑なさもどうかという立場ですが、たとえ映画がすべからく“嘘”で成り立っているとしても、このような捏造ドラマを許容するわけにはいかず、昨今、フランス産の動物ドキュメンタリーがそれなりの観客を集めているだけに、この手の手法がスタンダードになってしまったとしたら…とおせっかいな心配の一つもしてしまいます。

対象との距離。少なくともドキュメンタリーと名乗るのであれば、それが最重要になってくるのだと私は思うのです。例えば、『ゆきゆきて神軍』と『神様の愛い奴』の間にある決定的な断絶も、まさにこの点に存しているのだと。

2005年09月13日 12:27 | 邦題:か行
TrackBack URL for this entry:
http://www.cinemabourg.com/mt/mt-tb.cgi/633
Trackback
Comments
Post a comment









Remember personal info?