2005年09月12日
邦画4本を頬張る
先週レンタルしていたdvd4本は土曜日中に返却しなければならず、にもかかわらず土曜日午前中の時点でまだ1本と半分しか観ていなかったので、土曜日はジムを諦め、早朝からdvd三昧という、いささか辛い休日の始まりでした。
が、観た作品はどれもが(当たり前ですが)水準以上の出来で満足。やはり新作と並行して旧作を観ていくことは重要です。今後はこの活動にも新作を観ることと同じ熱意で臨んでいかねばならないな、と思います。
というわけで、土曜日に観た新作は『リンダ リンダ リンダ』の1本のみでした。
山下敦弘監督は本作が始めてでしたが、なるほど、これは非常に良く出来た青春映画です。今週で終ってしまうようですが、もう一度観る価値はあるとすら思います。一言で言うなら、この映画は“沈黙が最も雄弁に語っている映画”だった、と。もっと(オフビートな)ギャグに溢れた作品だと思い込んでいましたが、もちろん、ところどころで笑ってしまうシーンはあったものの、本作にはギャグのためのギャグなどほとんどなかったような気も。それが良いとか悪いとかではなく、その堂々たる青春映画ぶりに、大変好感を持ったと。まぁそういうことです。
詳しくは別途レビューで書ければ、と。
『リンダ リンダ リンダ』に触発されてか、先週レンタルしたdvdは邦画に限定してみました。比較的新しく、でも何となく封切りで手が出なかった3作品です。
音楽を媒介にした青春映画という点で『リンダ リンダ リンダ』と類似点を持つ『スウィングガールズ』は、『リンダ リンダ リンダ』とは全く似ていない映画だったような気も。本作には、とにかくギャグに溢れています。私はどのギャグにも大して笑うことが出来ませんでした。一度は分裂した彼女たちが、突如ビッグバンドとして演奏を始めるあたりの御都合主義は、むしろ堂に入っている感じで許せた次第。加えてラストの演奏会は、カタルシスというほどではありませんでしたが、悪くはなかったです。
次に観た『ジョゼと虎と魚たち』にも上野樹里が出ていましたが、それは全くの偶然です。で、この映画、思ったよりもラブシーン、というよりはキスシーンがエロティックで、その点は評価します。特に驚くべきショットはありませんでしたが、裏を返せばどのシーンも妙にあっさりしていて、そこに漂う空気感がきちんと統一されていたようにも。いずれにせよ、『タッチ』も観なければならないようです。
『約三十の嘘』は、今回レンタルした3作品中最も期待していました。というのも、『アベック モン マリ』がなかなかの映画だったように記憶していたからです。観た結果、もし本作が全く無名のキャストで撮られていたならと、いささか残念だった部分も。個人的な好みは置くとして、中谷美紀は悪くなかったと思いますが、全体的に何となく食い足りない感じも。
その理由を考えてみると、本作には、観客を騙してやろうという悪意のようなものが感じられず、それはもちろん、本作がサスペンスでもミステリーでもないオトナの群像劇なのだから当たり前だとは言え、“嘘”という実に映画的な題材をそのタイトルに持つ映画であるなら、やはりその“嘘”の魅力にこそ私は期待してしまうし、そういった観点で立てば、本作の中途半端ぶりが惜しまれたな、と思うのです。ただし、その中途半端が意図されたそれであったのだとしたら、その“ゆるさ”が大谷監督の持ち味であるとするなら、それはそれで一つの評価にもなるなぁ、などとも思います。『NANA』は全く読んだことがないのですが、こちらも必見、ですかね。
最後にもう一度『リンダ リンダ リンダ』に話を戻すと、天才的とも言えるキャスティングの中で、私が最も感動的だった人物は、中島田花子役の山崎優子でした。あのブルージーなしゃがれ声の素晴らしさ…何てにくいキャスティングでしょうか!
2005年09月12日 13:16 | 映画雑記
>hebakudanさま
どうも、ごぶさたでした。
わたしも10代に楽器にのめり込んだクチです。ついぞ、彼女たちのような一体感を獲得することはありませんでしたが。
『リンダリンダリンダ』は、『スウィングガールズ』よりもかなり私の好みではありましたので、是非是非。
Posted by: [M] : 2005年09月20日 12:17
>[R]さま
先日山下監督作品を2本レンタルしてきました。今週中に観て、別途文章を書くつもりです。世界中に「カウリスマキ」や「ジャームッシュ」と称される監督が一体何人いるのかわかりませんが、その辺の宣伝文句にはあまり興味がないので、作品を観て判断したいと思います。
『ジョゼと虎と魚たち』は特に『メゾン・ド・ヒミコ』を準備したわけではありませんし、今のところ観る予定もありませんので。ただし、『タッチ』は観てみたい気がしています。『NANA』を観て思ったのは、一体どこに作品の魅力があるのか皆目わからなかったということです。これを下手だと一言で片付けていいのかどうか、少なくとも大谷監督には多少の期待はしていたので、まぁ残念といえば残念でした。
Posted by: [M] : 2005年09月20日 12:14
『リンダリンダリンダ』は評判がいいようですね。Mさんの評価も高いし、私もDVDが出たらぜひこれは見てみたいです。『スウィングガールズ』終盤の場面は最高でしたね。
彼女たちはある時点から急激に楽器が好きになっていきますが、私も自分の体験からこの気持ちはよくわかる。本当にこういうことって起こるよね。10代の頃にこういう強いのめりこみ方ができればもう大丈夫。って、何が大丈夫だかよくわかんないけど(笑)。
Posted by: hebakudan : 2005年09月18日 20:55
>[M]さま
あれだけ山下監督をリコメンドしておきながら、実はまだ『リンダ リンダ リンダ』を観に行っておりません! 『シャーリー・テンプル・ジャポン』『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』(2回)と邦画インディペンデント界隈へと迂回をしていたら、残すとこあと2日だ! 今日か明日には必ず行こうと思います。
[M]さんの観察眼はやはり恐るべしですね。何かで読んだ記事の記憶では、確かに山下監督は「眺めて、待つ」というタイプの演出家だったと思います。
彼の作品を遡っていけば、ますますその独特の「間」を楽しめることでしょう!
デビュー作で、リーゼントを主人公にした為に「和製カウリスマキ」などと騒がれていましたが、山下監督の「間」は、カウリスマキともタケシキタノとも違うオリジナリティを感じますね。
『ジョゼと虎と魚たち』は、『メゾン・ド・ヒミコ』鑑賞に向けての予習でしょうか? 確かに「空気感」としか語れない作品でしたね『ジョゼ』は。でもそれが決して、「作り出してハイ終わり!」という種類のものではなかったところが僕的にも○でした。あの奇妙さは、『メゾン』の予告編でも感じ取れたので、暇を観てシネマライズに行かなければと思う次第…。
ああ、書きながら気がつきました! そういえば『タッチ』も犬童一心監督でしたねぇ。たぶん僕は観ませんが、長澤まさみにフィルムで出会いたい!ということだけは告白しておきます(笑)。
『NANA』は、彼女が「観た〜い」って言ったら、しぶしぶ観に行くだろうなぁ…でも今は、それを言ってくれる彼女がいません!(自虐)
Posted by: [R] : 2005年09月15日 02:41
>こヴィさま
とりあえず旧作を観ないことには何もいえませんが、本作のみの印象で言えば、山下監督は受動的な映画作家のような気がします。「眺める」とか、「待つ」とか、そういう行為が好きなんじゃないか、と。いや、上手くいえませんが、とにかく目に見えないはずの「間」を、何とか画面に定着させようとする作家だと思いました。
Posted by: [M] : 2005年09月13日 12:56
>“沈黙が最も雄弁に語っている映画”だった。
そう、あの目配せと、想い。成瀬かっ!と思うほど(こじつけ・笑)
Posted by: こヴィ : 2005年09月12日 21:50