2005年08月15日
『バス174』は人間の闇を知らしめる
原題:ONIBUS 174
上映時間:119分
監督:ジョゼ・パジーリャ
本作はバスジャック犯に焦点を当てたメディア批評、ひいては、“サッカーとカーニバルの国・ブラジル”という通り一遍のイメージを粉砕するだけの力を持った国家批評として観る事ができると思います。
すでに『シティ・オブ・ゴッド』がブラジルの下層社会を暴いて見せましたが、あくまでフィクションであるそれに比べ、本作は、当時のテレヴィ映像をそのまま見せることで、観る者の“傍観者性”を殊更際立たせることになります。
ただし、ドキュメンタリーと言えど本作にも意図されたドラマが構築されていきます。バスジャック犯の知人や親類、生き残った人質たちの証言の断片は、次第に一つの主張に収斂されていくかのようです。
ラストは意図的にぼかされているものの、観客にはある種の決定的な結論が浮かぶのではないでしょうか。そして我々はあらためて思い知るのです。人間という生き物が、いかに醜く、そして恐ろしい闇を抱えているのかを。
2005年08月15日 12:53 | 邦題:は行
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