2005年07月27日

『エレニの旅』、アンゲロプロスに打ちのめされる快楽

原題:TRILOGIA I: TO LIVADI POU DAKRYZEI
上映時間:170分
監督:テオ・アンゲロプロス

一映画好きとして大変恥ずかしながら、本作がアンゲロプロスの実質上初体験でした。“実質上”としたのは、嘗てヴィデオで『シテール島への船出』を観た際、序盤で挫折した記憶があるからです。
本作はとにかく事前にその完成度の高さを聞かされていたのですが、あの当時よりはかなりの数の映画をこなしてきた私の中で機は熟したなと判断し、再チャレンジと相成りました。

冒頭近く、最初にエレニが住む村を映すカメラの流麗な動き、その村へと続く川を小船が滑走してくるまでのショット。息を飲むショットとはこのようなものだと思いました。今、アンゲロプロス程に大胆不敵なショットを撮る人間がどれほどいるでしょうか。

中盤から物語などどうでもよくなり(これはかなりポジティブに解釈していただきたいのですが)、“境界線”(川であったり線路であったり土手であったり)が頭の中で抽象的な意味を拡散させていく。しかしそれも、あの大木にぶら下がる何頭もの羊の死体とそこから流れ出る血が川を形作る様を観て、吹っ飛んでしましました。

これがアンゲロプロスか……今はそのようにしか言えませんが、今後新作を追い続けていく強い意志が生まれたことだけは確かです。

2005年07月27日 12:59 | 邦題:あ行
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