2005年07月23日

『おわらない物語 アビバの場合』、トッド・ソロンズは極めて真摯な作家である

原題:PALINDROMES
上映時間:100分
監督:トッド・ソロンズ

わが国において、トッド・ソロンズはこの先も一部の観客に向けた映画作家なのでしょうか。

この作品を観て、いや、過去の作品を観た上でも、トッド・ソロンズは決して異端的な作家ではなく、ただ、“普通の人間”が見過ごしている、いや、見ようともしていない世界のある局面を、真摯に描こうとしているだけなのではないかと、私はそう信じるに至りました。

作術こそ違えど、『おわらない物語 アビバの場合』は(「回文」という原題も含め)、キム・ギドク『春夏秋冬そして春』のような普遍性を身に纏っています。その構造やスタイルがとかく語られがちな本作ですが、その核にあるものは非常にシンプルでわかりやすい。観るものを動揺させるようなショッキングな描写は、しかし、誰もが持つ感情へと緩やかに還元されていくような、そんな気がします。だからと言って安易な結論を出そうとはしないソロンズは、やはり極めて誠実なのでしょう。

8人のアビバの中で特に良かったのが、40歳を超えているジェニファー・ジェイソン・リーでした。この大胆極まりないキャスティングを含め、本作の出演者は誰もが素晴らしい。

2005年07月23日 12:59 | 邦題:あ行
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