2005年07月13日

出会いはスローモーション

先週は足の怪我もあり、あまり歩き回るのもいやだったのですが、『ライフ・アクアティック』が15日で終了してしまうと知り、痛みを押して自転車で恵比寿まで行ってきました。随分早く着いてしまい、ビアホールでビールをガブガブ、ソーセージやらザワークラウトやらフィッシュ&チップスやらをバクバク、あー眠くなってきたな、と思い、ガーデンプレイスのベンチで残りの時間を睡眠に当てようとしましたが、あの炎天下の中、それはあまりに馬鹿げていると思い直し、今度はカフェで甘いパンをバクバク… 
何という自堕落さ! とほとほと呆れ帰り、運動できないストレスを食事で解消しようとしていた自分に嫌気がさし、映画が始まる前にテンションがローダウンしましたが、何とか時間を潰して観た『ライフ・アクアティック』は二回目とはいえ冒頭から乗せてくれるので嬉しくなり、最終的にはあっという間の118分、自己嫌悪もすっかり忘れてしまいました。やっぱり最高でした、この映画は。

そんなこんなで怪我から丸一週間たった今、痛み止めのクスリも飲み干してしまい、後は自然治癒に期待したいところですが、現在はまだ若干足を引きずっています。にもかかわらず、回復を待ちきれずに月曜からジムに行き、先週分を取り戻そうと躍起になっているのですが。それもひとえに、もうすぐそこまで迫ってきている夏のせいです。

ところで、本日7/13は特に記念することもない私の誕生日に当たり、自分へのプレゼントという都合のいい口実に従って何を買おうかとしばし考えたものの、実は誕生日を待つまでも無く、ここ2週間くらい洋服やバッグを買いまくっていて、いったい何がプレゼントに当たるのかもわからなくなるほど。そろそろ欲しいものも無くなってきたかなと思っていた矢先の誕生日です。よって本日は、モンテ・ヘルマンかアレクサンダー・ペインあたりのdvdを購入しようか、などと考えたり。無理に買うことも無いのですが。

そんな買い物週間で入手した夏用のスリッポンがあるのですが、オークションで購入したそれは思っていた色味とは若干異なり、まぁそんなことはよくあることなので、ここは一つカスタマイズだ! とばかりに昨日は東急ハンズに行き、革用の染料を購入。約2時間かけて真っ赤に染め直しました。今朝起きて出来上がりを確認すると、ほとんどパーフェクトな仕上がりで大満足。この夏はヘビーローテーションすることでしょう。

さて、別に誕生日だからということもないわけですが、今朝はちょっと感動的な出来事に遭遇いたしましたので、後になって忘れないよう最後に記しておきます。
いつものようにジムを終えて会社の最寄り駅に到着したのですが、地下鉄から地上に出る階段に挿しかかろうとした瞬間、その階段の中間地点から、20代後半と思しき女性が回転しながら私の足元目掛けて落ちて来たのです。あまりに突然の出来事な上に、その女性の回転ぶりがこれまでに遭遇したことの無いほど激しく、私にはその特異な光景がほとんどスローモーションのように感じられ、女性が足を踏み外した瞬間の表情、回転するごとにバッグから書類やらパソコンやらが飛び出していく様、強いて言えば“階段を転げ落ちる音”としか形容しようのない痛々しい音などがほんの1秒半くらいの瞬間にもかかわらず一気に目と耳に飛び込んできて、あまりに不謹慎な言い方かも知れないのですが、それは全くもって感動的と言うほか無く、誤解を恐れずに言えば、それは紛れも無くサム・ペキンパー的スローモーションであり、私としては、一生のうち後何度観られるかわからないような感動的なアクションを目の前で身をもって演じてくれたその女性に対する感謝が瞬時に行動として表れ、間違っても“大丈夫”とは思えない、恐らくショックと痛みで茫然自失となったその女性に対し、「大丈夫ですか!?」と場違いな声を掛けながら散らばった荷物を拾っていると、ただ単に親切心からか、あるいは私と同じ様にその光景に心を奪われた“サム・ペキンパー党”なのかは知りませんが、見知らぬ男性が一人、また一人と近寄ってきて、「立てますか?」などと言いながらやはり同じように荷物を拾ってあげていました。彼女は、膝からぺたっと地面に座りこんでしまっていましたが、恐る恐る立ち上がり体の状態を確認すると「大丈夫みたいです!」と満面の照れ笑いを浮かべ、足早にその場を去って行ってしまいました。これが通俗的なテレヴィドラマであれば、そのシーンは“出会い”のシーンとして、バックに意味ありげなBGMなどが流れるんだろうなぁなどとも思いましたが、やはり、そんな通俗的なドラマよりもさらにドラマティックなのが現実というものなのでしょう。あの女性の軽やかな足取りがたとえやせ我慢であったとしても、始まりから終わりまで1分あるか無いかの中で、ある一人の、加えて今日が誕生日の男を確かに感動させたという事実は記憶しておくべきだと、そんなことを思ったのでした。
私もつい一週間前に、同じように豪快極まりない転び方をして怪我をしたクチですから、彼女の気持ちが痛いほどよくわかります。彼女に怪我などが無いことを祈ります…(-人-)

2005年07月13日 12:34 | 悲喜劇的日常
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Comments

>hebakudan様

コメントありがとうございます。
おかげさまで体のほうは大分治ってきました。あのように豪快に転んだとき、一番つらいのは周囲の人間の冷笑なんですよね。その点、今回は深夜で誰も見ていなかったので救われました。
『アバウト・シュミット』の文章は現在書いている最中です。これもなかなか時間がかかっておりますが、私にとって現代アメリカ映画における重要な監督ですので、何とか書き上げようと思います。あまり参考にならないかもしれませんが、作品が重なったときはまたコメント頂けると嬉しいです。

ところで当サイト名ですが、正式には小文字で「cinemabourg*」なのです。最後の「*」が何ともお恥ずかしい限りといいますか、特に意味は無いのですが、一応、「cinemabourg*」です。小文字にこだわるのは、私の人間としての度量の小ささです。

ともあれ、今後ともよろしくお願いします。
映画以外のネタでも、お気軽にコメントください。


Posted by: [M] : 2005年07月20日 21:34

こんにちは。難度Eクラスの大転倒アクロバット!ご本人はさぞおつらかったでしょうね。私もかつて自転車で転倒した時、その場では平気そうな顔を作りつつどうにかこらえましたが、一人で横道に入って周囲に誰もいないことを確認したあとは打撲した自分の片足をおさえて「いでででででででええええ!」と思わず叫んでしまったことがあります。『アバウト・シュミット』のレビューをいずれ書かれるのかな。拝読するのが楽しみです。これも私には感想が書けなかった映画なんです。いやもう書けないのばっかり。私は時間的な都合で映画館にはなかなか行けないんですが[M]さんの新作映画レビューはDVDリリースを待ちながらの作品選びにおおいに役立たせていただけそう。今後もちょくちょく寄らせてもらいますね。ところで、つまらないことなんですが、ちょっと確認させてもらいます。[M]さんのブログタイトルは小文字表記の「cinemabourg」でよろしいのでしょうか。


Posted by: hebakudan : 2005年07月20日 19:53

>puffさま

ご返事遅れました。コメントありがとうございました!
なんと、一日違いでしたか。遅ればせながら、おめでとうございます。

『ダニー〜』の中で一番評価できるシーンは、実は、あの事故のシーンだったんですが、あのシーン、puffさんはどうでしたか? あんな事故の後、さらに機関銃で撃ちまくられたにもかかわらず、生き残ってしまうというあたりの出鱈目さ。このあたりが全編を支配していた、puffさん言うところの“トンデモ映画”的雰囲気だったのかと思います。

梅雨明けしたので、向こう1ヶ月間くらいは“海モード”に入りますので、新作の鑑賞はちょっと停滞しそうですが、それでも少しずつは観ていきたいと思います。



Posted by: [M] : 2005年07月19日 09:10

[M]さーん、こんにちはーん

7/13はBirthdayでしたかー
暑い時にお生まれになりましたね。
エヘヘ、、実は、私はその前の7/12でござります。
特に何する訳でもなく地味に終わりましたですよ・・・

ところで、下のレヴューの幾つか、「ダニー・ザ・ドッグ」
「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」「エレニの旅」などなど
同じ映画が被っていて嬉しいです。
感想もほぼ同じでござります。
「ダニー」ですね、、トンデモ映画でしたけど、何処か惹き付けられる
不思議な味わいがありましたね。
やはり、モーガン・フリーマンとジェット・リーの取り合わせの妙でしょうか。


Posted by: Puff : 2005年07月15日 19:14

>ローズさま

ありがとうございます。

それは凄い光景でした。試しに今朝も同じ階段を通って観たのですが、さすがに二日続けては…いや、不謹慎でしたね。

ローズさんもやってしまいましたか。愛犬を守るためという理由が素晴らしい。
こちらの怪我は大分治りかけていたんですけど、実は昨日、ヴィデオ屋から出た途端に二人乗りの自転車が私に向かって突進してきまして、それをよけたら患部を再度ねじってしまい、また足を引きずるはめに。どうやら彼女を乗せていたらしいので、怒りを堪えて勘弁してあげました。

お互い、一日も早く怪我を治して、映画に埋もれましょう!


Posted by: [M] : 2005年07月14日 12:01

お誕生日、おめでとうございます!物凄い光景に遭遇しましたね。その女性はお気の毒だけど[M]さんの感動の仕方にも感心しきり!そうそう[M]さんの自転車事故も他人事ではなく・・・先日、愛犬をショルダーバッグに入れて自転車に乗っていると溝にタイヤをとられてひっくり返りそうになって・・・愛犬を守るため必死の体勢で横転を免れたものの・・・腰がギググッッ!!“プチぎっくり腰”になって痛いのなんのって。でも横転してたら2キロしかない愛犬は圧死したかもしれないのでよかった。自転車って些細な凹凸が弱点なんですよね。


Posted by: ローズ : 2005年07月13日 20:29

>shimaさま

ありがとうございます。
象徴的ですよ、ホントに。

今年はすでに何本かの傑作に出会えていますが、向こう半年にも大いに期待したいと思います。

現在、怪我には非常に敏感になっていますので。
自転車も3割り増しくらい慎重なブレーキングを心がけています(笑


Posted by: [M] : 2005年07月13日 17:39

お誕生日おめでとうございます!

なんとも印象的(象徴的?笑)なお誕生日の迎え方でしたねー。
なんでも「見事」「あっぱれ」なものを目の当たりにすると
一瞬フリーズして、それから感動がわき起こってくるものですねぇ。
それがまさか女性の階段落ちだとは驚きですが(笑)

[M]さんにとってより多くの素敵な映画に巡り会える年でありますように。
あ、あんまり怪我をなさらないように気を付けてっ。


Posted by: shima : 2005年07月13日 13:52
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