2005年07月04日

『宇宙戦争』、『おちょんちゃん〜』、林由美香、『バス174』

先週は珍しく、平日にもかかわらず無理やり2本の映画を観ました。無理やりというからにはしかるべき理由がありまして、一つは『宇宙戦争』の初日だったから、もう一つは、友人の映画監督が撮った作品が限定で公開されたから、というものです。いずれも私のような人間にしてみれば、仕事を放り出してでも駆けつけるに十分な理由なのです。

すでに読んだかたもいるかもしれませんが、溜まっているレビューが10数本あるにもかかわらず、それらを置いて先に『宇宙戦争』に関する文章を書き上げたのは、ひとえに、鑑賞後に酒を飲みながら相棒・ng氏と交わした会話に強く思うところがあったからであり、トム・クルーズという人間に関する考察を中心に据えた議論、というか“熱い”雑談がことのほか興味深く、こういう生産的な雑談が出来るのであれば、普段は一人きりで観るようにしている私でも、誰かと映画を観る楽しみを実感できるという、まぁそんな感じです。よって、今回の文章は、いつもの捏造会話に比べるとより事実に基づいています。もちろん、基本的にはフィクションですけど。
一先ずng氏に感謝。

で木曜日はというと、有楽町にあるニッポン放送内にあるファンタスティックシアターという場所で開催された「大阪インディーズムービー☆最前線!」という特集上映に。そのイベントは昨日が最終日で、その時上映されたのが先に記した通り、友人の西尾孔志監督の最新作『おちょんちゃんの愛と冒険と革命』だったというわけです。
ネット上では何度もやりとりしている西尾監督ですが、実際に対面するのは今回が始めて。上映開始の30分くらい前に会場に滑り込み、タバコを吸いながら時間を潰していたら、監督と思しき男性が会場に姿を現したのですが、彼は私の顔も本名も知らないのです。すぐそばにいるのに、彼は私を認識できない。ネットを介して知り合うということの、なんとも不思議な感覚を改めて実感しました。まぁ私が立ち上がって「どうも、[M]です」などと挨拶すれば、そのような状態も解消できたのでしょうが、恐らく古くからの友人であろう人たちとの話に割ってはいく程無粋なことをしたくは無かったので、結局、上映後の中原昌也氏とのトークショーも含め、私と監督の間には一方通行の視線、すなわち、私から監督への視線のみが存在し、その逆は無かったということです。まぁ、このような出来事は、『おちょんちゃんの愛と冒険と革命』の驚くべき出来に比べれば何とも取るに足らない事だと言えます。私には、『ナショナルアンセム』とは明らかに違う点が“わかりやすさ”であるとは間違っても言えず、だけれどもそこに存在するある決定的な“何か”を感じることは出来たわけで、それだけであの日の収穫はあったと言えるのだと思います。それについては、中原氏とのトークを再度思い出してみなければなりませんが、やはり実際に聞いてみたい気がするので、仮に次の機会が存在するなら、恥も外聞も捨てて、監督にアタックしてみようか、などと考えております。

さて、いきなり話は変わりますが、奥崎謙三の不幸に続き、林由美香さんが急死しました。まだ35歳だったんですね。ピンク映画女優として現役で活躍されていた彼女ですが、私にとっての林由美香とは、AV女優としての印象がことのほか強く、それは、高校時代に彼女の作品にかなりの衝撃を受けたからです。それは言い換えれば、V&R PLANNINGの衝撃に他なりませんが、とりわけ、安達かおる監督による『ジーザス栗と栗鼠』シリーズの残酷さは、それまで観ていたAVとは全く異なる次元へと私を導き、林由美香は、そのシリーズにおける私が観た最初の女優として強烈なインパクトを残したのです。彼女は、私の中の“サド性”を初めて意識させたという意味で、特権的なAV女優だったと言っても決して大袈裟ではありません。
『由美香』や『たまもの』では、一般映画ファンにも広くその名を知らしめた彼女ですが、彼女の死をきっかけとして、今後もより多くの人がスクリーンやテレヴィの中の林由美香を発見していくことでしょう。私は一先ず『たまもの』をいち早く鑑賞しなければならないと決意しました。

最後に昨日観た『バス174』に関して。一言で言えば、雑誌「PEN」のブラジル特集の対極にある映画だ、と。サッカーやらデザインやらカーニバルやら、我々が普通に認識しているブラジルという国ですが、ある意味フィクションである『シティ・オブ・ゴット』とは別種の“救いがたさ”を痛感し、重い気分のまま家路につきました。
最後に、少なくとも「PEN」を読んだ方は必見だと付け加えておきます。

2005年07月04日 12:56 | 映画雑記
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Title: 「宇宙戦争」評/少年が夢みる、絶望の光景
Excerpt: 『宇宙戦争』(05/アメリカ/スティーブン・スピルバーグ) Text By 膳場 岳人  世界の終わり/人類滅亡。人々は巨大な破壊の前になすすべもなく立ち尽くし、絶望を道連れに逃げ惑うのみ――。健全な少年ならば誰もが一度は夢見たであろう、甘美な世界終末の悪夢を、か...
From: I N T R O+blog
Date: 2005.08.29
Comments

>監督

いやいや、こちらこそよくぞ東京で上映してくれましたね。しかも、次は1週間の公開ですか? もしいらっしゃるなら、今度こそ、是非。
それにしても、今回の女優さんは2人とも良かったです。


Posted by: [M] : 2005年07月06日 11:12

嬉しいです!
Mさんに褒められると「やった!」と思います。
今度こそ飲みましょう!
『おちょんちゃん』は現在、東京にて1週間くらいの公開を交渉中ですんで。


Posted by: イカ監督 : 2005年07月05日 22:55
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