2005年05月16日

『アビエイター』を前に複雑な心境になる

原題:THE AVIATOR
上映時間:169分
監督:マーティン・スコセッシ

『アビエイター』にいくつかの美点が存在するのは確かです。
それはまず、レオナルド・ディカプリオの“演出”やケイト・ブランシェットの“形態模写”など、俳優陣の輝きに見出せるでしょう。あるいはかなり苦労したであろう飛行機事故のシーンは、実に映画的な魅力に溢れていたとも言えると思います。
飛行機のボディをエロティックな対象として撫でたり、牛乳ビンを介した間接的な接吻にハワード・ヒューズの“接触の魅惑と偏執”を重ね合わせたりする描写も個人的に嫌いではありません。

しかし、この決して悪くは無い映画を、傑作と断言できないのは何故か。その原因を、スコセッシ自身に求めるべき時が来ているのかもしれません。彼はもう、いかなる我が侭をも通すことの出来る存在なのでしょうか。どうやっても正当な理由付けなど不可能だと知りながら、それでもあえて、端的に“長すぎる”と言ってしまいたい169分という上映時間には納得しかねるとここでは書いておきます。

いったい何が何だかと理解に苦しんだ、あの『ギャング・オブ・ニューヨーク』に比べてかなり良い出来であるという理由で、この作品を賞賛することは容易ですが、この大のつく程の力作を前に私が感じたのは、しかし、軽いショックだったと言わねばなりません。決して嫌いではない監督であっただけに、近年彼の作品との“行き違い”が残念です。

『アビエイター』は私にとって、傑作ではありません。そんな映画は世界に山ほどありますが、それが他でもない、スコセッシの作品であるが故に、あるいは今抱いているような複雑な心境になってしまうのでしょうか。

2005年05月16日 00:55 | 邦題:あ行
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