2005年05月16日

様々なレヴェルで過激だった週末

先週の土曜日は14:00からUPLINK Xにて『ピンクリボン』初日に。ドキュメンタリー作家・藤井謙二郎氏4本目となる本作は、ピンク映画という特異なジャンルに憑かれた監督やプロデューサー、配給・興行関係者へのインタビューを記録したものです。私はそれほど多くのピンク映画を観ているわけではありませんし、書籍を通じて得た知識くらいしか持ち合わせていませんでした。1962年以降、幾度も他メディアの脅威にさらされながら43年経った今もなお生き続けているピンク映画は、端的に言って“強靭”というほかありません。数々の制約を逆手に取った“自由”が、それを裏付けていたのです。私にとって“目から鱗”的な発見や驚きはそれほどありませんでしたが、それでも本作を大いに楽しむ事ができたのは、恐らく、登場する彼らのキャラが相当立っていたということなのでしょう。1時間58分という時間を有無を言わせず見せてしまう力が、彼らにはあるのです。

続いて19:00よりシネマスクエアとうきゅうにて「韓流シネマフェスティヴァル」二回目へ。キム・ギドク『受取人不明』が目当てです。前回『コースト・ガード』を鑑賞した時の“驚き”は過去の日記に書きましたが、今回は所謂“四天王”が出演している作品ではないし、あのような状態にはならないだろうなと高を括っていました。ところが30分ほど前に会場についてみれば、「そんなわけないでしょ…」とあざ笑う声が聞こえてきそうなほどに多くのマダム達が狭い待合室を埋め尽くし、それを見るにつけ「今回の映画は描写的にも結構きわどく、いわゆる“韓流”の類とはワケが違うぞと思うのだが…」と思い、後は彼女達が途中退出しないことを祈るばかりでした。私は常に一番後ろで映画を観ることを好みますが、その日は前から三列目の一番端という悲惨な席で暗鬱たる思いに囚われ、こうなったら上映前に入場者特典として劇場側に配られた、ほとんどキャバクラでしか口にすることのない韓国焼酎「鏡月」のミニボトルを、その場で飲み干してしまおうかとやけっぱちにもなりましたが、結局それは映画に影響するのでやめておきました。
上映後、劇場を出て行くマダム達の言葉に耳を傾けてみると、「もう途中で何度も出ようかとおもったわ」とか「あんなにグロいなんて…」とかいう言葉が聞こえてきて、なんとなく安心したりも。それはそうだよなぁ…上映前に動物虐待に関するエクスキューズが出るような映画なんですから。しかしながら私の率直な感想としては、キム・ギドク的“怒り”がこれほどまでダイレクトに表出した作品はあったろうかと途方に暮れる程に、素晴らしかったと言えます。

日付が変わって昨日の日曜日はヒルズにて『美しい夜、残酷な朝』を鑑賞。昨年の東京国際映画祭で見逃して以来、長らく待っていた作品です。香港・日本・韓国から3人の監督が選ばれ、それぞれの世界観で“現代の会談”を撮ったこのオムニバス、上映前にはわざわざ係員らしき男性がスクリーンの前に立ち、観客に向かって「これからご覧頂く映画は、一作目からかなり過激な描写がありますので、ご了承ください」などと警告していましたが、まぁ言うほどのことはありませんでした。
三者三様のホラーを大いに楽しめた本作ですが、個人的にはパク・チャヌク監督『cut』が頭一つ抜きん出ていたかな、と。パンフレットを買い忘れたのですが、時間が許せば作品評を書きたいと思います。

さて、レビューが滞って久しいですが、そろそろ『コースト・ガード』の文章が書きあがりそうです。観たのはもう大分前になりますので、細かい描写を思い出すのが困難でしたが、キム・ギドクという作家についていろいろと考える良いきっかけにはなりました。今日、明日中には何とか更新したいと思います。
ところで、今週で終わってしまうキェシロフスキ・コレクションのほうは、どうやら一本も観られそうにありません。後は会社を休む以外には……残念無念。『デカローグ』は何としても見なければと思います。

2005年05月16日 12:49 | 悲喜劇的日常
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Comments

>丞相様

おはようございます。「韓流フェス」は関西でも開催されるんですね。是非ご覧になってください。

今書いている『コースト・ガード』評でも触れているのですが、彼の作風は『春夏秋冬そして春』が一つのターニングポイントになるのではないかと思います。彼のインタビューなどを検証していくうちに、そのような結論に至りました。つまり『コースト・ガード』までが前期キム・ギドクと考えると、『悪い男』の前に撮った『受取人不明』の“怒り”のレヴェルも想像出来るかと思います。

『サマリア』評、楽しみにしてます。


Posted by: [M] : 2005年05月17日 09:37

こんばんは。私も『受取人不明』と『美しい夜、残酷な朝』は
地元で公開され次第見に行くつもりです。
とくに『受取人不明』はキム・ギドク的「怒り」のレベルがどれくらいなのか、
気になりますね。
「怒り」のレベルで言うと、私は『春夏秋冬そして春』では物足りなく、
『悪い男』ではやや行き過ぎで、『サマリア』で程よいとは思うのですが。
私のブログでも、今週末あたりに『サマリア』の感想をアップする予定です。


Posted by: 丞相 : 2005年05月16日 21:25
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