2005年05月15日

『愛の神、エロス』、エロスとは触覚可能でなければならないこと

原題:EROS
上映時間:109分
監督:ウォン・カーウァイ/スティーヴン・ソダーバーグ/ミケランジェロ・アントニオーニ

ウォン・カーウァイの「若き仕立て屋の恋」は、60年代の香港を舞台としています。
『花様年華』以降に漂う“エロティックなムード”は、愛=エロスを主題とした本作にも健在です。本作は鏡を、別の世界への入り口として効果的に機能させていますが、そこに映る世界はあくまで“触覚不可能”であるという事実を通じて、逆説的に触覚によるエロスを浮き上がらせています。コン・リーによる愛撫は言うまでもありませんが、肉体を持たない衣服をまさぐり恍惚とするチャン・チェンの表情に、それが端的にあらわれていました。エロスとは観念でなく、常に触覚可能な何物かでなければならないのです。

ミケランジェロ・アントニオーニの「危険な道筋」においても、それは変わりません。あの2人の肉感的な裸体が何よりの証左です。とりわけルイザ・ラニエリの、文字通り息を飲むような美しさは、エロスそのものだったと思います。

尚、スティーブン・ソダーバーグの「ペンローズの悩み」をここで取り上げたくない理由は、もちろんまともに観る事が出来なかったからなのですが、裏を返せば、エロスを前に、限りない抽象性の彼方へと逃げざるを得なかったソダーバーグと私との、決定的な断絶にこそ認められるでしょう。久々に腹が立った作品でした。

2005年05月15日 00:55 | 邦題:あ行
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