March 28, 2005

映画短評<2005.3>

エターナル・サンシャイン
確かに、チャーリー・カウフマンの脚本が“斬新”に映ったとしても非難は出来ない。それを“面白い”と言うことをあえて否定もしない。キャスティングも決して悪くないし、とりわけ、ケイト・ウィンスレットの奔放なキャラクターには切なさすら感じることが出来る。ルールにとらわれないフラッシュバックは、観るたびに“新たな発見”を生みもするのかもしれないし、本来形にしがたい空想に確たるイメージを与えるミシェル・ゴンドリーの想像力は、極めて“正確に”炸裂している。
だが、私にはいかなる感動も動揺も齎すことが無かった。ここに、一度しか観ていないから、という言い訳は通用しない。これが合う、合わないという相対的な問題に収斂されるのであればまだ救いがあるのだが。あるいは私が間違っているのだろうか……?

デーモンラヴァー
オリヴィエ・アサイヤスは常に変化し続けている。もはや彼の作品は、ジャンルという概念とは別種の、ほとんど未知のストリームを漂っているかのようである。その証拠に、本作は、企業スパイを中心に置いたサスペンスという、後付の説明には到底収まり得ない。それどころか、ありとあらゆる要素のアマルガムが観るものを不意打ちしつづける。一部日本を舞台にしているにもかかわらず、そこには観たことも無い画面と音がある。
現時点では、この作品を語ることなど出来ない。
自らの限界を強く思い知った。

ロング・エンゲージメント
“純愛”という言葉から想起される様々なイメージをことごとく裏切ってくれるという意味で、本作には好感が持てるのだが、全編を通して一瞬たりとも感情を乱されることがなかったのもまた事実である。繰り返される郵便配達員との掛け合いに多少の好感が持てた以外は。

カナリア
作品間の振幅の大きさで言えば、現在の日本映画界でも特筆に価するであろう塩田明彦監督だが、本作に関してはこちらの勝手な期待値を超えることがなかった。ただし、それはテーマとして、あるいは撮影手法としての是枝裕和監督との類似性とは何の関係も無い。たとえ『ディスタンス』や『誰もしらない』を観ていなかったとしても、その評価は変わらなかっただろう。一つ一つのエピソードはほとんど言うべきところがない程、良かった。西島秀俊は言うに及ばず、つぐみ、水橋研二、甲田益也子の演出は流石というべきものがあったと思う。しかし何故だろう、あの重厚な主題を前にして、この満足感の欠如は。期待が大きすぎたのだろうか。であれば、私はこの映画に何を求めていたのか。ほとんど故の無い幻想を抱きつつ、作品の出来とはいかなる関係もない部分で、その評価に影響を与えてしまう“期待”という抽象的存在。『カナリア』は、その理不尽とも言える問題を提起してくれたという意味で、重要な作品だったのかもしれない。

半落ち(v)
佐々部清監督の作品を観るのは本作が初。これでもか、と言わんばかりの層々たる俳優陣の演出について特に記す事は無い。これは個人的な好みに過ぎないが、原田美枝子、國村隼は素晴らしかった。ただし、“空白の2日間”の解明という物語の核が、どうにも弱すぎたのではないか。あれだけ重々しい雰囲気を全編に漲らせていながら、その謎が解けた瞬間に全身の力がすうっと抜けていくあの感覚が、本作には感じられなかった。残念。


March 28, 2005 11:13 PM | 作品(短)評
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