2005年02月03日

廃墟のような・・・

昨日、一人暮らし開始以来始めての電話機を購入いたしました。これまで、自宅に電話機の必要性など微塵も感じたことのなかった私ですが、その理由は2つありまして、一つは、電話料金に関して全くといっていいほど関心を示さず、例えば「今月は使いすぎちゃったナァ」と思うことはあっても、それは本当に一瞬の思索に過ぎず、悔い改めるということを知らなかったということ。もう一つは、私がモノの形、つまりデザインに異常な拘りを見せるということ。これらにより、確かに携帯電話よりも通話料が安いが、まだまだ日本のプロダクトデザインに対する懐疑心を拭い切れないのだし、つまり必要ナシ! という結論が何年も揺るがなかったわけで。

では、7年もの間貫いてきた思いが何故覆ったのか。その理由もまた2つありまして、一つは、もうこれ以上料金に目を瞑ることが出来なかろうという金銭的な圧迫感と、もう一つは、これならわが家に相応しいと思われるデザインの電話機を発見したことです。ただし、ここで断っておきたいのは、それをデザインしたのも外国人だということ。昨今、我が国でも“デザイナーズ家電”なるものがメディアで取り上げられる機会が増えたように思うのですが、それ自体は一先ず喜ぶべきことであるとはいえ、やはり、それらは私に金銭を支払わせる程のものではないことが多かったのです。
ここで私の“デザイン観”を述べるなら、“ミニマル”という言葉で完結に説明し得ると思います。“引き算のデザイン”と言い換えてもいいのですが、それはつまり、兎に角余計な機能はもちろんのこと、時には必要最低限の機能すら満たしえないほどに引き算された結果、ほとんど“荒涼”だとか“廃墟”だとか、そのように例えることの出来るモノの形に惹かれるのです。現在住んでいるマンションのように打ちっぱなしの部屋を求めるのも、壁紙すらが無駄なものだという考えに基づいてのことです。

私がどのような電話機を購入したのかは言わずにおきます。しかし、実際にその電話機を使ってみて、「ああ、使いにくいナァ・・・」という実感を持った時点で、自身の選択眼の正しさを再確認したとだけ付け加えておきましょう。所詮限られた時間帯に限られた人間と話すためのもの。機能や使い易さなど、いかなる慰みにもならないのですから。

この文章とは何の関係もありませんが、全く映画に触れずにおくのも何となく気がひけるので最後に加えると、本日『フリック』を鑑賞しました。邦画にしては長尺でしたが、全く時間を感じさせない映画だったと言えるでしょう。ざっと10人強の観客とともに観た本作は、期待以上の出来でした。今日中に何とかレビューを書こうかと思います。渋谷のみの公開で、しかもレイト(といっても20:35~ですが)というあまり一般的でない条件が重なっておりますが、それだけの価値はあったか、と。

【追記】
実はこの文章、もともと昨日の昼に書き上げられたものですが、サーバートラブルのため、全て消えてしまったのです。第一稿では、ミース・ファン・デル・ローエを引き合いに出しつつ、私のデザイン観を長めに書いたのですが、同じような文章を2度書くなどという愚行を避けるがため、第二稿ではより簡潔な文章にしました。といってもそれほど簡潔とは言いがたいのですが。

2005年02月03日 00:50 | 悲喜劇的日常
TrackBack URL for this entry:
http://www.cinemabourg.com/mt/mt-tb.cgi/159
Trackback
Comments

>ローズさま

こんばんは。ご報告お待ちしてます。
そうそう、来週お会いするお店(夜の部)は「jurer」近くです。


Posted by: [M] : 2005年02月06日 21:31

床屋はもうちょっと先です。
[M]さんとjurerさんの拘りに刺激され
がまんできなくなったので
家の方は結露で傷んできた玄関から
壁塗りを始めることに決めました。
スタートしたら写真付きでご報告します。

jurerにはいつか行って体感したい。髪も心も・・・。


Posted by: ローズ : 2005年02月06日 09:33

そうですか! それは楽しみですね。
出来上がったら、是非とも写真を見せてください。
この話は、次回「jurer」に行った時にでも、オーナーにお話しておきます。喜んでくれると思いますよ。


Posted by: [M] : 2005年02月04日 12:16

壁も床も汚れてないし
他の家族は不満に感じてないし
あえて改装する理由づけがないのです(笑

30代の頃はひとりでも嬉々として壁塗りやったのですが
壁&天井の容積が多すぎて寄る年波で踏み出せません。

じつは、身近に床屋を開きたい男子がいるので
「jurer」のスタイルにすごく触発されました。
そのときが来たら、かぎりなく手作りの
“風が通り抜けていく床屋”を作ります。


Posted by: ローズ : 2005年02月04日 08:45

>ローズさま

こんにちは。確かローズさんはインテリア関係のお仕事でしたよね? リフォームまで後4年の辛抱ですか。。。ご家族とお住まいであれば、確かにしょうがないですよね。私も一人暮らしだから拘れると思っています。だから結婚でもしようものならどうなってしまうのか、一抹の不安も。

「jurer」は全て手作りといった感じで、オーナーのスタイルがダイレクトに伝わってきました。そこに共感できたことが大きかったと思います。

風が通り抜けていく部屋、私の理想でもあります。


Posted by: [M] : 2005年02月03日 12:57

引き算のデザイン・・・私も好きではないモノを自分の空間に取り入れない主義です。ただ私の場合は家族と暮らしているので自分だけのポリシーを貫けない部分もありますが、人が居るほど空間が貴重なので余計なモノはいっさい遮断します。友人が来ると「すっきり片付いているね」と褒めてくれるけど片付いているというより余計なモノがないだけなのに。まじでできるだけ掃除したくないし。人付き合いで困るのは“モノのやりとり”で大抵は自分の好みじゃない花とか食べ物とか品物だったりするのではっきり「モノはいらない」と言ってます。自宅でパーティなどやるときも諸経費をワリカンにします。その方がホストもゲストも経費削減になるのですよね。
私も壁紙が大嫌い。[M]さんのうちっぱなしのマンションいいなあ〜。(ё_ё)私のマンションは都心で公園の前で立地条件はOKですが(交渉しても)希望内装はNOだったので未だ購入時の寒々しい壁紙のまんま。6年辛抱したけど10年を目処に床は無垢材に壁は珪藻土の土壁にしたいと。仕事柄、大工など職人たちと親しいので、課題は材料費の工面ですね。
[M]さんの行きつけの「jurer」を見たとき[M]さんのライフスタイルが見えてきたような気がしていました。部屋の中を風が通り抜けていく無駄のない家が好きです。----長々とごめんなさい。


Posted by: ローズ : 2005年02月03日 10:54
Post a comment









Remember personal info?