2005年01月11日

エロスと再編成とミュージカルとパンク〜『揮発性の女』『恋に落ちる確率』『五線譜のラブレター』そして「ラリー・クラーク〜パンクピカソ展」

意外なほど力が入ってしまった『犬猫』評、これを終えたのでやっと『オールドボーイ』に取り掛かれます。またぞろ長文になる予感もしますが、生涯の10本に入る作品ですから、何としても公開中に書き上げたいと思います。

さて、年が明けてからも順調な映画生活を送っているワタクシ、先週から昨日にかけては、3本ほど鑑賞しました。『揮発性の女』『恋に落ちる確率』『五線譜のラブレター』です。

熊切監督の4作目に当たる『揮発性の女』は、石井苗子のエロティシズムが意外なほど映画的だったと発見。辺鄙な片田舎を舞台としている点、ある犯罪を通じて男と女が出会う点、悲痛な片思いが劇的なドラマを生むことなくラストへと向かう点など、『空の穴』に通じる点も多く、言ってみれば男女が逆になったバージョンなのかも、などと考えてみたり。

デンマーク映画『恋に落ちる確率』は、その邦題を見た瞬間、一端無視したのですが、一応詳細を調べてみると、どうも“ドグマ的”アプローチらしいということがわかり、それではと言うことで観にいった次第です。果たして、本作はカンヌでカメラ・ドールを受賞した新人監督クリストファー・ボーの才能が如何なく発揮されていて、舌を巻きました。映画文法を軽く飛び越えていく軽快な筆致と、シネマスコープで切り取られた力強い顔のアップが印象的で、そう思うに付け、ああ、この邦題はことごとく失敗しているなという結論に至りました。実際、この映画を観に来ていた観客の多くは何故か年配層で、これは予想でしかありませんが、配給側が狙った客層ではないだろうな、と。いずれにせよ、クリストファー・ボーという名前は記憶されねばならないでしょう。別途作品評を書こうかと思ってます。

『五線譜のラブレター』は、私にはあまり馴染みの無かったミュージカル映画です。が、本作には素直に感動。とりわけ、“Night and Day”を歌う場面はその流麗なカメラワークといい、歌声といい、胸に迫るものがありました。やや複雑ともいえる構造を持つ本作ですが、ケビン・クラインとアシュレイ・ジャッドの演出はその特殊メイクも含め非常に素晴らしかったと言えるでしょう。

映画以外では、ワタリウムで開催中の「ラリー・クラーク〜パンクピカソ展」に行ったりも。ラリー・クラークの映画を特に好んで観ているわけではありませんが、彼の写真は結構好きかもしれません。62年から71年にかけての、彼自身の容貌の変化には驚かされましたね。アメリカにおけるカウンターカルチャーやヒッピームーヴメントの影響かどうか知りませんが、いかにも“それらしい”風貌の彼はなかなか男前でした。思春期への強烈な羨望が彼を動かしていたのは周知の通りですが、まだ12歳だった彼の初めての悲惨な体験を読むと、改めてその価値観の歪みが浮き彫りになったような気がします。この歪みは、しかし、私の中ではどこまでもポジティヴなものとして写りました。

さて、今週末は待望の“カンヌ週間”に繰り出す予定です。

2005年01月11日 13:00 | 映画雑記
TrackBack URL for this entry:
http://www.cinemabourg.com/mt/mt-tb.cgi/147
Trackback
Comments
Post a comment









Remember personal info?