2004年11月01日

『ターネーション』、または東京国際映画祭を終えて

ターネーション31日をもって閉幕した東京国際映画祭2004。私はコンペティション部門を一作も観ていないのですが、ウルグアイを舞台にした『ウイスキー』という作品が東京グランプリとだった模様。主演女優賞も、この作品から選ばれたようです。で、黒澤明賞が、スピルバーグと山田洋次ですか……そもそも黒澤明賞っていうのはどうなんでしょうね…まぁどうでもいいです。

2chなどを観てみると、チケットが取れないにもかかわらず空席が目立ったとか、何であいつがあの賞なんだとか、そんな否定的意見が多いような気もします。まぁ少なくとも私が観た作品は両方とも特別招待作品ですし、爆発するほどのストレスは感じませんでしたが。一つだけ気になるのは、今回コンペティションやアジアの風に出品された作品のうち、正式に日本で公開されるものがどのくらいあるのかということでしょうか。

さて、私が観た『ターネーション』とう怪作について。実は、別途作品評を書こうか迷いましたが、あの映画は一度観ただけでは容易に語れない気がしたのです。
最も特筆すべきは、この映画が218ドル32セントで撮られたということ。しかし、完成には20年近くを要しているのです。私はimacとimovieだけで編集された映画など恐らく初めてみました。確かに現在は、こうした機材さえあれば誰でも映画が撮れます。しかし、『ターネーション』が、安易な発想から生まれた映画でないことは明らかです。監督であるジョナサン・カウエットは、映画によって死を退けてきた人間だからです。映画を撮ることだけが、死以外の唯一の選択肢だったと言うべきかもしれません。そんな作品ですから、この映画を観るには、それなりの覚悟が必要だと思います。“監督の痛み=画面が発する痛み”を体全体で受け止めることが出来るかどうか…そんな覚悟が。

監督自身は、ハーモニー・コリンの映画を観て自らの可能性に気づいたようです。しかし、単なるオルタナティヴとして『ターネーション』を捉えてしまうことだけは避けねばならないと思います。そこには何か、もっと途方も無い可能性が秘められているようでなりません。次はどんな作品を生み出すのか、ひとまずそれが日本でも公開されることを願いつつ、ジョナサン・カウエットという名前は絶対に記憶しておかなければと、深く決意した次第です。

2004年11月01日 18:45 | 映画雑記, 悲喜劇的日常
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Title: 「ターネーション」評/それでも世界は美しい
Excerpt: 『ターネーション』(2004 / アメリカ / ジョナサン・カウエット) Text By 仙道 勇人  誰の人生にもドラマがあり、その瞬間を積み重ねれば語るに足る物語になるものである。しかし、中にはその軌跡を辿るだけで凡百の物語を軽く凌駕してしまうような、余人の想像を絶する...
From: I N T R O+blog
Date: 2005.08.09
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