2004年09月21日

『ヴィレッジ』の余韻に浸りながら上る道玄坂は新鮮だった

M・ナイト・シャマラン監督別に隠していたわけではありませんが、私はM・ナイト・シャマランという監督をどうも好きになれませんでした。彼の作品が、どれもこれもどうしようもない駄作だというわけではないのに、M・ナイト・シャマランという名前が私に訴えかけてくるのは、いつも決まって“狡猾さ”に終始していたのです。これにはさしたる根拠などないのかもしれませんし、よく考えればあるのかもしれませんが、そんなことをあれこれ考える時間があったら、別の映画を見ていたほうがいいし、どうしても観なければならない映画では無い以上、イヤなら避ければいいだけの話ですから。『サイン』を観た後、もうこの監督の映画に金を払うのは止めようとすら思いました。

新作『ヴィレッジ』についても事情は変わらず。またぞろ“不可解な謎”だとか“驚愕の結末”だとかいう宣伝文句ばかりが耳に残り、ほとほとうんざりしていたので、無視を決め込んでいました。私のまわりでシャマランを断固支持している友人などいませんでしたし。そんな折も折、mixiというコミュニティ上である映画監督氏の『ヴィレッジ』評を読んだのですが、そこには『見えない恐怖』という映画が引用されていました。あのリチャード・フライシャー作品の名前をそこに見つけたとき、どうやら眠っていた記憶が呼び起こされてしまったのでしょう、だったら観にいってやろうじゃないか、という気になったのです。もはやマスコミによる“情報誌的”宣伝など端から信用してはいませんが、かような映画好きの意見はやはり貴重です。フライシャーを引用したことにほとんど理由など無いし、ただのハッタリだとその映画監督氏はいいますが、まぁ騙されたら騙されたです。そんなこんなで、封印していたシャマランを、祝日の朝一番で体験しに出かけたというわけです。

『ヴィレッジ』を観終えて劇場を出たとき、私は妙な気分でした。“妙な”というのは、思っていたよりも良かった、というものとも少し違います。この一作だけで彼を見直してみせるのもなんとなく気がひけるし、だからといってあの瞬間(流石にここでは書かないようにしておきますが)、私は間違いなくシャマランを賞賛していたことを思い出したからです。このちぐはぐな余韻に浸りながら、とぼとぼと道玄坂を上っていく体験は、決して悪くなかったと言えます。

ここでは映画の内容にほとんど触れていませんが、それでもこの文章を読んで“シャマラン否定派”の人々が、私がそうしたように劇場に足を運んでいただければ、この拙文も浮かばれるというものです。先入観の決定的な敗北…この敗北は、しかし、どこまでも心地いいものでした。

またまた長くなりましたが、最後に昨日観たヴィデオ『リード・マイ・リップス』に関して。
ヒッチコックの『裏窓』が好きな人、オリヴィエ・グルメが好きな人、漠然とでも変身願望のある女性には必見とだけ言っておきます。私個人としては、ジャック・オディアール監督の映画は、今後絶対に見逃さないようにしようと決意した次第です。

2004年09月21日 12:55 | 邦題:あ行
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Title: ヴィレッジ
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