2004年09月03日

作家の死とはいったい…

ドイツ文学者の種村季弘氏が8月28日になくなりました。71歳だったそうです。
私は種村氏の直接的な“読者”だったわけではありませんし、その数多い著作もほとんど読んではいません。飽くまで、澁澤龍彦という人物を介してしか、その存在には触れ得なかったからです。ネットで種村氏追悼と思われる記事を多く目にしているうちに、彼の著作をまともに読んでもいない自分が、それらに同調して同じような記事を書くことが次第に躊躇われてきたので、書くつもりだった追悼めいた文章を断念することにします。いくらその死を悲しんでみたところで、私には追悼する資格などないからです。

しかしそれにつけても思うのは、どんな分野でもいいのですが、好きな作家・芸術家が死んだ時、ある種の喪失感が否めないのはどうしてかということ。近親者や友人の死であればわかりますが、会った事も無い、ただその作品を通じてしか知らない人間がこの世からいなくなっただけなのにもかかわらず、しかも、作品自体は我々が望めば手にすることだって出来るというのに、その死を深く悲しむという感情。これは非常に特殊な事態だと思うのです。もちろん、その感情に何がしかの理屈をつけることは出来るのだと思いますが。私は今、何故だかそんな思いに囚われています。「お前何言ってんの?」と思われる方もいるでしょうが、それが正直な気持ちなのです。

種村氏の著作を一冊でも多く読むこと、結局、彼の友人でも知人でもない私に出来ることは、それしかないのだと思います。

2004年09月03日 22:32 | 映画雑記
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