2004年08月19日

無知に鞭打つ映画〜『華氏911』を観て思うこと

マイケル・ムーアとジョージ・W・ブッシュある事実を知らないということ。それだけなら特に恐怖を感じることなど無い日常に我々は暮らしていますが、ある事実が隠蔽され、後からそれを知ったらどうなるか。恐らく、喜怒哀楽何らかの感情が表出するのではないでしょうか。

全ての映画監督に“観客に伝えたいこと”があるとは思いませんし、また、一観客として、常に映画に“監督のメッセージ”なるものを求めるという徒労を強いられたくもありません。しかし、『華氏911』を見終えた今思うのは、マイケル・ムーアが『華氏911』を作ったのは、それが隠蔽された結果であろうと無知であることに気づかないアメリカ人に対し、動かしがたい真実を伝えるという明確な目的に拠るものであったということです。そして、その目的を果たすためなら、誇張でもパロディでも泣かせる演出だってなんでもやってやるという強い意志があったのだと思います。
マヌケな日本人である私にもそれは理解できました。

『ボーリング・フォー・コロンバイン』比べ、マイケル・ムーアのストーリーテリングはかなり上手くなっていたように思われました。それはまず“娯楽映画”として観客を愉しませることを心がけたマイケル・ムーアの、映画に対する真摯な態度の表れでしょう。まず、そこを評価すべきかと。実際、エリック・クラプトンの「コカイン」が聞こえてくる部分や、西部劇の辛口なパロディ部分には笑いを禁じ得ませんでした。あるいは、オープニングからタイトルまでの展開の上手さ、9/11の映像を敢えて黒画面で隠し、次のシーンで上空を仰ぎ悲嘆にくれる人々を次々と映すことで、その“悲惨さ”を“効果的に”見せるあたりにも、マイケル・ムーアのテクニックを認めることが出来ると思います。

ブッシュについてはここで書くことなど何もありませんが、彼が“バカでマヌケ”だとしても、そのことに意識的でなければ(もしくはそれを上手く隠蔽されてしまえば)、アメリカ国民にとっても、我々日本人にとっても“バカでマヌケ”ではなくなってしまうということです。
結論として、無知はかくも恐ろしきものかな、と言ったところです。

2004年08月19日 22:51 | 邦題:か行
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Title: 華氏911 ★★★
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Date: 2004.10.10
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