2004年07月13日

私信〜『みじかくも美しく燃え』を観て

みじかくも美しく燃えF様

いつも貴重なDVDをお貸しいただき、感謝しています。今回の『みじかくも美しく燃え』も、ヴィデオはすでに廃盤になっているでしょうし、再上映もなかなか期待できませんから。簡単な感想を書かせていただき、お礼に変えさせていただきます。

原題である『Elvira Madigan』は、ピア・デゲルマルク演じるヒロインの役名ですね。彼女は『欲望』がパルム・ドールに輝いた67年のカンヌで主演女優賞に選ばれていますが、確かに『みじかくも美しく燃え』はピア・デゲルマルクの映画だと言えると思います。だとするなら、やはりラストのストップモーションに触れなければなりませんが、あのシーンを観た瞬間に想起されたのは、『HANA-BI』におけるラストシーンです。撃つ瞬間を見せずに2発の銃声によって“2人の死”を描く手法という点において、どちらかといえば“風変わりなメロドラマ”だと言えないこともない『HANA-BI』とシンクロしました。私にはそれでもう満足です。こういう悲劇、今は少ないですよね。

この映画がメロドラマである所以は、バックに流れる音楽にこそあるのですが、中でも感動したのは、ピア・デゲルマルクがかつての仲間と思しき音楽家たちの演奏を聴くシーンで、あの時演奏していた曲はモーツァルトでしょうか(クラシックに疎いものですみません)、とにかく彼らの演奏に溢れるエネルギーと対照的なピア・デゲルマルクの空虚な表情が印象的で、感心しました。

時に逆光で撮られたスウェーデンの短い夏の光が野原や湖や川を輝かせますが、最も美しい場面を一つだけ挙げるなら、“儚さ”を際立たせるための束の間の幸せを描写した上記のようなシーンよりも、私は迷わず夕暮れ時の海辺のシーンを挙げます。あのシーンにはまさに“悲しみ”が溢れていたが故に、この上なく美しいのです。

戯言を書き連ねました。見当違いな部分もあるでしょうが、どうか大目に見てやってください。『あこがれ美しく燃え』も、やはり必見でしょうか? ご覧になられていたら、是非ご感想をお聞かせください。余談ですが、私に似ていると言われたトミー・ベルグデン、おっしゃる通り彼はキアヌ・リーブスそのものですね。黒い上下(19世紀的な衣装です)を着てたたずむトミー・ベルグデンは、『マトリックス』のキアヌ・リーブスを遥かに準備する存在だったのでしょうか? つくづく映画は不思議だと思うばかりです。

今週末はなんとか『月曜日に乾杯』を観にいきたいと思っております。
それでは、また。

2004年07月13日 11:21 | 邦題:ま行
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Comments

真壁です、どうも。
お蔭様でP・デゲルマルクについてのルポ、曲がりなりにも完結にまでこぎつけることができました。ご声援ありがとうございました。


Posted by: 真壁 邦雄 : 2008年11月17日 20:46

>真壁さま

はじめまして。
コメントありがとうございました。
ピア・デゲルマルクに関するルポ、読ませていただきました。

本作の後、あれほど数奇な人生を歩んでいたとは…かなり驚きました。
中でも興味深かったのは、彼女の夫であるピエール・カミネッチに関する記述です。貴族である彼が、いかにプロデューサーとしての才能に恵まれていなかったことか…。しかし、ジェス・フランコを選んで撮らせるあたり、まったくダメだとは思えませんね。「バンパイア・ハプニング/噛みついちゃってごめんなさい」は私も非常に観たいです。

それにしてもよくお調べになられており、素晴らしいですね。ちなみに、私は「冒険者たち」のジョアンナ・シムカスも大好きです。


Posted by: [M] : 2008年10月20日 19:13

初めまして。真壁と申します。
この映画の主演女優ピア・デゲルマルクのその後の人生について以下にルポルタージュ風の連載をしております。
ttp://b.koroweb.com/pa/patio.cgi?room=sean&mode=view&no=16
暇な時にでも読んでいただき、感想でもお聞かせいただければ嬉しく思います。


Posted by: 真壁 邦雄 : 2008年10月17日 20:55

>tokikoさま

この記事を書いてから随分時間が経ってしまい、印象的だった場面を思う出すことすら覚束無いのですが、そうですか、あれはモーツァルトでしたか。
dvdが発売されているとのことで、情報ありがとうございました。これは私の会社の映画好きの先輩が、csか何かで放送されたものを録画したものを借りたのです。
tokikoさんはリアルタイムでご覧になったのでしょうか。私はもういい年になってから観たので、ショッキングというより、ただピア・デゲルマルクの美しさが印象的だったように記憶してます。

ともあれ、わざわざコメントいただき、ありがとうございました。


Posted by: [M] : 2008年02月04日 12:57

この映画を私は高2の時に見ました。当時の年齢からしてとてもショッキングな内容でした。当時「女性上位」とかアランドロンの「あの胸にもう一度」とか「ロミオとジュリエット」とても印象深いです。みじかくも・・・は映像がとても美しく音楽はとても印象深くドラマチックで美しいモーツァルトのピアノソナタ第21番2楽章、私のお気に入りの曲です。貴方のおっしゃるとおりトミーはキアヌ・リーブスにそっくりですね。チョット華奢な感じ・・・。私はビデオを持っていますが、去年?一昨年?にDVDが出てます。今購入すべきか迷ってます。DVDのことをご存じないようなのでメールさせていただきました。


Posted by: tokiko : 2008年02月04日 00:16
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