2008年06月26日
「…メルヴィル」と一言つぶやいたフランス人
たまには映画以外のことを。
つい先日のことになりますが、ある友人が海外へと旅立ってしまうということで、軽い送別パーティのようなものがあり、表参道にあるBVLGARI IL CAFEまで行ってきました。
初めて行ったBVLGARI IL CAFEは、かなり天井が高い上にガラス張りで、おまけにテラス席まであって悪くない雰囲気。そういう場所では、とりあえずワインをガブガブ飲むという風に決めているので、いい感じに酔っ払ったのです。
その会には、ある外資系コンサル企業で働く、日本語ペラペラのフレンチガイが参加していました。彼と会うのは二回目でしたが、まともに話したのはその時が始めて。
タバコを吸いながら軽く話を聞いてみると、どうやら彼は映画好きらしい。であるなら、とりあえず好きな監督を聞いて相手の出方を見ようという、いかにもいやらしい大人を演じてみたわけですが、その質問に彼は、一瞬間をおきながらも「…メルヴィル」とつぶやいたのです。
彼にはまだ、自分も映画が好きだ、ということしか伝えておらず、こちらの好みの方向性などもまったく説明していなかったのです。にもかかわらず、彼の口からは、特にシネフィルを気取った感じもなく、ごく自然にメルヴィルという名前が出てきました。このパターンは、日本人には無かったなと思い、不覚にもちょっとうろたえてしまいました。彼は、あらかじめ程よい距離をとろうとはしなかった。そのすがすがしいまでの率直さは、感動的ですらあったほどです。
まぁそうなってくるとこちらは、年上の自分がうろたえてしまったことを隠蔽するかのごとく、メルヴィルに関係のありそうな映画作家の名前をつらつらと並べたりするほかなかったのですが、すかさず彼は「でもヌーヴェルヴァーグの作家はあまり好きじゃないかなぁ」とこれまた意外な発言を繰り出すので、これはもう喫煙タイムに立ち話でするような話題を超えているぞと思い、とりあえず今度ゆっくり話そうという言葉を後に、随分年下の彼への敗北に似た感情を味わいながら、また自分の席に戻っていったのでした。
ちなみに、彼が使っていた携帯は、あのPRADA携帯。実は、私も買おうかどうか迷った携帯でした。
とにかく、私の周りにはいない“ニュータイプ”の友人が出来たことを、今は素直に喜んでいます。
2008年06月26日 19:00 | 悲喜劇的日常