2008年02月05日
Porto/'Non'/wank man off/ゴリラ女
■『わが幼少時代のポルト』(Porto da Minha Infância/2001年/フランス=ポルトガル/61分/マノエル・ド・オリヴェイラ)
ある廃墟のスチールにオリヴェイラのナレーションや女性の歌がボイスオーバーされる。その廃墟は、どうやら監督の生家だったらしい。なるほどオリヴェイラは、すでに変わりつつある故郷ポルトの記憶を、映画監督としての生命が尽きる前にフィルムに刻もうとしたのかもしれません。思い出のスケッチのような映画、とも言えそうです。
ただ、本作はただ自分のためだけのスケッチではなく、やはり映画なのだ、ということだけは強調しておきたいところ。その証拠に、オリヴェイラは、あくまで大胆に、自由に、幼少時代を“創造”しているのです。
何度か繰り返される女性の歌。挿入される古いフィルム。登場人物とナレーションの“時空を越えた”掛け合い。ほんの数シーン登場するレオノール・シルヴェイラの、残酷なまでの美しさ…。その全てが、この映画を、安易なノスタルジーから開放しているようでした。
■『ノン、あるいは支配の虚しい栄光』('Non', ou A Vã Glória de Mandar/1990年/ポルトガル=スペイン=フランス/110分/マノエル・ド・オリヴェイラ)
ある大木を捕らえた長い長いショットで始まる本作は、オリヴェイラ流の“歴史の授業”といった印象。私には、ポルトガルの支配の歴史に対する造詣などかけらもありませんし、また、興味もないと言い切ってしまえそうですが、にもかかわらず本作が私を魅了したのは、まず、前半トラックの荷台で会話する兵士たちの視線と語り方、そしてそれらを時に真正面から捉えようとするカメラの位置に感動したからです。イマジナリーラインはことごとく無視され、一体彼らが誰と会話しているのかすらわからなくなり、かと思うと、これは我々観客に向けられているのではないかと思わせる強固な視線から目を背けられなくなるといった按配で、呆気に取られるというほかないのです。語られる内容に興味が示せなくても、オリヴェイラという人はなんと自由に映画を撮るのかと思うと、やはり感動せずにはいられませんでした。
後半の劇的な展開もまた忘れられません。兵士たちが原住民の奇襲に合う瞬間の、あの大きな爆発と、銃から出る火花。負傷した原住民の、悲痛な、しかしあまりに場違いな叫び声。それは、ジャンルとしての戦争映画を模倣しているかのようでしたが、それらとは決定的に異なる何かがある。いや、何かが無かったのかもしれません。
オリヴェイラは、歴史上の合戦シーンを描くとき、何を参照したのでしょう。いくつか絵画的なショットが見られたのが印象的。ああいったシーンを“本気だ”と思わせてしまうあたりが、オリヴェイラの凄さなのだと思うのですが、上手く説明できません。
■『やわらかい手』(Irina Palm/2007年/イギリス=フランス=ベルギー=ドイツ=ルクセンブルグ/103分/サム・ガルバルスキ)
まったく乗れなかったわけではありませんが、特筆すべき点もまた見当たりません。ただ一つ、“wank off”という言い回しを覚えられたのは収穫。もちろん、行為そのものは見えないわけですが、ピンク映画的な構図(画面手前に排された小道具により局部を隠すこと)とリアルな音が、それを想像させるに充分だったとは思います。
■『ジャーマン+雨』(2006年/日本/71分/横浜聡子)
途中まで文章を書いて、とりあえずもう一回観ようかな、と「MovieWalker」をチェックしたら、今週いっぱいで終了のようで。
参ったなぁ、参った……監督は29歳かぁ………主演の野嵜好美は25歳…山下敦弘監督の『道』は観てないじゃん……ヤバいねこれは…あまりに堂々としている……トラウマを告白させるシーンの真正面……「先生〜」という子供の声…マンホールに飛び込む時の引きの絵……土手で熱唱される歌に漂うエモーション……‥‥‥・・・・・・・・・・・
まるで体をなしていませんが、今つぶやけるのはそんなところです。何かが完成しているとか、壊れているとかそういう類の映画ではないようにも‥。しかし、何だか決定的な何かが潜んでいそうな感じが‥。賞賛と嫉妬とが入り混じった複雑な気持ちです。
最後に、本作に惚れ込んで大阪からわざわざチケットをお送りいただいた朋友・イカ監督に、あらためて感謝の念を捧げたいと思います。ありがとうございました!
2008年02月05日 18:41 | 映画雑記
国道20号線は?
Posted by: : 2008年02月07日 00:36