2007年04月23日

新たなグルジア人監督の誕生

先週末は4本の映画を鑑賞。サーク上映会のほうは別エントリーで書きますので、それ以外を簡単に。

まずは『13/ザメッティ』。
監督のゲラ・バブルアニはグルジア人で、父親であるテムル・バブルアニも映画監督、弟のギオルギ・バブルアニは本作の主演俳優と、映画一家のようです。グルジア人監督というと、私はオタール・イオセリアーニくらいしか知らなかったのですが、『13/ザメッティ』は、少なくとも私が観てきたイオセリアーニの映画とはまるでテイストが異なる映画でした。

原題の『TZAMETI』(ザメッティ)とはグルジア語で“13”を表す言葉で、それが欧米では不吉な数字とされているのは周知の通りです。ただし、本作はその題材から考えるに、例えそれが12でも14でも陰惨であることに違いはないだろうと思うのですが、それも私がキリスト教的な思考に慣れていないせいでしょうか。13が不吉であるとするなら、私は毎年自分の誕生日を呪わねばなりません。

閑話休題。本作で最も印象的なのは、主人公ギオルギ・バブルアニの、不安に苛まれた表情の強烈なクローズアップです。彼が笑みが見られたのは、本編中恐らくたった1シーンのみだったと思います。基本的に無表情な彼の表情の変化、それが本作の中心に据えられるのは、あのラストシーンを考えても間違いないのではないか、と。私の中ではロシアンルーレットシーンよりも、モノクロシネマスコープで切り取られた彼の表情、さらに言えば、目と口の演出の見事さを賞賛したい。

もちろん、13人からなるロシアンルーレットというアイディアはなかなか面白いのですが(確かにハリウッドも飛びつくでしょう)、自らの資金のみ(恐らくは低予算でしょう)で撮られたあのロシアンルーレットのシーンで注目すべきはむしろ、その合間合間に不吉に響き渡る進行役の機械的で残酷な声のほうだと思います。中で頭を打ち抜くシーンに派手な演出を施せない分、いかにそのゲームの異様さを演出するかという部分に頭を悩ませたのではないかと思うのです。そして、それは概ね成功していた、と。あの進行役のテンションの高さはそれほどまでに尋常ではなく、だからこそ怖い。

もう少し短くても良かったようにも思えますが(特に後半部分)、長編処女作としての勢いを感じさせますし、この才能は今後も“買い”でしょう。監督自身がハリウッドで手がけるリメイクも楽しみです。さらに言うなら、父親の作品も何とかして観たいものです。

次に観たのは『ハンニバル・ライジング』。ギャスパー・ウリエルはなかなか悪くないのですが、作品全体として、というかサスペンスとしてのいささか凡庸だった印象。コン・リーの美しさは『マイアミ・バイス』の時より上でした。私としては、レクターにおける最も重要な要素であるカニバリズムを、より具体的な描写として見せて欲しかったと思いました。決してつまらない映画ではなかっただけに、残念。

2007年04月23日 12:13 | 映画雑記
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Comments

>ヴィ殿

こちらは「イタリア映画祭」をすっかり忘れてました。今年は諦めて新作を観まくります。

ジャン=ピエール・カッセルと言えば、むしろその娘がギャスパー・ウリエルと付き合っているみたいですね。
『13/ザメッティ』は、確かに『憎しみ』風なざらつきがありました。


Posted by: [M] : 2007年04月24日 14:14

そうか、週末はサーク上映会だったのか!(すっかり忘れてた…〉。「ザメッティ」はグルジア映画なんですね、単純にロシアかと思ってました。そいえばエリツィンが死にましたね。じゃなく、ジャン=ピエール・カッセルが亡くなりましたね!!(19日) この映画の予告観た時、映像の質感が「憎しみ」っぽかったので、息子から連想しました。


Posted by: こヴィ : 2007年04月24日 13:16
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