2007年02月26日

1933年に映画は一つの完成形をみせていたという一例

私が日仏学院に行く時は必ず数人の知った顔があり、東京における映画好きの数もそれで予想されてしまうものですが、昨日、「世界の映画と共にある都市、パリ」という特集上映に足を運んだ時もやはり、ああ、あの人もいる、あ、あの人もいるなぁ、あの人はいないのかしら? などという感じで、まぁいつもながらの光景に収まっていくのですが、1本目の『黙示録の四騎士』はフランス語字幕のみだったからか、観客もまばらでちょっと拍子抜けしつつ、しかし作品自体はわけがわからない箇所も多くあったとは言え、約2時間30分もってしまうあたりが素晴らしいといえば素晴らしく、四騎士の疾走がパリの空にインサートされる描写は若干仰々しかったとはいえ、なかなかの迫力だと思いました。

その後、カフェで次のルビッチを待ちながら最近奇跡的に入手出来たNINTENDO DS Liteで「大人の常識力トレーニングDS」に勤しんでいると、ポンポンと肩を叩かれ、振り向いてみると、そこには最近卒業制作を撮りあげて公開を待つばかりの[R]君がいて、ブルータスお前もか、と言いつつ最近の映画話に花を咲かせました。その後上映された『生活の設計』は8割方埋まっていて、やはりルビッチは偉大過ぎるという結論に。今年は後何本のルビッチが観られるかわかりませんが、早々と2007年のべスト入りが約束された次第。

そうそう、土曜日は韓国アートフィルム・ショーケースから『不機嫌な男たち』も観ました。
イメージフォーラムにおける“性器露出率”は東京でも圧倒的な高さだと認識していますが、『不機嫌な男たち』におけるセックスシーンの決して美しくはない“音”は、その描写以上に印象的で、未だ耳の奥で反響しているようです。近年、本作ほど人に説明出来ない映画を観ていないかもしれません。とりあえず悪くはなかったと言うほかありませんが、私の前列に座っていた初老の夫婦は、開始40分くらいの何度目かの濡れ場で、とうとう席を立っていきました。さりげなく聞こえてきた「そろそろ出ようか」という呟きもまた、本作の一側面を如実に表していたのだと、今は思っています。

2007年02月26日 12:30 | 映画雑記
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Comments

>雄さん

レビュー拝読しました。
仰るように、他の作家を思い浮かべようにも、実は彼らとは資質が違うんじゃないかと私も思います。
私はあの“不条理な”ラストシーンの水平線と細波立つ海面と海風の音の思いがけない美しさにちょっと感動してしまいました。
とりあえずこの監督からホン・サンスへと遡ってみたいと思います。


Posted by: [M] : 2007年02月27日 19:20

『不機嫌な男たち』のセックスシーンの唐突さと非エロス的な描写はほんとにヘンでしたね。私は映画全体としては楽しめなかったのですが、この奇妙さは記憶に残りそうです。


Posted by: : 2007年02月26日 18:11
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