2006年10月10日

またぞろ苦笑を禁じえないニュースが…

先日、こんなニュースを目にしました。

怖すぎて公開危機、米ホラー映画

 米ホラー映画の人気シリーズ第3弾「SAW3 ソウ3」(ダーレン・リン・バウズマン監督)が、あまりに凄惨(せいさん)な内容で、一般作品として「公開危機」に陥っていることが8日、分かった。配給会社はすでに、11月18日の封切りを決めたものの、映倫審査は本国からプリントが届く9日以降。何とか成人指定を避けたいとしているが、米国審査では4回も差し戻された問題作。配給、宣伝、劇場関係者は、本編の到着をハラハラドキドキの心境で待っている。

実は先週お会いしたmixiの友人・かおるさんは『SAW3』の前売鑑賞券を購入していまして、このシリーズどうなんでしょう? などと話していた矢先にこんなニュースを見つけてしまったわけです。

私は、『SAW』を劇場で観た時、それがすでに日本用にあるシーンをカットされているヴァージョンだと知っていて、若干のショックを隠せませんでしたが、どうやら今回もまたそれと同じ事態に陥りそうです。まぁ私自身、2作目の『SAW2』を観に劇場にまで足を運びながら、直前に監督が違うことに気づいて鑑賞を見合わせた程ですから、このシリーズに大した期待もしていないし、その内dvdで観ればいいかなと思っているくらいなのですが、アメリカよりもずっと厳しい(=私にとっては酷いとしか言いようがない)審査をする日本の映倫に関しては、やはり文句の一つも言いたくなってしまう、と。

私はまず、凄惨な串刺しシーンだとか、人体が無残に引き裂かれるシーンだとかを極端に好むマニアではありません。例えば初期のピーター・ジャクソンだとか、あるいはウォーホル&ポール・モリセイのホラーだとか、最近観た例で言うなら『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』なんかもそうですが、それらが素晴らしいと思うのは、結局は映画作品としての完成度が高いと思うからであって、もちろんそこにはスプラッター的表現の上手さや効果も含まれてはいるのでしょうが、ただそういうシーンだけを好んで、映画を観るマニアではないと自覚しています。

さてそんな私でも、本来であればそこにあるべき残虐シーンを排除された状態の、いわば“不完全な映画”には容易に納得出来ないというもの。もしかすると、その排除されたシーンこそが驚くべきショットだったりする可能性だって否めないにもかかわらず、恐らく我々観客よりもより多く倫理的で客観的だとは断言出来ないであろう日本の映倫による情報操作が“正しい”なんて言えるはずもない。

あるシーンが排除された映画だって面白い映画はある、という意見もあるでしょう。実際、『SAW』だって悪くはなかったのです。しかしそれはあくまで結果論であり、何ら排除されることの理由足りえません。そもそもシーンをカットする権利など、監督かプロデューサーにしかないと私は思っているのですが、彼らにだってショットを切る絶対的な正当性なんてわかりはしないだろうに、あろうことか映倫がさもそれが観客のためであるとか社会のためであるとか言いたげにショットを切るなど、それは私にとって暴挙としか映りません。まぁそれでも制作側が了解しているのであれば、どうしようもないですけど。公開されなければ映画じゃなくなってしまうので、やはり公開することが先決、ということでしょうかね。

恐怖を見せることを一応その存在意義にしているはずのホラー映画が、恐すぎるから駄目とは…まったく苦笑を禁じ得ませんが、昨今では、エロには寛大で暴力には厳しいのが日本の映倫の現実のようで。

2006年10月10日 18:00 | 映画雑記
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Comments

>yukiさん

どうも。
あれは君がデザインしたのか…とかいいつつ、どんなものだったかはわからないのですが。
まぁしかし大変でしたね。
今度映画の仕事きたら事前に教えてください。


Posted by: [M] : 2006年11月22日 18:10

どもども。
『SAW』の前売り買うとおまけが付いてくる!の
おまけを作ったモノです。

我が社に当時、回った情報は
『公開中止』だったからビックリしたよ!!

全国の映画館に送る予定の「最後の1ピース」どうしてくれんのーーー!!!
(しかも私が全て手で数えた)
って感じでした。

思いっきり、情報に振り回された

2.3に関して全く情報無いです。
辞めちゃったから。


Posted by: yuki : 2006年11月22日 16:32

>通りすがりさん

そういうことでしたか。

まぁどちらにせよ、私のような業界とは無関係の一観客にしてみればスクリーンにかかる結果が全てですから、こればかりはどうしようもないのでしょう。そりゃノーカットで観たいに決まってるんですが。

現在のレイティングと配給側の関係については理解しました。詳細な情報に感謝します。


Posted by: [M] : 2006年10月11日 00:37

>映倫は劇場で公開される完成品を審査する。配給側はその前に、しかるべき部分をカットしてなるべく低いレイティングで通るようにする。

いや、そうじゃなくて、まず完成品を映倫が審査試写して「これこれこういうシーンを根拠としてR-15です」とレイティングする。配給会社がそれを受け入れれば、そのままノーカットで公開。PG-12にしたい場合は問題となった箇所をカットする、あるいは暗く焼くなどして再審査してもらう、という順番になります。日本映画の場合は脚本段階で同様のことが行われます(映倫審査員が撮影に入る前に脚本を読んで「こういう描写があるとR-15になりますよ」とかアドバイスする)

最近の例で言うと「バッドボーイズ2バッド」がソニー・ピクチャーズの判断で死体を手荒に扱う場面をカットしてPG-12で公開、「フレディ vs ジェイソン」が当時のヘラルド映画の判断でジェイソンの体を突き破ってフレディが出現する1カットのみ削除してPG-12で公開、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」がムービーアイの判断で階段でのファック・シーンを暗く焼くことによってR-15で公開されています。いずれも配給会社が1つ上のレイティングを受け入れるならばノーカットで公開できたものばかりです。


Posted by: 通りすがり : 2006年10月11日 00:10

>通りすがりさん

度々ありがとうございます。

情報操作は、あくまで映画そのものとは無縁の領域で行われているということですね。配給側による宣伝文句の捏造くらいは日常茶飯事という認識でしたが、そういった根深い連鎖があると…
レイティングを決めるのは映倫だけれど、外国映画の場合、映倫は劇場で公開される完成品を審査する。配給側はその前に、しかるべき部分をカットしてなるべく低いレイティングで通るようにする。
こういう認識でいいですかね?


Posted by: [M] : 2006年10月10日 22:51

本国(アメリカ)の意志は関係ありません。日本において、ノーカットのままR-15で公開するか、残酷場面をカットしてPG-12で公開するかは日本の配給会社が決めることです。日本の配給会社はR-15をすごく嫌がります。ひとつにはPG-12なら「小学生以下は保護者同伴を推奨」であって「禁止」ではありませんが、R-15になると「中学生以下は入場禁止」になるからで、もうひとつ大きな理由はR-15指定になってしまうと日本のテレビ局の内規でTV-CFが(TV-CF自体には残酷シーンがなくとも)ゴールデンタイムで流せなくなり、少年ジャンプなどの少年漫画誌がパブリシティでとりあげてくれなくなり、また公開後に、ただでさえ枠が無くなっているテレビの洋画劇場に売れなくなるからです。政府が規制しているのでもなく、映倫が許可しないのでもなく、メディア自身が自分で自分たちの首をしめているのです。これが陰湿な日本の現状です。


Posted by: 通りすがり : 2006年10月10日 22:08

>通りすがりさん

情報ありがとうございます。

日本の配給側が、多くの劇場で公開させるために、低いレイティングを求めるというのは、つまり、低いレイティングになるまで日本では公開しないぞ、という意思表示を本国の制作側にしているということですか? そのためにしかるべき部分をカットさせていると?
そうだとしたら、おっしゃるとおり、非難の矛先は配給側に向けられるべきかもしれませんね。

>かおるさん

なるほど、これが宣伝手法だとすれば、私はまんまと引っかかってしまったことになりますね。なんでも『SAW2』はシリーズものにしては当たったらしいので、その流れでいけばこのまま当たる可能性もあると思うのですが、そんな保障はどこにもありませんからね。
負の情報で逆に話題を作るのも昨今では常套なのかもしれません。どちらにせよ、オリジナルで公開されるなら何の問題もないのですが。


Posted by: [M] : 2006年10月10日 21:42

はい〜〜!前売りを購入して、ジグソウのストラップにホクホクしておりますよ〜〜!んで、このニュース!!どーしてくれんのよぅ!この前売りの立場は・・・!!
映倫さん、全部見せろっては言わないから、ちゃんとモトの残酷さは残して〜〜!(涙)日本で公開されるホラーって、かなり削除されてるっていいますからね。「ハイテンション」なんてあれだけいろんなこと言われてたのに、ちぃ〜っとも怖くなかったし。でも、これだけ宣伝してるんだし、このニュースも宣伝の一部かなーって気もしますよね。だって「3」は絶対コケると思うモン。


Posted by: かおる : 2006年10月10日 20:56

日本の映倫の基準は暴力に関してはアメリカのMPAAより緩いです。アメリカでRならば日本でもほぼ間違いなく(成人映画=R-18ではなく)R-15でパスします。配給のアスミックエースがR-15のレイティングを受け入れるなら、なんの問題もなくノーカットで公開できます。非難の矛先はなにがなんでも低いレイティングで公開しようとする配給会社に向けられるべきでしょう。


Posted by: 通りすがり : 2006年10月10日 19:05
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