2005年06月06日

だから映画はやめられない

Buco di Muro予定がないということと、自由に時間を使うということとは、決してイコールで結ばれることではありません。特に予定もなく自由になる時間が多いからといって、その時間を思い通りに、効率的に使うことが出来るとは限らないわけで。私は時間の使い方が実は下手なんじゃないか、ふとそんな思いに囚われることがあるのですが、さりとて自由を享受している実感がないわけではない。私の場合に限って言えば、すぐそこにある“何か”を、自分の意思とは関係なく、しかしあたかもそれが自分の意志であるかのように見てみぬ振りをしているだけなのかもしれません。その現状に甘んじるつもりなど毛頭無くても、それが私の人生の一側面であるのは、どうやら確かなようです。

と、月曜日の朝から思いつきで書き始めた割には、およそ軽みのない、やたら内省的な文章になってしまって反省しているのですが、まぁそんなことはさておき、先週末は映画を3本ほど鑑賞。『エレニの旅』『バタフライ・エフェクト』『ライフ・アクアティック』という、予告どおりの3本です。
こんなことを今更告白してもしょうがないのですが、実は、テオ・アンゲロプロスという映画作家を、私は長らく遠ざけてきました。私は、単に“合う・合わない”で映画を選ぶような通俗的人間ですから、18歳の時に初めて目にした『シテール島への船出』に睡眠を強要されて以来、次第に多くの映画を観るようになって以降も、それがいかに愚かな振る舞いと知ってはいながらも、私はことごとくアンゲロプロスを避けようとしてきたのです。これまで何度その思いを断ち切ろうとしたことかわかりません。そして今、周りの人間の話を聞くたびに、あるいは本を読むたびに思い知ることになる自らの“小ささ”と“弱さ”を、多少は払いのけることが出来たと思っています。土曜日初回の閑散としたユーロスペース2は、そんな私にとって絶好のシチュエイションでした。『エレニの旅』は悲しいほど素晴らしく、そして驚くべき映画でした。そろそろ本格的にアンゲロプロスを観よう、いや、観なければならない、そう決意させるに相応しい作品でした。
打って変わって『バタフライ・エフェクト』、ヒロインを演じたエイミー・スマートが私の好みから大きく隔たっていたのが不幸といえば不幸でしたが、鑑賞後の印象はそれほど悪いものではなかったです。記憶を巡る物語だけに、フラッシュ・バックが多用されていました。監督はエリック・ブレスとJ・マッキー・グラバーという2人組で、エリック・ブレスは『デッドコースター』の脚本を書いたとか。本作を観れば、それも納得といった感じ。
で、最後は待望の『ライフ・アクアティック』です。
上映前、ガーデンシネマ隣の「Buco di Muro」にて遅めの朝食をとりましたが、すでに何度か来ているはずのこの店のテラスには、何故かその日に限ってほとんど感動的とも言える穏やかな日差しが充満し、悪くないイタリアンとワインで、こちらの胃ばかりか五感全てが満足しているかのような錯覚を味わう事が出来、その後鑑賞する『ライフ・アクアティック』への心地よい期待感を抱かせます。そんな『ライフ・アクアティック』は、一言で言えば傑作、さらに言えば期待をはるかに超えた本年度ベストに匹敵する作品でした。『ミリオンダラー・ベイビー』と本作を超える作品が今年中に現われるのかどうか、いや、もう今年はこの2作だけで十分かもしれないなどとうそぶきたくもなります。出来ればあまり行きたくは無い恵比寿ガーデンシネマではありますが、やはり再度観直さねばならないでしょう。人生のあらゆることを“冒険”と位置づけた上で、映画を作ること、そしてそれを見せること。これをひたすら“笑い”とともに描くにとどまらず、ここにはまるで全てがあるかのようです。銃撃戦あり、ロマンスあり、そして(擬似)家族のドラマがあり、歌がある。加えて、ビル・マーレーはその存在においてすでに感動的な俳優であると改めて確認。未見だった『天才マックスの奇跡』のdvdをすぐにでも購入しなければならない義務感に駆られつつ、やっぱりアメリカ映画だ! と快哉を叫びました。

昨日はそんなこんなで、非常に心地よい1日を送ることが出来ました。
1本の映画が日常をも輝かせるという、ちょっと想像すればさして珍しくも無いそんな事態に改めて直面し、映画という芸術=娯楽の偉大さを実感した日曜日でした。

2005年06月06日 13:16 | 映画雑記
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Comments

>Ken-U様

毎度どうもです。
いやいや、こちらこそ。先に記事をお書きになったのはKen-Uさんのほうですから。
それにしても、実は私、3シーンほどで涙しそうになってしまいました。何だか嬉しくなって、同時にうるっときました。
『ミリオンダラー・ベイビー』とは対極にあるといってもいいくらいの映画ですけど、どちらもアメリカ映画、ということで今年はすでに満足しちゃってます。


Posted by: [M] : 2005年06月07日 19:11

[M]さん、またおじゃまします。

どうもありがとうございます。そう、「ライフ・アクアティック」の件です。このcinemabourgをチェックしていてよかった。きっとわかっていただけると思ってました!

ちょっと興奮してしまいました...「ライフ・アクアティック」は、ぼくにとって今年のベストになることでしょう。時点は「ミリオン…」でしょうか。おもいっきり[M]さんとカブってますが。


Posted by: Ken-U : 2005年06月07日 00:20

>shimaさま

どうもご無沙汰です。
そうですね、あまりにも濃縮還元100%な映画体験でした。あんなセットを作ってしまうのも凄いですが、最後には全てに調和がとれている。変なようで変ではない感覚といいましょうか、本当に不思議な、そして最高の映画でした。


Posted by: [M] : 2005年06月06日 22:45

「ライフ・アクアティック」は最高でしたー!
愛嬌と愛情と哀愁MIXへんてこワールドな感じで。
私が映画と人生において必須と思う要素がギュギュッとつまっていて大好きな一本となりました。


Posted by: shima : 2005年06月06日 15:08
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