2005年03月08日

『恋に落ちる確率』のトリックに全身で酔いしれる

原題:RECONSTRUCTION
上映時間:92分
監督:クリストファー・ボー

明らかに的を外している邦題はさておき、“ドグマ”との近親性が随所に見受けられたカメラワークと文法には新人監督としての野心が如実に表れています。その意味で、将来を期待したい監督だと断言したい気持ちにかられますが、2作目の公開は本作の客入りに拠るのでしょう。

一人二役という手法は様々な映画で試みられてきましたが、本作ほど、その2者の差異が大きかったことがあったでしょうか。あまりに巧妙な演出に、私は途中までそれら2人の女性を同じ女優が演じているとは気づきませんでした。なんと言うトリック!

『RECONSTRUCTION』とは“再編成・再構築”という意味になりますが、このタイトルでは何より女性を呼べないだろうという意図はわからなくもないものの、映画のタイトルはその中身とほとんど同じくらい重要なのかもしれず、そう考えると、いくらなんでもこの邦題はないだろうと思います。何故なら、本作は、この“RECONSTRUCTION”という言葉そのままの映画だからです。現実と虚構がその立場を互いに入れ替え、時間という概念すら自在に操作されるので、それだけ聞くと一見難解なイメージを与えかねないのですが、そこがこのクリストファー・ボーの腕の見せ所で、映画の中心に男と女のロマンスを置いているため、難解さはかけらも感じないまま、観客はどちらかに共感すらしてしまうことも可能なのです。

ともあれ、期待以上の作品に出会った喜びはことのほか大きかったと言えるでしょう。
次回作も是非正式公開してほしいものです。

2005年03月08日 12:20 | 邦題:か行
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