2004年10月10日
『ツイステッド』、そこに“ねじれ”はあったのか
ほとんど映画のような暴風雨に挫けそうになりながらも、渋谷東急に映画を観にいくというのもそれほど悪くはなかったのですが、それというのも、初日にもかかわらず観客が6人しか居なかったという事実に拠るもので、比較的大きな映画館にポツリ、ポツリとしか観客が居ない中で観る映画は快適そのもの。まるで地方のシネコンの最終回を観ているときのような、そんな気分でした。
フィリップ・カウフマンと言えば、『存在の耐えられない軽さ』ということになるのでしょうが、実は『アウトロー』の脚本家だったと知ってちょっと驚いてみたり。前作『クイール』はマルキ・ド・サドが描かれていたにもかかわらずほとんど印象に残っていませんが、今作は何やら陰惨な猟奇殺人もので、サミュエル L.ジャクソンとアンディ・ガルシアが脇を固めているのですから、やはり観にいくほかないな、と思った次第です。
丁寧に撮られた映画だったとは思います。演出もそれなりに良く、俳優陣も大いにノッていたのではないでしょうか。がしかし、脚本が弱い。音楽は全く駄目、というより邪魔なだけ。驚くような画面もない。ということで、楽しめた部分があるとすれば、やはり俳優たちの“顔”だけだったのではないかと。
本作のように、ラストで観客を驚かせるような映画はよくありますが、その“驚き”が作品の“面白さ”とは実は何の関係もないという事実が、図らずも露呈していました。実際、観客を驚かせるだけであれば、実はそれほど難しくはなく、思わせぶりなシーンを合間に挟み込んで、俳優がそれなりの演技をしていれば、意外性はあっさりと生まれるものだと思いますが、そんな“ラストシーンのためだけの”映画などは面白かったためしがないし、肝心なのは、人間関係の微妙な揺らぎだとか、舞台となる場所の陰鬱さだとか、小道具に対するこだわりだとか、あくまで私見ですが、そんな部分なのではないかと思うわけです。『ツイステッド』は、それらがまるっきりないがしろにされていたような気がしてなりません。レイティングの対象となったであろう死体の残酷さも、物語的な要請という感じはなく、なんだか“浮いて”いて、残念至極です。
冒頭、アシュレイ・ジャッドのアップからカメラが引いていくのは悪くないのですが、そもそもどういう経緯であの場面に到ったのかがわからないのです。あの一連のシークエンスには、その凡庸さ故に結構引いてしまいました。ファーストシーンとして相応しくなかったと思います。まず彼女のトラウマの要因を強烈に示す必要があったのではないかと。両親が死ぬ場面が全く描かれていないので、トラウマ自体も弱いのです。
まるでジャン・コクトーのような表情を見せたデイヴィッド・ストラザーンはなかなかの存在感でしたし、ラッセル・ウォンも悪くはなかったです。魅力的な俳優陣を揃えていただけに、全く残念な出来だったと言うほかない映画でした。いったい何処に“ねじれ”があったのか、未だわからないままです。
:::訂正:::
カウフマンの前作は、『クイール』ではなく『クイルズ』でした。訂正します。
2004年10月10日 00:47 | 邦題:た行
Excerpt: ツイステッド観た 話が進むにつれ疲弊して行くアシュレイ なかなかウマイ?と思いきや何かありがちな 設定のいまいちパンチの無い役柄で^^; ドレスアップした彼女を観たけどそっちのが魅力的 アンディ ガルシアはオーシャンズ11のように バリっとしたスーツで悪...
From: Dazzling M
Date: 2005.08.30
>puffさん
いや、全く。
カウフマンに期待していた人も多かったと思うのですが、この映画を観て、映画は俳優に拠るところが大きいと改めて感じた次第です。この映画はまさに、俳優陣がただ救いだったと言うほかありませんね。
Posted by: [M] : 2004年10月27日 21:18
Mさん、こんにちはー
この映画ですね、、
予告編やチラシの方が良かったです。エヘ
オープニングの靄の掛かった海の景色や
鳥たちが飛んで行く映像がとても良かったし
アシュレイ・ジャッドが刃物を突き付けられているシーンも
期待させてくれたのですが・・・
何だか全体的に安っぽく、火サスな感じがしましたです。
時折りハッとするような映像とかがあったりして
もう少し上手くすれば、とちと残念でした・・・
Posted by: Puff : 2004年10月27日 18:51