2004年09月12日

『なぜ彼女は愛しすぎたのか』、『CODE46』

なぜ彼女は愛しすぎたのか、CODE46昨日は日記の更新が出来ませんでしたが、こんな私にも映画以外の用事があると言うことで。といってもそれ以外の90%は酒を飲んでいるこの私、とても威張れたものではありません。
ということで、昨日はシネマソサエティにて『なぜ彼女は愛しすぎたのか』、そして本日はシネセゾンにて『CODE46』を鑑賞してきました。前者の入りは20名弱、それに比べ後者は7割方埋まっていました。面白いのは、双方とも“男と女の物語(ラブストーリー)”であるにもかかわらず、メディアでの扱われ方が全く異なっているということです。まぁ、監督の知名度から言って、ウインターボトムはすでに確固たる地位を築いていますから、その客入りに差が生じてしまうのは止むを得ないこと。にもかかわらず私個人の感想を言えば、女性監督エマニュエル・ベルコによる長編デビュー作のほうが面白かったと言えます。

この映画、35mmのフィルムとDVを使い分けていたように思うのですが、日本語の公式サイトが無いばかりか、その他のサイトでも書いてあることがまちまちなのでわかりません。室内ではフィルム、戸外ではDVだったと思われるその映像、“ドグマ的”なアプローチばかりが目立つようですが、それは審美主義に背を向けた感のある、あの戸外での光の捉え方や、ぶれるカメラを見れば肯けもするのですが、女性監督ならでは(というと多分に語弊がありますが)の審美主義的ショットもありまして、それは初めて少年と主人公が結ばれる場面だったと思います。あまりに露出過多からなのか、2人が結ばれる舞台となる部屋が、ことごとく白で飛ばされ、ほとんど『マトリックス』における仮想空間とも言うべき、幻想的な空間を作り出していたからです。そうかと思えば、基本的に自然光で撮影されたであろうこの映画の、他の室内シーンは、総じて暗い。目が悪い私のような人間には、ちょっと暗すぎるのではというシーンがいくつもありました。もちろん、監督の狙いであるのはわかります。ただ、いくらドキュメンタリー的な映像を目指していても、光に対する配慮がちょっと足りないのではないかと思ってしまいました。題材としては新しいし、演出も決して悪くないのですが、最後までその部分が気になりあまり“入り込め”ませんでした。いや、そもそも“入り込む”映画ではないようにも思われますが、ただ、これは私が“男性”であるからなのかもしれませんね。実際、一緒に観た女性は、絶賛していましたから。しかし、監督のエマニュエル・ベルコは、少し前の某外務大臣にそっくりですね。。。そう思うと若干興を削がれるので、あまり意識しないで観て頂くことをおすすめします。

『CODE46』は、一応SFというジャンルに属しているようですが、“近未来”的映像は最小限に抑えられていて、所謂SF映画というよりも、やっぱりこれはラブ・ストーリーだろうと。私は『モーヴァン』のイメージをずっと引きずっているのか、サマンサ・モートンの演技にばかり注目してしまったのですが、“CODE46”に抵触し記憶を消去され、ティム・ロビンスと“交われない”彼女が、手足をベッドに縛られ、苦しみながらも結ばれていくシーンを、ずっとアップで捉えていたシーンにはなかなか圧倒されました。その直前に一瞬だけ写っていた局部も快く忘れさせてくれるほど、忘れがたいシーンではありましたね。
長身のティム・ロビンスと、どちらかと言うと小さいサマンサ・モートンが、並んで歩いたり、一緒にシャワーを浴びたり、抱き合ったりする度、その伸長差を上手く画面に定着させ、それを生かした演出をしていたようにも思えます(個人的には2人でシャワーを浴びるシーンが好きです)。シネマスコープで撮られた俯瞰ショットが随所に差し込まれますが、上海とドバイで撮影されたと言うあの“近未来”とは遠い、しかし、現在とは似ていない感じもする映像は、『アルファヴィル』を想起するまでも無く、監督のSF映画に対する距離感が充分表出したのではないでしょうか。それは上海で交わされる言語が、各国のそれをごちゃ混ぜにしたようなものであることにも存しています。まだ見ぬ未来を造るのではなく、今あるものを組み合わせて未知の何かを発見するという姿勢。常に“新しさ”を求めてきたウインターボトムのアイデアはそれほど悪くない感じでした。最後に、ラストで魅せたサマンサ・モートンのアップに、私はルネ・ファルコネッティを重ねてしまいました。彼女は悲劇が似合う顔だと思います。

2004年09月12日 20:02 | 邦題:か行, 邦題:な行
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Title: 映画: なぜ彼女は愛しすぎたのか
Excerpt: 邦題:なぜ彼女は愛しすぎたのか 原題:Clement 監督:エマニュエル・ベルコ
From: Pocket Warmer
Date: 2004.09.13
Comments

あのような女性の気持は、恐らく男にはわからない感情かと。ただ、それと映画の出来は全く別のものですよね。現に私は、その出来自体は決して悪くないと思いますし。
「CODE46」は、恐らく期待を裏切らないかと思います。是非、感想を聞きたいものです。


Posted by: [M] : 2004年09月15日 21:28

トラックバック&コメント、有難うございます。
確かに男性視点からだと入り込みづらい映画かもしれませんね。
「CODE46」も興味がある映画なので近々観てみます!


Posted by: boo : 2004年09月13日 23:37
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