2007年06月26日
最近出くわした映画的事件2つ
■事件その1:渡辺文樹監督作品、7月に再び東京上映
5月に行われた代々木八幡の上映会からたった2ヶ月で、渡辺監督が戻ってくるようです。
つい先日、自宅近くのセブンイレブンで買い物をすませて店外に出ると、目の前にある電信柱から如何わしくも禍々しいオウラが漲っているのを察知し、ふとそちらの方向に目を向けると、ありました、例の煽情的な手作り看板が。
前回の上映時には見かけなかったのですが、何故今回は? 監督に余裕があったということでしょうか。あるいは、前回の客入りがもう一つだったと? まぁいずれにせよ、やっと肉眼で確認出来たことは嬉しいの一言。
しかしさらに驚いたことに、千代田区にある会社近くの電信柱にまで、同様の看板がかけられているではありませんか! 場所が場所だけに、またそれを発見したのが早朝の通勤時だっただけに、立ち止まってじろじろ観ることが躊躇われたのですが、恐らくアレも、代々木八幡での上映会の告知なのでしょう。しかし何故に代々木八幡から離れた千代田区に…?
と、観る者に多くの疑問符を投げつける渡辺監督ですが、彼の独特の上映スタイルを体験していない人は、是非に。
■事件その2:『追悼のざわめき』が3年ぶりに東京上映決定
中野武蔵野ホールが閉館して以来、本作が東京で公式に上映されることはありませんでした。
最近ではdvd化の話も上がっていましたが、まさか再び東京の映画館で観られるとは思っていなかったので、このニュースには驚きを隠せません。
場所はシアター・イメージフォーラム。初公開当時(1988年)、映画誌「イメージフォーラム」でおすぎが「とにかく汚らしい」と罵ったようですが、敏感な方であれば、この段階で本作に期待を寄せることが出来るはず。公式サイト(わざわざ独自ドメインまで取るという気合の入りようです)によれば、今回の上映は、ニュープリントからのHDテレシネで、音響はオリジナル音源からのデジタルリマスターとのこと。
先日『選挙』を観た際、予告編が流れましたが、その他新作の予告編とは明らかに異なるそれに、一瞬場内が凍りついたかのようでした。
初日は恐らく超のつく混雑が予想されます。8月なので、私は初日には駆けつけられないかもしれませんが、なるべく人のいなさそうな時を見計らって、出来れば二度三度通いたいと思っています。
2007年06月25日
『選挙』における痛快でグロテスクな人間には、一見の価値が備わっている
選挙/2005年/日本・アメリカ/120分/想田和弘
“観察映画”と名づけられた本作のスタイルに対し、私は別段驚きはしませんでした。驚いたのはむしろ、自民党がこんなドキュメンタリーを許可したということと、もう一つ、監督と被写体とのcoolな距離感に対してでした。
撮影日数12日間、撮影素材60時間分、スタッフは監督一人で完全な自主制作という『選挙』は、率直に言うなら、痛快な娯楽映画です。政治そのものを扱っている割に本作はいわゆる政治的な映画ではなく、その点がドキュメンタリー作家としての想田監督の立ち位置をあらわしているのではないか、と。
この『選挙』という映画を観てつくづく思ったこと、それは、人間の、さらに言うなら、日本人の可笑しさと、であるが故のグロテスクさは、それだけで爆笑ものの映画になるのだということです。つまり、本作に登場する多くの一般市民たち、あるいは政治家のセンセイ達の日常(ただし、『選挙』で描かれた12日間が選挙期間中だったということを考えれば、それは若干非=日常的だったと言えるのかもしれませんが)は、撮る人が撮ればすこぶる映画的な素材に成り得る。このことはもちろん、想田監督のいい意味で場当たり的な、そして、日本の政治にはまったくの素人という立場でカメラを構えたことも大きかったのでしょう。その意味で、やはりドキュメンタリーは監督の力量に大きく左右されるものだと思いました。
地元の老人会の人々が参加する運動会の開会式で、あくびをかみ殺す山内氏を捉えたショットや、祭りで神輿を担がされる場面など、本作には心から笑ってしまうシーンも少なくないのですが、鑑賞後の私の脳裏に浮かんだのは、あまりにグロテスクな中年や老人たちの言葉や行動だったりしたわけで、いっさいの説明や音楽が排されていた割りには、監督が言うように、“映像の多義性”なるものを感じざるを得ませんでした。
自分が何故選挙に行こうとしなかったのか、そんなことも考えてしまいましたが、同時に、今後も出来るだけ選挙からは遠い場所に居ようと確信してしまったことも付け加えておきます。
2007年06月20日
まったく最低だ
人間の決意など、本当にいい加減なものです。
あれほど、この日だけは逃してはならないと心に言い聞かせておきながら、恐らく今年最も重要な上映の機会を逸してしまいました。言うまでもなく、それは『下女』の上映です。
「オトコとオンナの映画秘湯」さんのところで再上映の日程を聞いたのが二ヶ月近く前だったからか、まだ先のことだと高を括り、カレンダーに記しておくことすらしていなかったのです。
今年中に上映権が切れてしまうとのことなので、もう観る機会は残されていないでしょう。dvd化の噂もあるようですが、それにしても劇場で鑑賞出来ないことには変わりありません。嗚呼…まったく最低です。
そんな時に良くないことは重なるもので、これは私の身にはほとんど関係していないことですが、昨日の日中、自宅からも程近い場所で、大規模な爆発事故がありました。もちろん私は仕事中でしたが、ニュースを見て、その現場が、2日に一回は通る馴染みの場所だっただけに、驚きを隠せませんでした。
夜のニュースを見つつさらに驚いたことに、そこには粗いながらも、爆発の瞬間の映像が流れていたのです。いったいどういう経路であの映像を入手したのか。あの辺りは東急本店に近いとはいえ、ほとんど住宅街と言える場所です。高級住宅街だけに、そこかしこに監視カメラが設置されていたのでしょうか。私が数回見た限りでは、カメラ位置から考えても監視カメラによる映像だとは思いがたかったのです。まぁその映像の詳細についてここで結論を求めたいわけではなく、恐ろしいのは、ああいった映像が残ってしまっているという事実に他なりません。まさにトニー・スコットの作品で描かれてきたような世界…。嗚呼…まったく、恐ろしい。
さて、実は昨日、爆発事件よりも何層倍か小規模な事件ではありましたが、私の身にも悲劇が起こったので書いておきます。こうして書くのも恥ずかしいのですが、“また”自転車を誰かに持っていかれてしまいました。昨日は近所に住んでいて会社も同じというある女性が、車で来ているから帰りに送ってくれるとのことだったので、じゃあ道玄坂上に自転車を止めてあるからそこまででも良ければ是非、ということになったのです。車中、まさに昼間起こったばかりの爆発事件について、お互い近所と言えば近所なので、ああだこうだ話をしていました。道玄坂に差し掛かって、じゃあそこに自転車があるので、と言って笑顔で別れ、自転車があったはずの場所に着いてみると、そこにあったはずの自転車がナッティング…。ヴィンチェンゾ・ナタリの映画のように、NOTHING……。3月下旬に購入したばかりなのでまだ3ヶ月しか乗っていない真っ白い自転車でした。しばし立ち尽くし、「マジかよ…ああ……………あ”ーーーーーーー」と独りごち、“とぼとぼ”という副詞がここまで似つかわしい歩き方もないな、という感じで家路につきました。まったく…本当に、心の底から、最低です。
ちなみに、先週観た映画は3本。
『ゾディアック』は途中退屈が極まる瞬間があり、しかも長いのでまるで良い印象がありません。
河瀬直美のドキュメンタリー『垂乳女』は、短いながらも濃度の濃い映画で、なかなか満足。
最後に『ザ・シューター』ですが、こちらもまぁ長い部類に入ると思います。必要のないスローモーションが多く、それがマーク・ウォールバーグだからか、ほとんど絵になっていないのです。ただし、背後で起こる大爆発を背に画面手前に向かって歩いてくるというお決まりのシーンで、マーク・ウォールバーグがその爆発音(あるいは大きな炎)に一瞬怯んだ(ビクっとなった)ように見えたことが面白いと言えば面白く、それはもちろん、演出としては“ナシ”なんでしょうが、もういい加減、ああいった絵に描いたようにヒロイックなハリウッド的描写はやめるぞ、というような批評性が込められていたのかもしれない、などと強引に思考すれば、それなりに楽しめるのではないでしょうか。
その夜はティム・バートン版『猿の惑星』がテレヴィでやっていたので、もうマーク・ウォールバーグはいいよと思いつつも、何だかんだ言いつつ最後まで観てしまいました。まさにウォールバーグ漬け。
2007年06月15日
それにつけてもおやつは映画
あぁ、なんか久々にブログを書く気が…。
いやー、やっぱアレですね。
余裕がないと、ブログ書く気って起きないものですね。
映画はというと、観てると言えば観てるんですが、少ないです。
週に1本か2本くらいでしょうか。
平日に行くつもりだったレイトにも、ほっとんど行けていません。
唯一『私のSEX白書 絶頂度』にかろうじて滑り込めたのは幸運でした。
(あの場では、別の収穫もあったりして)
『大日本人』とか『監督、ばんざい』は何とか観て、それらについてはかなりいろいろ考えてはみたのですが、いかんせん、なかなか筆が(?)進みません。
じゃあいったい何をやっているのか、何を考えているのかというと…
まぁ強いて言えば、今後の生き方について思いを巡らせている、なーんて言っちゃったりなんかしちゃったりして(広川太一郎風)。
しばらくはこんな状態が続くかも、とか書くことで、自分を鼓舞したりする32歳、男。
来月は33歳です。
それにしても、『監督、ばんざい』の凄さには、久々に絶句しました。
小津というよりむしろ、あえてヴェンダースの名前を出したあたりが面白い。
観なければ評価も出来ませんから、みなさん、是非観にいきましょう。
2007年06月04日
ジャン=クロード・ブリアリ、逝く
ジャン=クロード・ブリアリが30日、パリの自宅で亡くなったそうです。享年74歳。
最後に彼を観た作品は、もう随分前にヴィデオで観た『ランボー/地獄の季節』だったと思います。
ブリアリと言えば、やはり一連のヌーヴェル・ヴァーグ作品を思い出さないわけにはいきません。
50年代後半から60年代初頭にかけてが、彼の俳優人生で最も充実していた時期だったと思います。70年代に入ってからも、とりわけ『クレールの膝』の彼が忘れがたい。
嘗て、私の上司だった方が雑誌の取材でパリに行った際にブリアリと食事したという話を聞いて、まだ入社2年目くらいだった私はまるで自分のことのように感動し、その上司をほとんど尊敬の眼差しで見るようになったことを思い出します。
私にとっては、繰り返し観た『女は女である』の印象が最も強いのですが、イタリーではマストロヤンニ、フランスではブリアリという名優であり伊達男をともに失ってしまった映画界は、やはり寂しいですね。
2007年06月01日
超・必見備忘録 2007.6月編
どうも最近、仕事が忙しいからか、文章を書く気力が失せております。
当ブログも、3年の誕生日を迎えたというのに、だからといって何かが起こるわけではないですし、サーバーレンタル代やドメイン代の請求が来ることでしか、それを実感することも無くなっています。この事実を、“もはや生活の一部なのだから”と割り切ってしまうのは簡単ですが…
もちろん、映画を観る気力が無くなっているわけではいささかもなく(といっても先月は10本しか観られなかったのですが)、映画のことを考えない日などありませんけど。
このところ掛け値なしの傑作にかけては劇場鑑賞数が減ってくること必至ですから、今月はもう少し観なければと決意したところです。
『 300(スリーハンドレッド) 』(渋谷TOEI2 6/9〜)
別に漫画的であることは悪いわけではありません。それが“映画”であれば。
『監督・ばんざい!』(シネセゾン渋谷 6/2〜)
むしろ短編のほうに期待したいです。
『レベル・サーティーン』(シネセゾン渋谷 6/9〜)
予告編に惹かれて。シネセゾンは「13」という数字に拘っているのでしょうか。
『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(シネ・アミューズ イースト/ウエスト 上映中)
「週間文春」でおすぎが貶していたので。
『恋人たちの失われた革命』(シネマ・アンジェリカ 6/2〜)
見逃していたので、助かります。
『大日本人』(Q-AXシネマ 6/2〜)
映画的な何かは期待しません。ただ一点、笑えるのかということを確かめるために。
『14歳』(ユーロスペース 上映中)
2度目ですが、そろそろ落ち着いてきたかと思うので。
『選挙』(シアター・イメージフォーラム 6/9〜)
ベルリンに招待され、熱狂的に支持されたとか。
『パッチギ! LOVE&PEACE』(アミューズCQN 上映中)
こちらももう落ち着いたころかと。
「「殯の森」公開記念 河瀬直美特集」(シネマ・アンジェリカ 6/16〜)
カンヌグランプリを獲ったようですが、こちらは空いていると思われ。
「プロジェクトINAZUMA 1st harvest」(シネマアートン下北沢 6/2〜15)
ゲストの顔ぶれが凄いです。平日狙いで。
「官能の帝国 ロマンポルノ再入門」(シネマヴェーラ渋谷 6/2〜22)
こちらも凄いラインナップ。曽根中生を劇場で観られるチャンス。
「映画美学校セレクション」(ユーロスペース 6/16〜29)
どうしたって芸大のほうと比べてしまいそうですが、こちらにも通うとしましょう。
つまり時間がいくらあっても足りないという結論。
すぐにdvdになる新作よりも、なるべくレアなものから攻めていこうと思います。