2007年12月31日

2007年ベスト&ワースト10

今年もベスト&ワースト10を発表する時期が来てしまいました。
2007年の鑑賞本数は昨年に9本及びませんでしたが、質的にはかなり充実していたと思います。
昨年同様、新旧問わず劇場で鑑賞した作品の中から順不同で20本選びました。幸いにして今年は、観た瞬間に「ダメだ…」と言いたくなるような作品は少なかったので、ワーストというのがいささか忍びない作品もあるにはあるのですが、これは単なるゲームだということを自分に言い聞かせました。ベストが12本あるあたりも、やはり同様な理由なので、ご了承ください。


■2007年ベスト10

BIRD★SHT [or ナッシュビル](ロバート・アルトマン)
エレクション(ジョニー・トー)
キムチを売る女(チャン・リュル)
生活の設計(エルンスト・ルビッチ)
孔雀 ―我が家の風景―(クー・チャンウェイ)
石の微笑(クロード・シャブロル)
デス・プルーフ(クエンティン・タランティーノ)
高麗葬(キム・ギヨン)
青い青い海(ボリス・バルネット)
女 [or 誰とでも寝る女](前田弘ニ)


■2007年ワースト10

ハンニバル・ライジング(ピーター・ウェーバー)
東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(松岡錠司)
メイキング・オブ・愛憎弁当(岡田裕子)
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(ラリー・チャールズ)
殯の森(河瀬直美)
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(吉田大八)
シッコ(マイケル・ムーア)
ショートバス(ジョン・キャメロン・ミッチェル)
スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ(三池崇史)
ベオウルフ/呪われし勇者(ロバート・ゼメキス)

今年最後に観た映画は『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』でした。本来であれば『夜顔』を観る予定でしたが、最後の最後でベスト10に影響しそうだったので、やむなく来年に回すことにした次第です。

それでは皆様、良いお年を。

2007年12月25日

今年最後の!?映画覚書

ウイイレのドラフトも無事終了し、後は残りの忘年会を何件か残すのみとなりました。30歳を過ぎてから、1年があまりにも短いと感じてしまうようになりましたが、これはいったい何故なのか。それだけ充実していると見るべきか、それとも…。まぁ、結局はなるようになるという結論に落ち着くのですが。

さて、先週は更新出来ませんでしたが、何本か良い映画をみたので、簡単に覚書。
まずは、アテネフランセで観た王兵の新作『鳳鳴(フォンミン) — 中国の記憶』。この183分のドキュメンタリーは、その一見簡素な構造からは想像もつかない程豊穣で、面白い。被写体の厳格な語り口と無表情、そして、それを補って余りある語りの内容(過酷な人生体験)。おそらく10カットにも満たない本作おいては、唯一の被写体である老婆のバストショットにカメラ(=監督)が完全に魅了されてしまっていることを隠そうともしません。そしてそれが観ている私にも、画面内の大気ごと伝わるような感覚がしました。
本作が一般公開されるとは到底思えないのですが、そういう奇跡が起こってしまう日を逃さないためにも、王兵という映画作家の名前には、常に注目の眼差しを向けていましょう。まぁ奇跡と言うなら、あの画面で3時間持ってしまうということ自体が、奇跡に他ならないのかもしれませんが。

続いて観たのは『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』。大島新の劇場公開映画第一回監督作品です。本作は、ドキュメンタリーの面白さとは何か、ひいては、ドキュメンタリーとは何か?ということを考えさせてくれたという意味でなかなか興味深かったのですが、最後のテロップはあまりにも蛇足だったと思います。未だ一般的には、ドキュメンタリーが“純粋な”事実の記録だと思われているのでしょう。ああいう説明が無ければ、本当に本作は成り立たなかったのだろうか。
父である大島渚とは異なるアプローチではありましたが、現実と虚構という映画が孕む根源的な要素を描こうとしたのは、偉大な父を持つ息子の野心でしょうか。

次に、『ベティ・ペイジ』。監督はメアリー・ハロン。調べてみたら、『アメリカン・サイコ』や『アンディー・ウォーホルを撃った女』などを監督していました。共に観たのですが、あまり記憶にありません。
『ベティ・ペイジ』もまた、グレッチェン・モルの見事な肢体しか記憶に残っていないので、特に言うべきことはありません。

最後に『俺たちフィギュアスケーター』。本作は私の中で、『ふたりにクギづけ』以来のアメリカン・コメディの傑作として記憶されるでしょう。映画における紋切り型の是非だとか、コメディにおける“部外者(背景)の重要性”だとか、タブーに対する寛容さだとか、そんなことを考えさせながらも、観客が到達すべき見えない着地点を信じ一貫して図々しい演出に徹し、最後には涙まで誘う。
かような“強さ”は、チャウ・シンチーですらまだ纏えていないような気がしました。彼のコメディも充分面白いのですが、本作には、アメリカならではのダイナミズムというか、歴史というか、そういうものを感じざるを得ないのです。
本作のクライマックスシーンの素晴らしさ、それはやや誇張して言うなら、ロバート・アルドリッチの『カリフォルニア・ドールス』におけるラストの大合唱に比較したくなるほどです。
と、まぁ興奮気味に書きましたが、いずれも半分冗談として聞いていただいてかまいません。私が言いたいのは、これもまた映画だということ。そして、この手の映画を観ずして、やはり映画は語れないなぁ、とつくづく思ってしまったということです。

2007年12月11日

今のところ“ここに幸なし”だけれど…

「ドラクエ4」を裏までクリアしたのに、来週末のウイイレドラフト会議まで日がなく、そちらへの準備も急ピッチで始めなければならないためホッと一息つく暇もないまま忘年会等が重なり、自宅ではどうしても寝るだけだったのが先週、今週こそはと思っていたら、今度は仕事のほうが忙しくて、やはり自宅でウイイレに興じることもままならず、ただでさえ、先週は一度もジムに行けなかったという体たらくなので体は鈍るわ、気づけばレッド・ツェッペリンの一日限りの真に歴史的なライブはあっさりと終わっていたりで、何だか気が滅入る一方の今日この頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

そんな状況でも、昨年であれば映画だけは死守してきたはずなのに、今年は映画すらまともに観られていないのですから困ったものです。ただし、先週観たオタール・イオセリアーニの新作『ここに幸あり』は期待通りの面白さで、私が将来辿るべき道をあらかじめ示してくれているような錯覚すら覚え、いや、それは錯覚というよりもむしろ願望(夢)に近いものなのかもしれませんが、とにかく、あんな風景を憧憬のまなざしで見つめる私自身に改めて気がついたということ。

残念だったのは、鑑賞前に午前中からビールやらワインやらを飲んでしまった所為で、いつにも増して私の武装が解除されてしまったのか、何箇所かで寝てしまったことです。もちろん、私が再見せねばならないのは言うまでもありませんが、私が寝てしまったことと本作の出来栄えとは何の関係もないというか、いや、むしろ、あそこまで見る者を武装解除させてしまう映画などそうあるはずもないので、年末の忙しいさなか、“ここに幸ない”人々にこそ、『ここに幸あり』は観て頂きたく思います。

今週末のアテネフランセだけは、何とか。私にしては珍しく、12月は質重視で厳選したいな、などとと思いつつあるあたりが、何とも情けない限り。

2007年12月04日

超・必見備忘録 2007.12月編

2007年最後の「超・必見備忘録」になります。
“超・必見”と書いている私がなかなか映画を観られない状況ではあるのですが、一部の方にでもご参考になれば幸いです。


クローズZERO』(アミューズCQN 上映中)
機は熟した。いざ!

愛の予感』(ポレポレ東中野 上映中)
おそいひと』(ポレポレ東中野 上映中)
この2本はセットで観たい。

やわらかい手』(ル・シネマ 上映中)
怪作『あの胸にもういちど』の頃の面影が見いだせなくても、題材がすこぶる魅力的。

シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』(シアター・イメージフォーラム 上映中)
予告編の印象と、二世監督の力量を見たいがため。

ここに幸あり』(恵比寿ガーデンシネマ 上映中)
観る前から面白さが漂うような映画を撮る人、それがイオセリアーニという人。

ジャーマン+雨』(ユーロスペース 12/15〜)
まずタイトルが素晴らしい。あの『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』を撮った監督なので、期待します。

グラインドハウス A GO GO! 〜タラちゃんとゆかいな仲間たち〜」(シネマヴェーラ渋谷 上映中)
気づいたら始まっていたといういつものパターン。

王兵(ワン・ビン)監督『鉄西区』特別上映会」(アテネ・フランセ文化センター 12/15)
『鉄西区』ではなく、新作『鳳鳴(フォンミン) — 中国の記憶』目当てで。もちろん、『鉄西区』が必見であることは言うまでもありません。


上記以外にも、「韓国映画ショーケース2007」がシネカノン有楽町1丁目で開催される模様。以前イメージフォーラムで開催された「韓国アートフィルムショーケース」と同じく、韓国映画振興委員会(KOFIC)が主催。有楽町でなければ行くところですが…。

何かが決定的に違う

相変わらずのスローペースは変わらず、先週は1本のみ。その1本を大きくはずしてしまったことからも、残りの映画生活がいかに絶望的かを暗示しているかのようです。

観たのはロバート・ゼメキス監督の『ベオウルフ/呪われし勇者』。
アンジェリーナ・ジョリーの裸見たさにこれを選んだ私もアレですが、いくらなんでも、ちょっと酷いなぁという感じ。いくらハリウッドのVFXの技術が進化していても、それを生身の人間と見間違えるなどということは無いわけで…。本作が酷かったのは、時に魅力的な表情をみせるアンジェリーナ・ジョリーの顔までもVFXで処理してしまったということです。ロバート・ゼメキスは、『ポーラー・エクスプレス』であの手の技術に開眼してしまったのでしょうか。まぁそのこと自体はまるで悪くないにせよ、やはり本作では何かが決定的に違うという感覚が最後まで拭えず、逃げ去るように劇場を後にしました。

ベテラン俳優の使い方とか、観客を楽しませる演出(吃驚系の音響など)が悪くなかっただけに、何とも残念な印象。